体の片側にピリピリとした痛みが走り、赤い水ぶくれが帯状に現れる――それが帯状疱疹(たいじょうほうしん)です。日本では80歳までに約3人に1人が発症するとされ、特に50歳以降に急増します。2025年度からは帯状疱疹ワクチンが定期接種に組み込まれ、予防への関心が高まっています。救急科専門医が、最新の「帯状疱疹診療ガイドライン2025」を踏まえてわかりやすく解説します。
帯状疱疹とは?原因とメカニズム
帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされる病気です。子どもの頃に水ぼうそう(水痘)にかかると、治った後もウイルスは体内の神経節に潜伏し続けます。加齢やストレス、疲労、免疫力の低下などをきっかけに、このウイルスが再活性化して神経に沿って皮膚に症状を引き起こします。
つまり、過去に水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があります。日本人の成人の約90%以上がこのウイルスを体内に保有しています。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の典型的な経過は以下の通りです。
初期症状(発疹が出る前)
- 体の片側にチクチク・ピリピリとした痛みや違和感
- 軽い発熱や倦怠感を伴うこともある
- 痛みは数日〜1週間ほど続いてから発疹が出現
発疹期
- 神経の走行に沿って帯状に赤い発疹が出現
- 発疹は水ぶくれ(水疱)に変化し、やがてかさぶたになる
- 胸〜背中、顔面、腰回りに好発
- 通常は体の左右どちらか一方にだけ現れる
注意すべき合併症
- 帯状疱疹後神経痛(PHN):皮膚症状が治った後も数か月〜数年にわたり痛みが残る。50歳以上の発症者の約2割に生じる
- 眼部帯状疱疹:目の周囲に発症すると視力障害のリスク
- 顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群):耳周囲に発症した場合、顔面麻痺や難聴を起こすことがある
帯状疱疹の治療
治療の基本は抗ウイルス薬と鎮痛薬です。発疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬を開始することが、症状の軽減と合併症予防に重要とされています。
抗ウイルス薬
現在、日本で使用される主な抗ウイルス薬には以下があります。
- バラシクロビル(バルトレックス):最も広く使用される内服薬。1回1000mg(500mg錠×2錠)を1日3回、7日間投与
- アメナメビル(アメナリーフ):1日1回投与で済み、腎機能による用量調整が不要
- ファムシクロビル(ファムビル):バラシクロビルと同様に使用
重症例や免疫不全の患者さんでは、点滴によるアシクロビル静注が選択されます。
痛みの管理
急性期の痛みにはアセトアミノフェンやNSAIDsを使用します。帯状疱疹後神経痛に移行した場合は、プレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)などの神経障害性疼痛治療薬が用いられます。
帯状疱疹の予防:ワクチン接種
帯状疱疹の最も効果的な予防法はワクチン接種です。現在、日本では2種類のワクチンが使用可能です。
1. 生ワクチン(ビケン)
- 皮下注射・1回接種
- 発症予防効果:海外の大規模試験(SPS試験)で全体約51%、接種後4〜7年で約40%に低下。国内臨床試験では帯状疱疹予防効果27.8%との報告もある
- 費用が比較的安い
- 免疫不全者には使用不可
2. 組換えワクチン(シングリックス)
- 筋肉注射・2回接種(2か月間隔)
- 発症予防効果:50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%
- 帯状疱疹後神経痛の予防効果も接種3年後で90%以上
- 免疫不全者にも接種可能
- 注射部位の痛みや筋肉痛などの副反応がやや多い
2025年度からの定期接種化
2025年4月より、帯状疱疹ワクチンは予防接種法に基づく定期接種(B類疾病)の対象となりました。対象者は以下の通りです。
- 65歳の方(年度内に65歳になる方)
- 経過措置:2025〜2029年度の間は、各年度中に70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳・100歳になる方も対象
定期接種では自治体からの補助があるため、自己負担額が軽減されます。対象年齢の方は、お住まいの市区町村に問い合わせてみてください。
こんなときは早めに受診を
以下のような症状がある場合は、できるだけ早く皮膚科や内科を受診しましょう。
- 体の片側に原因不明のピリピリした痛みが続く
- 痛みのある部位に赤い発疹や水ぶくれが出現した
- 目の周囲や耳の近くに発疹がある
- 発疹が広範囲に広がっている
- 強い痛みで眠れない、日常生活に支障がある
帯状疱疹は早期治療が予後を大きく左右します。「おかしいな」と思ったら、72時間以内の受診を目指してください。
まとめ
- 帯状疱疹は水ぼうそうのウイルスが再活性化して起こる病気
- 80歳までに3人に1人が発症し、50歳以降にリスクが急増する
- 発疹出現後72時間以内の抗ウイルス薬投与が重要
- 帯状疱疹後神経痛は長期間の痛みを残す厄介な合併症
- ワクチン(特にシングリックス)で高い予防効果が期待できる
- 2025年度から65歳以上を対象に定期接種がスタート
本記事は2025年時点の最新ガイドラインおよび厚生労働省の公開資料に基づいて作成しています。個別の診療については、かかりつけ医にご相談ください。
参照ソース
- 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」公式ページ
- 厚生労働省「帯状疱疹の予防接種についての説明書(2025年2月作成)」
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチンファクトシート 第2版(国立感染症研究所)」
- 日本皮膚科学会「ヘルペスと帯状疱疹 Q&A」

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