当直バイトの前に確認したい「宿日直許可」|労働時間に入らない条件と、許可が効かなくなる3つの場面【医師向け・2026年版】


当直明けにそのまま日勤に入る。月に何回も当直が回ってくる。それでも年間の時間外労働は上限内に収まっている——この一見おかしな状態を成立させているのが宿日直許可です。2024年4月に医師の時間外労働の上限規制が始まってから、この4文字は勤務先選びと当直バイト選びの両方に効く言葉になりました。

ところが、許可の中身を条文まで確認したことがある医師は多くありません。救急科専門医として、そして当直を出す側・受ける側の両方を経験した立場から、一次資料だけを使って整理します。この記事に出てくる数字と引用は、すべて法令原文か厚生労働省の通達・FAQに当たったものです。

  1. まず結論——宿日直許可の有無で変わるのは3つ
  2. 「宿日直許可」とは何か——医療法16条の宿直とは別物
    1. 根拠は労働基準法41条3号と施行規則23条
    2. 医療法16条の宿直に、労基署の許可は要らない
  3. 許可の条件——医師版の4つと、一般の宿日直基準5つ
    1. 医師・看護師等の許可基準(令和元年 基発0701第8号)
    2. 一般の宿日直許可基準(昭和22年 発基第17号)
  4. 許可があっても効かなくなる3つの場面
    1. ① 許可された態様から外れた業務をした「その時間」
    2. ② 実態が乖離したとき——宿日直中の全時間が労働時間に戻る
    3. ③ 許可書の「付かん」から外れたとき
  5. 当直バイトを引き受ける前に確認する5つのこと
  6. 副業・兼業では労働時間が通算される——ただし許可のある宿日直は入らない
    1. 通算されるのは「個人の上限」のほう
    2. バイト先の水準が、自分に適用される上限を書き換えることがある
    3. 申告しなければ通算されない、という制度の作り
  7. 誤解されやすい4つのこと
    1. 「救急や産科では取れない」——取れます
    2. 「非常勤は対象外」——対象です
    3. 「宿直は週1回まで」——例外が現に認められている
    4. 「本務先で週1回入ったらバイト先では入れない」——入れます
  8. 数字で見る——許可件数は令和5年がピークだった
  9. 厚労省自身が釘を刺していること
  10. よくある質問(FAQ)
    1. Q. 宿日直許可がある当直は、時間外労働の年960時間・1,860時間に含まれますか。
    2. Q. 当直中に急患を診たら、追加の賃金はもらえますか。
    3. Q. 病院が「宿日直許可を取っている」と言えば、当直はすべて労働時間から外れますか。
    4. Q. 当直手当の下限はいくらですか。
    5. Q. 本務先で週1回宿直に入っていると、バイト先では宿直に入れませんか。
    6. Q. 副業・兼業先の労働時間を申告しないとどうなりますか。
  11. まとめ
  12. 関連記事
  13. 参照ソース(一次情報)

まず結論——宿日直許可の有無で変わるのは3つ

許可があるかないかで、同じ「当直」でも扱いがここまで変わります。

比べる点 宿日直許可あり 宿日直許可なし
時間外労働の上限規制 その時間は労働時間にカウントされない 在院時間がまるごと労働時間
勤務間インターバル 9時間以上連続したものは休息時間として扱える 休息時間にならない
支払われるもの 宿日直手当(1日平均賃金の1/3以上) 通常の賃金+時間外・深夜の割増賃金

厚生労働省のFAQは、多くの医療機関が許可取得を進めた理由をそのまま書いています。

宿日直許可を受けた場合には、その許可の範囲で、労働基準法上の労働時間規制が適用除外となります。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

そして、上限規制との関係をこう説明しています。

(1)宿日直許可を受けた場合には、この上限規制との関係で労働時間とカウントされないこと、(2)勤務と勤務の間の休息時間(勤務間インターバル)との関係で、宿日直許可を受けた宿日直(9時間以上連続したもの)については休息時間として取り扱えること

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

つまり許可のある当直は、年960時間・1,860時間という上限の分母に入りません。勤務先が「うちは上限内に収まっている」と言うとき、その多くは宿日直許可を前提にしています。

「宿日直許可」とは何か——医療法16条の宿直とは別物

根拠は労働基準法41条3号と施行規則23条

出発点は労働基準法41条です。労働時間・休憩・休日の規定を適用しない労働者を並べた条文で、3号がこれにあたります。

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

労働基準法 第41条 柱書

その「次の各号」の第3号(第1号・第2号は農林水産業の従事者と管理監督者等で、ここでは省略します)がこれです。

監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

労働基準法 第41条第3号

その手続を定めているのが施行規則23条です。

使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。

労働基準法施行規則 第23条

法32条は「1週40時間・1日8時間」を定めた条文です。許可を受けた宿日直は、この枠の外に出る——これが仕組みの全部です。裏返せば、許可がなければ当直は普通の労働時間であり、時間外・深夜の割増賃金がそのまま発生します。

医療法16条の宿直に、労基署の許可は要らない

ここが最初につまずくところです。病院に医師を置く義務は医療法から来ています。

医療法(昭和23年法律第205号)第16条には「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」と規定されている

令和元年7月1日 基発0701第8号

この義務と、労基法上の許可はまったく別の話です。厚労省FAQははっきり切り分けています。

この医療法第 16 条に基づく宿直を医師に行わせること自体に労働基準監督署長による宿日直許可は必要ありません。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

「医療法で決まっているから当直がある」ことと、「その当直が労働時間から外れる」ことは、まったく別に判断されます。前者は病院の義務、後者は労働基準監督署長の許可です。

許可の条件——医師版の4つと、一般の宿日直基準5つ

医師・看護師等の許可基準(令和元年 基発0701第8号)

医師等の宿日直については、1949年の通達を70年ぶりに置き換えた令和元年7月1日の通達が現在の基準です。条件はこう書かれています。

⑴ 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。

令和元年7月1日 基発0701第8号 記1

⑵ 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。

令和元年7月1日 基発0701第8号 記1

この「軽度の又は短時間の業務」が何を指すかまで、通達は具体的に例示しています。

・ 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

令和元年7月1日 基発0701第8号 記1⑵

・ 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと

令和元年7月1日 基発0701第8号 記1⑵

ここに「非輪番日であるなど」と書かれているのが重要です。外来患者が来ることを前提にした夜間は、そもそも例示の外にあります。これに加えて、宿直では夜間に十分な睡眠がとり得ることが求められます。

一般の宿日直許可基準(昭和22年 発基第17号)

医師版の条件の4つ目は「上記⑴、⑵以外に、一般の宿日直の許可の際の条件を満たしていること」です。その一般基準は、厚労省の解説資料に5点そろって示されています。

# 一般の宿日直許可基準 当直医が実感で確かめられること
1 常態としてほとんど労働することがないこと 朝まで一度も起こされない夜が「普通」か
2 通常の労働の継続ではないこと 日勤の続きで病棟を回していないか
3 宿日直手当が同種の労働者の1人1日平均額の3分の1以上 当直手当の額
4 回数は原則として宿直は週1回・日直は月1回以内 1か月の当直回数
5 宿直について相当の睡眠設備を設置していること 横になれる当直室があるか

手当の基準は原文ではこう書かれています。

宿直勤務1回についての宿直手当又は日直勤務1回についての日直手当の最低額は、当該事業場において宿直又は日直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われている賃金の一人1日平均額の1/3以上であること。

断続的な宿日直の許可基準(一般的許可基準)※昭和22年発基17号

回数についても同じ資料に明記があります。

許可の対象となる宿直又は日直の勤務回数については、宿直勤務については週1回、日直勤務については月1回を限度とすること。

断続的な宿日直の許可基準(一般的許可基準)※昭和22年発基17号

「当直手当が安すぎる」と感じたとき、それは感覚ではなく基準の話になり得ます。日給の3分の1という下限が明示されているからです。

許可があっても効かなくなる3つの場面

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。宿日直許可は取れば永久に効く免罪符ではありません。厚労省は3つの場面を挙げています。

① 許可された態様から外れた業務をした「その時間」

許可を受けた宿日直中に「通常と同態様の業務」を行った場合は、その時間は労働基準法上の労働時間として取り扱う必要があり、宿日直手当とは別に本来の賃金(必要な割増賃金を含む)を支払う必要があります。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

令和元年の通達も、稀にそれが起きること自体は織り込んでいます。

一般的にみて、常態としてほとんど労働することがない勤務であり、かつ宿直の場合は、夜間に十分な睡眠がとり得るものである限り、宿日直の許可を取り消す必要はないこと。

令和元年7月1日 基発0701第8号 記2

つまり「稀に呼ばれる」なら許可は生きたまま、呼ばれた分だけ別に賃金が発生するという設計です。ここを支払っていない場合、厚労省の解説資料は「労働基準法違反になります」とまで書いています。当直中に応急患者を診た時間、看取りに立ち会った時間、分娩に対応した時間は、記録に残す価値があります。

② 実態が乖離したとき——宿日直中の全時間が労働時間に戻る

許可を受けた後に、許可の内容に沿った運用ができなくなった又は許可の内容から勤務実態が事実上乖離してしまった場合には、許可の効力が及ばなくなる(宿日直中の全ての時間が労働時間となる)可能性がありますので、勤務内容の見直しを行ってください。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

「その時間だけ」ではなく「全ての時間」です。通達も、通常業務が常態であるものには許可を与えられないと明言しています。

上記のように通常の勤務時間と同態様の業務に従事することが常態であると判断されるものについては、宿日直の許可を与えることはできないものであること。

令和元年7月1日 基発0701第8号 記2

許可を取った当時は寝当直だったが、その後に救急告示を受けた・輪番に入った・当直の人数を減らした——こうした変化はすべてここに触れます。

③ 許可書の「付かん」から外れたとき

許可書には条件が付いています。厚労省のリーフレットの説明です。

許可の際には、労働基準監督署から 、「断続的な宿直又は日直勤務許可書 」というものが交付されますが、この許可書には宿日直の回数などの内容に関する 「付かん」が記載されておりますので、この「付かん」の内容にのっとった宿日直勤務を行う必要があります。

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「宿日直許可申請を検討する事業主の皆さまなどへ」

解説資料のチェックリストは、外れやすい点を具体的に並べています。チェックがつかない項目があれば「宿日直許可の効果が発生していない可能性」があるという位置づけです。

  • 1回の宿日直業務に、許可された人数を超える数の医師を就かせていないか
  • 1人の医師が宿日直業務に就く回数が、許可を上回るものとなっていないか
  • 許可した開始時間前又は終了時間後に、宿日直業務に就かせていないか
  • 許可した金額以上の宿日直手当を支払っているか
  • 就寝設備は引き続き備わっているか

そして許可は診療科・職種・時間帯・業務の種類を限って出せます。

宿日直の許可は、一つの病院、診療所等において、所属診療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることができるものであること。

令和元年7月1日 基発0701第8号 記3

「うちは宿日直許可を取っています」が、自分の診療科・自分の時間帯を含んでいるとは限らないということです。深夜帯だけ、病棟業務だけ、という許可も現に認められています。

当直バイトを引き受ける前に確認する5つのこと

ここまでを、非常勤で当直に入る側の視点に翻訳します。求人票と面談で確認できる範囲に絞りました。

確認すること なぜ効くか
宿日直許可の有無、そして自分が入る時間帯・診療科・業務が許可の範囲か 許可は時間帯・診療科・業務を限って出せる(基発0701第8号 記3)
救急告示・輪番日かどうか 通達の例示は「外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間(例えば非輪番日であるなど)」を前提にしている
1晩で何回呼ばれるのが平均か(前月の実績) 許可申請では業務日誌・電子カルテのログで実績を確認している。病院側は数字を持っている
通常業務が発生したときの支払い方 許可があっても、その時間は宿日直手当とは別に賃金(割増含む)が必要
就寝設備と、翌日の勤務 相当の睡眠設備は一般基準の条件そのもの。当直明けの扱いは病院の姿勢が出る

3つ目は特に有効です。宿日直許可の申請では、次の資料を労基署に出しています。

・ 宿日直勤務中に行われる業務が発生する頻度、その業務の内容と従事した時間について、一定期間の実績が分かる資料(業務日誌等)

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

つまり「1晩に何回呼ばれるか」は、許可を取った病院なら必ず数えたことがある数字です。答えられない・大幅に増えている場合、②の乖離が起きている可能性があります。当直中の初期対応そのものの備えについてはアナフィラキシー初期対応チェックリスト(当直で迷わないアドレナリンの量・部位・体位)も合わせてどうぞ。

副業・兼業では労働時間が通算される——ただし許可のある宿日直は入らない

通算されるのは「個人の上限」のほう

厚生労働省労働基準局のQ&Aは、36協定の枠と個人の上限を区別したうえで、後者だけが通算されると説明しています。

そのため、同上限の適用においては、自らの医療機関における労働時間及び他の使用者の医療機関における労働時間が通算されることとなる。

厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」4-1

ここに宿日直許可が効きます。許可のある宿日直の時間は上限規制との関係で労働時間にカウントされないので、通算の対象にもなりません。当直バイトが「上限を食わない」と言われるのはこのためです。逆に、許可のないバイト先での当直は在院時間がまるごと自分の年間枠を削ります。

バイト先の水準が、自分に適用される上限を書き換えることがある

これは知られていない割に影響が大きい論点です。Q&Aの設例をそのまま引きます。

甲病院(A水準)でA水準の特定医師として勤務する者が、乙病院(B水準)でB水準の特定医師としての勤務を開始した場合、当該特定医師については、労働者個人の実労働時間に着目した上限として、B水準における「時間外・休日労働時間の上限」が適用されることとなる。

厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」4-2

逆向きの設例も示されています。

甲病院(B水準)でB水準の特定医師として勤務する者が、乙病院(A水準)でA水準の特定医師としての勤務を開始した場合、当該特定医師については、労働者個人の実労働時間に着目した上限として、引き続きB水準における「時間外・休日労働時間の上限」が適用されることとなる。

厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」4-3

本務がA水準(年960時間)でも、B水準の病院でB水準の特定医師として勤務を始めれば、自分に適用される上限はB水準(年1,860時間)側になります。枠が広がると読むこともできますが、実務的には「自分がどちらの上限で管理されているか」を、勤務先が変わるたびに確認する必要があるということです。

申告しなければ通算されない、という制度の作り

副業・兼業の場合における労働時間の通算については、医師の自己申告等に基づき行われるものであり、医師からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず

厚生労働省労働基準局「医師の時間外労働の上限規制に関するQ&A」4-6

制度は自己申告を土台にしています。同じQ&Aは続けて「各医師においても、各医療機関に副業・兼業先における労働時間を適切に申告する必要がある」と書いています。申告しなければ数字の上では収まってしまう。しかし体は通算されている——この距離が、医師の働き方改革でいちばん危ういところだと考えています。

誤解されやすい4つのこと

「救急や産科では取れない」——取れます

「救急」や「産科」だからという理由で許可を取得できないということはありません。「救急」や「産科」で宿日直許可を得ることはできますし、実際に、「救急」や「産科」で宿日直許可を取得している事例があります。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

「非常勤は対象外」——対象です

非常勤の医師についても宿日直許可の対象となります。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

非常勤だけで当直を回している場合の手当額について、FAQは「賃金構造基本統計調査報告の医師の賃金から算出した日額の3分の1の額を参考に評価した事例があります」と具体的に示しています。

「宿直は週1回まで」——例外が現に認められている

実際に例外が認められています。例えば、宿直週2回や日直月2回といった形で認められたケースがあります。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

週末に土曜の宿直から日曜の日直、日曜の宿直まで続ける「連直」を、遠方の非常勤医師で確保する実態を踏まえた例外です。

「本務先で週1回入ったらバイト先では入れない」——入れます

宿日直許可の回数の限度(別添①ポイント3参照)は、医療機関ごと(本務先と兼業先それぞれ)で認められた回数を示していますので、医療機関ごとに認められた回数の範囲内で宿日直許可のある業務に従事することが可能です。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

回数は医療機関ごとのカウントです。ただし同じリーフレットには、複数の使用者のもとで宿日直に頻繁に従事すると長時間の拘束につながる旨の留意事項も併記されています。制度上は可能でも、体は1つです。

数字で見る——許可件数は令和5年がピークだった

厚労省FAQに、全国の労働基準監督署が出した医師に関する宿日直許可の件数が載っています。

令和2年 令和3年 令和4年 令和5年 令和6年 令和7年(参考)
許可件数 144件 233件 1,369件 5,173件 2,715件 270件

上限規制の適用が2024年(令和6年)4月だったことを考えると、その前年の令和5年に集中しているのが読み取れます。144件だった令和2年の36倍です。ここから2つのことが言えます。

  • 多くの許可は「規制開始に間に合わせるため」に取られた、比較的新しいものである。許可の日付が数年前なら、その後に救急体制や人員が変わっていないかを確認する意味がある
  • 令和6年以降も年に千件単位で増えている。いま許可がない病院でも、来年には状況が変わり得る

※令和7年の数字は同資料に「参考」として掲載されているもので、集計途中の値です。

厚労省自身が釘を刺していること

この記事を書くにあたって、いちばん引用したかったのがこの一文です。許可を推進している当の厚生労働省が、FAQと解説資料の両方に書いています。

しかしながら、宿日直許可により在院時間の一部が上限規制との関係で労働時間から除外されることをもって、労働時間の短縮や勤務環境の改善がなされたものと捉えるべきではありません。

厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」

宿日直許可は、働き方が改善した結果を記録する仕組みであって、書類で時間を消す仕組みではありません。解説資料は、許可取得後にやるべきこととして、仮眠室の整備、タスク・シフト/シェアによる宿日直中の業務量削減、通常業務が発生したときのオンコール体制の確保、そして「宿日直明けの勤務者への配慮(連続当直をしない、当直明けの日勤をいれない等)」を並べています。

勤務先を評価するとき、あるいは自分が当直を組む側に回ったとき、見るべきなのは許可証の有無ではなく、この一覧のうち何個が実行されているかだと考えています。キャリアの選択肢そのものの整理は若手医師がキャリアに迷ったときに——「動く前」に考えたいことと、情報収集の始め方にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 宿日直許可がある当直は、時間外労働の年960時間・1,860時間に含まれますか。

A. 含まれません。厚生労働省のFAQは、宿日直許可を受けた場合「この上限規制との関係で労働時間とカウントされないこと」と説明しています。ただし許可された態様から外れた業務に従事した時間は労働時間として扱われ、上限の計算にも入ります。

Q. 当直中に急患を診たら、追加の賃金はもらえますか。

A. 必要です。厚生労働省は「その時間は労働基準法上の労働時間として取り扱う必要があり、宿日直手当とは別に本来の賃金(必要な割増賃金を含む)を支払う必要があります」としています。解説資料では、その時間を把握し賃金を支払っていない場合は労働基準法違反になると明記されています。

Q. 病院が「宿日直許可を取っている」と言えば、当直はすべて労働時間から外れますか。

A. 外れません。許可は所属診療科・職種・時間帯・業務の種類等を限って与えることができるため、自分が入る枠が許可の範囲に含まれているかは別に確認する必要があります。深夜の時間帯のみ、病棟宿日直業務のみといった許可も認められています。

Q. 当直手当の下限はいくらですか。

A. 一般の宿日直許可基準では、宿直または日直1回あたりの手当の最低額は、その事業場で宿日直に就くことが予定されている同種の労働者に支払われている賃金の1人1日平均額の3分の1以上とされています。非常勤医師だけで当直を回している場合に、賃金構造基本統計調査報告の医師の賃金から算出した日額の3分の1を参考に評価した事例があると厚生労働省は示しています。

Q. 本務先で週1回宿直に入っていると、バイト先では宿直に入れませんか。

A. 入れます。回数の限度は医療機関ごとに認められた回数を示すもので、本務先で1回、兼業先で1回という形で同じ週に従事することが可能です。ただし厚生労働省は、複数の使用者のもとで宿日直に頻繁に従事すると長時間の拘束につながることへの配慮も求めています。

Q. 副業・兼業先の労働時間を申告しないとどうなりますか。

A. 制度上は、医師からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要しないとされています。ただし同じQ&Aは、各医師が各医療機関に副業・兼業先の労働時間を適切に申告する必要があるとしています。申告しなければ書類上の数字は収まりますが、実際の労働時間は変わりません。

まとめ

宿日直許可は、当直を労働時間から外す強い効果を持つ一方で、条件から外れればその時間だけ、あるいは宿日直中の全時間が労働時間に戻ります。当直バイトを引き受ける前に確認したいのは、許可の有無そのものより、自分が入る時間帯・診療科・業務が許可の範囲に入っているか、そして1晩に何回呼ばれるのが平均かの2点です。後者は許可を取った病院なら必ず数えたことがある数字です。

そして厚生労働省自身が、許可の取得を働き方の改善と取り違えないよう釘を刺しています。見るべきは書類ではなく、仮眠室・タスクシフト・オンコール体制・当直明けの扱いのほうです。

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※本ブロックには紹介報酬を含むリンクが含まれます。掲載は当サイトの判断によるもので、診療上の推奨ではありません。

参照ソース(一次情報)

この記事は法令・通達・厚生労働省の公表資料に基づく一般的な解説です。個別の勤務条件の判断は、所轄の労働基準監督署または都道府県の医療勤務環境改善支援センターにご相談ください。

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