「脂っこいものを食べたあと、みぞおちから右のわき腹がキリキリ・ズーンと痛む」「夜中に右上腹部が痛くて目が覚めた」「痛みが右の背中や右肩まで響く」――そんな経験はありませんか。健康診断の腹部エコーで「胆石がありますね」と言われたまま様子を見ている方も多いでしょう。この記事は、そうした胆石を指摘されたことがある方・食後に右上腹部の痛みをくり返す方に向けて、救急科専門医が「様子を見てよい胆石」と「受診・手術を考えるべき症候性胆石症」の見分け方をわかりやすく解説します。
胆石があっても、症状がなければ多くは経過観察でよい
胆石とは、肝臓でつくられる胆汁の通り道(胆嚢・胆管)にできる石のことです。実は、胆石をもつ人の多くは一生涯なんの症状も出ません。こうした無症候性胆石(症状のない胆石)は、日本消化器病学会の胆石症診療ガイドラインでも、原則として手術は行わず、年1回程度の経過観察でよいとされています。健診で偶然見つかっただけで痛みがない場合、あわてて手術する必要は基本的にありません。
ただし、無症状でも例外的に手術(胆嚢摘出)を検討することがあります。直径3cmを超える大きな結石、胆嚢の壁が石灰化した「陶器様(磁器様)胆嚢」、胆嚢ポリープを合併している場合などは、胆嚢がんのリスクとの兼ね合いから主治医と相談のうえ手術を考えます。一方、いったん痛みなどの症状が出た胆石(症候性胆石症)は事情が変わります。一度発作を起こすと再発をくり返しやすく、後述する胆嚢炎や胆管炎といった危険な合併症に進むリスクが高まるため、胆嚢を摘出する手術が検討されます。「無症状なら様子見/症状が出たら治療を考える」――この線引きが胆石とのつき合い方の基本です。
「胆石発作(胆石疝痛)」とはどんな痛み?
胆石発作は、脂っこい食事などをきっかけに胆嚢が収縮し、出口に石が詰まることで起こる痛みです。特徴は次のとおりです。
- 痛む場所:みぞおち(心窩部)から右のあばら下(右季肋部)
- きっかけ:脂っこい食事のあと、食後、とくに夜間に起こりやすい
- 放散痛:痛みが右肩や右の背中まで響くことがある
- 持続:数十分〜数時間でおさまることが多く、吐き気や嘔吐を伴うこともある
診察では、右のあばら下を押しながら深呼吸をしてもらうと痛みで息が止まる「Murphy(マーフィー)徴候」が手がかりになります。痛みが数時間でおさまり元気になるようなら胆石発作の段階です。しかし、強い痛みが6時間以上続く・熱が出るような場合は、単なる発作ではなく次に述べる急性胆嚢炎などの合併症に進んでいるサインです。
放置で怖いのは「合併症への進展」
胆石発作そのものより注意すべきは、そこから一歩進んだ合併症です。代表的なものを挙げます。
- 急性胆嚢炎:石が詰まったまま胆嚢に炎症・感染が起こる。痛みが数時間以上続き、発熱を伴う。
- 総胆管結石・急性胆管炎:石が胆管に落ち込み、発熱・黄疸・右上腹部痛(Charcot〈シャルコー〉三徴)を伴う。重症化しやすく緊急対応が必要。
- 胆石性膵炎:石が膵臓の出口をふさぎ、みぞおちや背中の激しい痛みを起こす。
とくに発熱・黄疸を伴う痛みは、胆管炎など命にかかわる状態のサインで、緊急の治療を要します。ここまで進む前の「胆石発作」の段階で見極め、適切なタイミングで手術を検討することが大切です。
【受診の目安】こんなときは早めに・すぐに受診を
すぐに(当日〜救急)受診したい症状
- 右上腹部やみぞおちの強い痛みが6時間たっても引かない
- 痛みに加えて発熱・悪寒がある
- 皮膚や白目が黄色い(黄疸)・尿が濃くなる
- くり返す嘔吐で水分もとれない
落ち着いてから日中に受診・相談したい場合
- 脂っこい食事のあとの右上腹部痛をくり返している(発作は落ち着いても一度は消化器内科・外科へ)
- 健診で胆石を指摘されたが放置している
胆石発作と似た右上腹部・側腹部の痛みは、尿路結石でも起こります。痛みの部位や性質での見分け方は「尿路結石とは?激痛発作の対処法と再発予防」もあわせてご覧ください。また、腹痛全般でいつ救急を受診すべきかは「お腹が痛いとき救急に行くべきサイン——急性腹症の見極め方」で詳しく解説しています。
診断と治療のはなし
診断の第一選択は腹部エコー(超音波検査)です。体への負担がなく、胆石や胆嚢の炎症をよくとらえられます。必要に応じてCTや血液検査を追加します。
治療は、症状のある胆石に対しては腹腔鏡下胆嚢摘出術(お腹に小さな穴を数か所あけて胆嚢ごと摘出する手術)が標準です。石だけ取り除いても再発しやすいため、胆嚢ごと取るのが原則です。無症状の胆石は前述のとおり原則手術不要で経過観察となります。「症状が出た=手術を相談する時期」と覚えておくとよいでしょう。自己判断で放置せず、痛みをくり返すなら一度専門医に評価してもらってください。
まとめ
- 胆石は症状がなければ多くは経過観察でよい(大結石・陶器様胆嚢・ポリープ合併は例外的に手術を検討)
- 脂っこい食事後・夜間の右上腹部痛(右肩・右背部に放散)は胆石発作のサイン
- 症状が出た胆石(症候性胆石症)は再発・合併症のリスクがあり胆嚢摘出術を検討
- 発熱・黄疸・6時間以上引かない激痛は緊急――胆嚢炎・胆管炎の危険信号
- 診断はまず腹部エコー、症状のある胆石は腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準
本記事は一般的な医学情報の解説であり、個別の診断・治療を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関を受診してください。
【参照ソース】
・日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン2021(改訂第3版)」
・Mindsガイドラインライブラリ(公益財団法人日本医療機能評価機構)
・MSDマニュアル プロフェッショナル版(肝胆道疾患)

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