「なんか元気がない」「顔が赤い」——子どもはつらくても「熱中症かも」と自分では言えません。特に乳幼児は言葉でSOS を発することができないため、親や保育士・教師が症状を正確に知っておくことが命を守る第一歩です。
この記事では、救急科専門医の立場から、子どもの熱中症の症状・重症度の見分け方・救急車を呼ぶタイミング・応急処置の手順を、日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」に基づいて解説します。
大人と子どもで熱中症の症状が違う理由
子どもが熱中症になりやすい理由は、いくつかの身体的特徴にあります。
- 体温調節機能が未発達:乳幼児は自律神経が未熟で、発汗による体温調節がうまくできません。体温が上昇しても大人ほど汗をかけず、熱が体内にこもりやすい。
- 体表面積が体重に対して大きい:外気温の影響を受けやすく、気温が高いと体温が急上昇します。
- 地面に近い:アスファルトの照り返しは地面から50cm程度が最も高温になります。身長の低い子ども・ベビーカーの乳児は、大人が「そこまで暑くない」と感じていても、実際には危険な環境にいることがあります。
- 自分でSOSを言えない:乳幼児・低年齢児は「のどが渇いた」「頭が痛い」と言葉で伝えられません。行動・表情・機嫌から親が察知する必要があります。
- 体内水分量が多く脱水しやすい:乳幼児の体重の約75〜80%が水分です(成人は約60%)。そのぶん水分バランスが崩れやすく、脱水が急速に進みます。
つまり子どもの熱中症は大人よりも速く重症化することを、まず頭に入れておいてください。
重症度別チェックリスト(軽度・中等度・重度)
日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」では、熱中症をI度(軽症)〜IV度(最重症)に分類しています。子どもへの当てはめ方を確認しましょう。
I度(軽症)——自宅・現場で対応可能
- めまい・立ちくらみ
- 顔が赤い・皮膚が熱い
- 大量の発汗
- 足のこむら返り(筋肉のけいれん)
- ぐったりしているが意識はある
- 機嫌が悪い・ぐずる(乳幼児)
涼しい場所へ移動し、水分・電解質補給を行いながら経過観察します。30分〜1時間で改善しない場合は受診を検討してください。
II度(中等症)——医療機関への受診が必要
- 頭痛・嘔吐・吐き気
- 強い倦怠感・脱力感
- 集中力・判断力の低下
- おしっこの量が極端に少ない(乳幼児:おむつが濡れない)
- 泣いても涙が出ない
- 口の中がカラカラに乾いている
応急処置を行いながら、速やかに小児科・救急外来を受診してください。自力で水分が飲めない・嘔吐が続く場合は点滴が必要になります。
III度(重症)・IV度(最重症)——すぐに救急車
- 意識がおかしい・呼びかけに反応しない
- けいれんを起こしている
- まっすぐ歩けない・フラフラする
- 体が異常に熱い(深部体温40℃以上)
- 呼吸が速い・荒い
- 皮膚が青白い・冷たい(ショック状態)
これらの症状が一つでも見られたら、ためらわず119番を。III度以上の熱中症は、救急病院での集中治療が必要です。2024年ガイドライン改訂で新設された「IV度」(深部体温40℃以上かつGCS≦8)は最重症群であり、死亡・後遺症のリスクが非常に高い状態です。
すぐに救急車を呼ぶべき症状(乳幼児・小学生別)
乳幼児(0〜5歳)
- 意識がない・ぐったりして動かない
- けいれんを起こしている
- 呼びかけに全く反応しない
- 泣き声が弱い・または全く泣かない
- 唇・爪が紫色になっている
- 6時間以上おしっこが出ていない
乳幼児は脱水が急速に進みます。「少し元気がない」程度でも、改善しない・水分が飲めない場合は夜間救急を躊躇わずに受診してください。
小学生以上
- 意識がない・ぼんやりしている
- 歩くとフラフラして支えが必要
- けいれんを起こしている
- 嘔吐が止まらない・水分を全く飲めない
- 「頭が割れるように痛い」と強訴する
小学生以上でも、「意識がおかしい」サインは最優先で119番です。子どもが「大丈夫」と言っても、判断力が低下しているため自己申告は信頼できません。
応急処置の手順(冷やし方・水分補給)
Step 1:涼しい場所へ移動
エアコンの効いた室内、または日陰・風通しの良い場所へ。屋外の場合は日光を完全に遮断することが先決です。
Step 2:衣服をゆるめる・体を冷やす
服を脱がせ、首・脇の下・太ももの付け根(鼠径部)を重点的に冷やします。これらの部位は太い血管が皮膚に近く、効率よく体温を下げられます。
- 冷却タオル・保冷剤・氷嚢を首・脇・鼠径部に当てる
- 霧吹きで体に水をかけ、うちわや扇風機で風を当てる(蒸散冷却)
- 冷水を体全体にかけるのも有効(水かけ法)
体温計(できれば直腸温・腋窩温)で体温を確認しながら冷却を続けます。38℃程度になれば過冷却を避けるため中止します。
Step 3:水分・電解質補給
意識がある・自力で飲める場合は、経口補水液(OS-1など)を少量ずつ補給します。スポーツドリンクでも代用可能ですが、純粋な水だけでは電解質が補えません。
意識が低下している・嘔吐している場合は絶対に口から飲ませないでください。誤嚥(気管に入ること)で窒息・誤嚥性肺炎を引き起こします。この場合はすぐに救急車を呼んでください。
保育園・学校で倒れた場合の対応
保育園・学校で熱中症が疑われる場合は、以下の手順で対応します。
- 意識確認:呼びかけ・肩叩きで反応を確認。反応なし→即119番
- 涼しい場所へ移動:保健室・エアコン室など。動かすのが困難なら、その場で扇風機・冷却処置
- 保護者への連絡:症状・バイタル(体温・意識レベル)を記録しながら連絡
- 水分補給:意識があれば経口補水液を少量ずつ
- 改善なければ救急搬送:30分以内に改善しない・II度以上の症状→救急車または車で緊急受診
学校・保育園にはAEDと同様に冷却グッズ(保冷剤・経口補水液)の常備を推奨します。2024年の猛暑以降、多くの自治体が学校への配備を進めています。
また、教職員・保育士は熱中症の重症度判断と119番通報の判断権限を明確に持つべきです。「保護者に連絡してから」と時間を取られることで、搬送が遅れるケースが現場では見受けられます。
まとめ
- 子どもは体温調節機能が未発達・自己申告できないため、大人よりも速く重症化する
- 重症度はI度(軽症)〜IV度(最重症)で分類。意識がおかしい=III度以上→すぐ119番
- 乳幼児は「ぐったり・泣かない・おしっこが出ない」が危険サイン
- 応急処置は「涼しい場所→冷却(首・脇・鼠径部)→経口補水液」の順
- 意識低下・嘔吐中は絶対に口から水分を与えない
- 学校・保育園での対応は「保護者連絡より救急車が先」の場合がある
熱中症は適切な初期対応で重症化を防げます。この夏、子どもの命を守るために、家族全員でこの記事の内容を共有してください。
参考:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」、国立成育医療研究センター、こども家庭庁「こどもの熱中症予防」
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