【学生さん、研修医さん必見!】頭蓋内出血に対するCRASH-3 Protocolとは

医療系
イタリア旅行ヴェネツィアでの1枚

どうもみなさんおはこんばんにちはネリです~

今日は少し専門的なお話ですが, ”CRASH-3 Protocol”という研究についてお話できればと思います.

非常に噛み砕いた話から始めさせてください.
みなさんが道で転んでしまって膝を擦りむいてしまったとしましょう.ぶつけたところから血が少しにじんでしまうかもしれません.
その血は出続けますか?出ませんよね, 体の反応としていずれ血は止まるように通常できているのです.

凝固, 線溶とは

血管内では常に血栓を作るよう「凝固活性化」と血栓を溶かす「線溶活性化」がいいバランスを保っています.
血が出てしまったときはそれを止めるよう血栓ができます, つまり「凝固活性化」>「線溶活性化」のバランスになっているイメージです.
しかしながら血が止まって治っていく段階でもずーっと血が固まっていったら最終的には血管が血栓で詰まってしまって大変ですよね.
そうならないように「凝固活性化」<「線溶活性化」となって血栓が溶かされていくのです.

この「線溶活性化」を阻害するとさらに「凝固活性化」が強くなり, より出血などが止まるよう働きかけることができます.
それが抗プラスミン薬といわれるトラネキサム酸になります.


このトラネキサム酸というお薬を投与して大量出血による死亡を防ぎましょう, といった研究のお話が今回の”CRASH-3”というお話です.
本題に戻りましょう.

CRASH-2という先行研究があった

外傷後8時間以内に重大出血が認められたか, またはそのリスクが高いと考えられた約2万人を対象としてトラネキサム酸投与群とプラセボ群に無作為に割り付け, 院内死亡率を比較した試験というのが”CRASH-2”と名付けられた研究でした.

結果はトラネキサム酸投与群の方が有意に院内死亡率は低下したためトラネキサム酸投与は有用とその論文では結論付けられたのです.

またトラネキサム酸を早期に投与すればするほど死亡率は軽減できることがサブグループ解析でわかりました.
それに伴い欧州ガイドライン等では重症後3時間以内でのできるだけ早いタイミングでトラネキサム酸を投与することが推奨されたのです.

“CRASH-2”のごく一部(270人)が外傷性脳挫傷を合併しており, それらを対象としてトラネキサム酸の効果を検討した結果, こちらも優位に外傷性脳挫傷患者の予後を改善できる可能性が示されました.
しかしながら症例数が極端に少なく, 大規模なランダム化比較試験による検証が必要と考えられました.

上記の背景からCRASH-3という研究が始まりました.

CRASH-3とは

受傷後3時間以内に外傷性脳挫傷(CTでの頭蓋内出血の所見, またはGCS12以下)を認め, かつ頭蓋内以外の部位に重大な出血を認めない成人患者約12000人を対象として, トラネキサム酸投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けてトラネキサム酸の効果を検証しました.

結果はトラネキサム酸投与群の方が有意に脳損傷関連死は低下したためトラネキサム酸投与は有用とその論文では結論付けられたのです.

適応

  1. 単独頭部外傷
  2. 受傷から約3時間以内
  3. GCS 12以下 または 頭部CTで頭蓋内出血を認める

投与方法

トラネキサム酸1000㎎を10分以上かけて投与し, その後さらに1000㎎を8時間以上かけて投与する.

おわりに

いかがだったでしょうか.

外傷による頭部外傷は今後高齢者が増え, 転倒などを契機として一定数増えることが予想されます.
”CRASH-3Protocol”を知っていれば, 上級医に一目置かれる研修医になれること間違いなしです.

それでは最後までお読みいただきありがとうございました.

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