【医療職向け】ALSアルゴリズム(心停止アルゴリズム)とアドレナリン投与タイミング|救急科専門医が解説

心停止への対応は、感覚や慣れではなく「アルゴリズム」という共通の地図に沿って動くことで、チームのパフォーマンスが安定します。とりわけ現場で迷いやすいのがアドレナリンをいつ入れるかという一点です。実は、この投与タイミングは心電図波形の種類によって明確に変わります。この記事では、救急科専門医の視点から、二次救命処置(ALS)アルゴリズムの大枠と、アドレナリン・抗不整脈薬の投与タイミングをJRC蘇生ガイドライン2025/2020・AHA ACLSに沿って整理します。心肺蘇生全体の考え方は、ハブ記事心肺蘇生ガイドライン2025もあわせて確認してください。

アルゴリズムの大枠:波形で2本立てに分岐する

ALSアルゴリズムの出発点は、質の高い胸骨圧迫を継続しながら心電図波形を評価し、ショックリズムか、非ショックリズムかを判定することです。ここから対応は2つのルートに分かれます。

  • ショックリズム:心室細動(VF)/無脈性心室頻拍(無脈性VT)。除細動の適応となる波形です。
  • 非ショックリズム:無脈性電気活動(PEA)/心静止(asystole)。除細動の適応はありません。

いずれのルートでも、リズムチェックは2分ごと(CPR1サイクルごと)に行い、その合間は中断を最小化して質の高いCPRを続けます。ショックリズムであれば除細動を、非ショックリズムであればそのままCPRを継続し、2分後に再びリズムを評価します。除細動そのものの適応と手技の詳細は除細動とカルディオバージョンで扱っています。

アドレナリンの投与タイミング:波形で変わる

ここが本記事の中心です。心停止に用いるアドレナリンは1mgを静脈内投与(IV)または骨髄内投与(IO)し、以後3〜5分ごと(=CPR2サイクルごと)に反復します。この「3〜5分ごと」は波形にかかわらず共通ですが、最初の1回目をいつ入れるかが波形で異なります。

非ショックリズム(PEA/心静止):できるだけ早く

PEAや心静止では除細動が効かないため、アドレナリンをできるだけ早く投与することが推奨されています。静脈路・骨髄路が確保でき次第、速やかに1mgを投与し、以後3〜5分ごとに反復しながらCPRを継続します。早期投与が予後改善に関連するとされており、波形を確認してPEA/心静止と判断したら投与をためらわない姿勢が重要です。

ショックリズム(VF/無脈性VT):2回目の除細動の後から

一方、VF/無脈性VTでは初回の除細動を優先します。ガイドラインでは、ショックリズムに対するアドレナリンは2回目の除細動の後(=初回ショックで停止せず、難治性と判断された段階)から投与を開始するとされます。初回ショックで心拍再開が得られる可能性があるため、薬剤より電気ショックを先行させる、という考え方です。開始後は非ショックリズムと同様に3〜5分ごとに反復します。

整理すると、非ショックリズム=早期に開始ショックリズム=2回目ショック後に開始、そしていずれも以後3〜5分ごと——この3点を押さえておけば、現場での投与判断はぶれません。

ショックリズムでの抗不整脈薬:アミオダロンのタイミング

難治性のVF/無脈性VT、すなわち複数回の除細動とアドレナリン投与にも反応しない場合には、抗不整脈薬を加えます。第一選択はアミオダロンで、ガイドラインでは初回300mgを静注し、必要に応じて2回目150mgを追加するとされます。タイミングとしては、一般に3回目の除細動の後に投与するのが目安です。アミオダロンが使用できない場合の代替としてリドカインが挙げられます。抗不整脈薬はあくまで質の高いCPRと除細動、アドレナリンを土台とした上乗せである点を忘れないようにします。

可逆的原因の検索:4H4T

アルゴリズムを回しながら、並行して可逆的な原因の検索と是正を進めます。原因が取り除けなければ、いくら薬剤と除細動を繰り返しても心拍再開は得られにくいためです。覚え方として4H4Tが広く使われます。

  • 4H:低酸素(Hypoxia)/循環血液量減少(Hypovolemia)/低・高カリウム血症などの代謝異常(Hypo-/Hyperkalemia)/低体温(Hypothermia)
  • 4T:緊張性気胸(Tension pneumothorax)/心タンポナーデ(Tamponade)/中毒(Toxins)/血栓塞栓=肺塞栓・急性冠症候群(Thrombosis)

とくにPEAでは背景に是正可能な原因が潜んでいることが多く、4H4Tのスクリーニングが決定的な意味を持ちます。気道と換気の確保はこれらの是正の前提でもあり、詳細は気道管理・BVM換気を参照してください。院内での急変を早期に拾い上げる仕組みについてはRRS/RRT・NEWSで解説しています。

混同注意:心停止のアドレナリンとアナフィラキシーのアドレナリンは別物

医療職でも意外と取り違えやすいのが、アドレナリンの「使い方の違い」です。心停止のアドレナリンは1mgを静脈内(IV/IO)投与するのに対し、アナフィラキシーのアドレナリンは0.3mgを筋肉内(大腿前外側)に投与します。投与経路も用量も適応もまったく異なり、アナフィラキシーで安易に静注すれば重篤な有害事象を招きかねません。「アドレナリン=1mg静注」と機械的に覚えるのは危険で、場面ごとに投与法を切り替える必要があります。アナフィラキシー時の正しい投与についてはアナフィラキシーのアドレナリン投与で詳しく整理しています。

心拍再開(ROSC)が得られたら

リズムチェックで脈が触れ、心拍再開(ROSC)が確認できたら、アルゴリズムは蘇生後管理へと移行します。気道・呼吸・循環の再評価、12誘導心電図、原因検索、そして体温管理を含む集中治療が予後を左右します。ROSC後の体系的な管理はROSC後ケア・PCAS・TTMにまとめています。心停止アルゴリズムは「心拍を戻すこと」がゴールではなく、そこから始まる集中治療までを含めた一連の流れとして理解しておくことが大切です。

まとめ

ALSアルゴリズムは、ショックリズムか非ショックリズムかで2本立てに分岐し、質の高いCPRと2分ごとのリズムチェックを軸に回します。アドレナリンは非ショックリズムでは早期に、ショックリズムでは2回目ショック後に開始し、いずれも3〜5分ごとに反復。難治性VF/無脈性VTにはアミオダロン300mg→150mgを加え、並行して4H4Tで可逆的原因を潰していく——この骨格を頭に入れておけば、緊迫した現場でも次の一手に迷いません。数値と順序は必ずJRC蘇生ガイドラインなど一次ソースで最新の記載を確認してください。

参照ソース

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