救急外来には、「家族が急にぐったりして…」と連絡を受けて駆けつける糖尿病患者さんが少なくありません。その多くが低血糖による意識障害です。低血糖は適切に対処すれば回復しますが、対応が遅れると命に関わる場合もあります。
この記事では、救急科専門医の立場から低血糖の症状・応急処置・緊急受診のタイミングをわかりやすく解説します。
低血糖とは
低血糖とは、血糖値が正常範囲(70mg/dL以上)を下回った状態のことです。一般的に血糖値70mg/dL未満で低血糖と定義されますが、症状の出方には個人差があります。
糖尿病の薬(インスリン・スルホニル尿素薬など)を使用している方に多く見られますが、食事を抜いた場合や激しい運動後にも起こることがあります。
低血糖の症状
低血糖の症状は血糖値の低下度合いによって段階的に現れます。
軽度〜中等度(血糖値 50〜70mg/dL程度)
- 手や体の震え(振戦)
- 冷や汗・動悸・顔面蒼白
- 空腹感・吐き気
- 頭痛・集中力の低下
- ふらつき・脱力感
重度(血糖値 50mg/dL未満)
- 意識混濁・錯乱
- けいれん
- 意識消失(昏睡)
⚠️ 重度の低血糖は医療機関での治療が必要です。
低血糖の応急処置
本人が意識があり、飲み込める場合
- すぐにブドウ糖10〜20g(またはジュース150mL・ブドウ糖タブレット)を摂取させる
- 15分後に症状が改善しているか確認する
- 改善しない場合は再度ブドウ糖を摂取し、症状が続く場合は病院へ
💡 ポイント:チョコレートやクッキーなど脂肪分の多い食品は吸収が遅いため不向きです。ブドウ糖またはジュース(果汁・スポーツドリンク)が最適です。
意識がない・飲み込めない場合(緊急)
- 絶対に口から何かを飲ませてはいけません(窒息リスク)
- すぐに119番に電話して救急要請する
- グルカゴン自己注射キットがあれば使用する(医師の指示のもと)
病院に行くべきタイミング
以下のいずれかに当てはまる場合は、迷わず救急受診してください。
- 意識がない・呼びかけに反応しない
- けいれんがある
- ブドウ糖摂取後も30分以上症状が改善しない
- インスリンや糖尿病薬を過剰に使用した可能性がある
- 高齢者・腎機能障害がある方(薬の効果が長引きやすい)
低血糖を防ぐために
- 食事を抜かない・食事時間を守る
- 外出時は必ずブドウ糖タブレットやジュースを携帯する
- 運動前後の血糖管理を主治医と相談する
- 家族にも低血糖対応を知っておいてもらう
📚 参考文献・情報源
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
- 日本救急医学会「低血糖緊急対応マニュアル」
※本記事は上記ガイドライン・公的機関の情報をもとに救急科専門医が執筆しています。
まとめ
低血糖は糖尿病治療中の患者さんに起こりやすい緊急状態です。軽度であれば糖分摂取で回復しますが、意識障害を伴う場合は迷わず救急要請してください。日頃からブドウ糖を携帯し、家族と対応を共有しておくことが重要です。
気になる症状がある方は、まずかかりつけの糖尿病専門医や内科医にご相談ください。

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