溶連菌感染症とは?春に増える「のどの痛み」の正体と劇症型STSSの警告サイン

春から初夏にかけて、子どもを中心に「のどが痛い」「急に高い熱が出た」という訴えが増えてきます。その原因として見落とせないのがA群溶血性レンサ球菌(GAS)による溶連菌感染症です。

溶連菌は日常的によくみられる細菌感染症ですが、適切な治療をしなければリウマチ熱や急性糸球体腎炎といった重大な合併症を引き起こす可能性があります。さらに近年、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の報告数が過去最多を更新しており、成人でも注意が必要な感染症です。救急科専門医の視点から、溶連菌感染症の基本から劇症型の警告サインまで解説します。

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症は、A群β溶血性レンサ球菌(GAS: Group A Streptococcus)が主な原因菌です。飛沫感染や接触感染で広がり、学校や保育園などの集団生活の場で流行しやすいことが知られています。

流行のピークは冬(12月〜3月)春〜初夏(4月〜6月)の年2回あり、特に新学期が始まる4月以降は集団生活の再開と重なって患者数が増加します。

溶連菌感染症の主な症状

潜伏期間は2〜5日で、以下のような症状で発症します。

  • 突然の発熱(38〜39℃以上)
  • 強い咽頭痛(のどの痛み)
  • 全身倦怠感
  • 嘔吐(特に小児)
  • 扁桃の腫れ・白い浸出物
  • 苺舌(舌の表面がイチゴのようにブツブツになる)
  • 軟口蓋の点状出血
  • 体幹の発疹(猩紅熱型の場合)

一般的な風邪(ウイルス性上気道炎)との違いとして、溶連菌感染症では咳や鼻水が目立たないのが特徴です。「咳はないのに、のどだけがひどく痛い」という場合は溶連菌を疑う手がかりになります。

診断方法

溶連菌の診断には、外来で数分で結果が出る迅速抗原検査が広く用いられています。綿棒でのどの粘膜をぬぐうだけの簡便な検査です。

迅速検査の感度は約70〜90%(検査キットや検体採取方法により幅があります)で、偽陰性の可能性もあるため、臨床的に強く疑われる場合は咽頭培養検査を追加することもあります。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」では、検査で陽性が確認された場合に抗菌薬を投与することが推奨されています。

治療——ペニシリン系が第一選択

溶連菌感染症の治療の第一選択はペニシリン系抗菌薬です。

  • 第一選択:アモキシシリン(AMPC)内服 10日間
  • ペニシリンアレルギー(軽症):セファレキシン(第1世代セフェム系)
  • ペニシリンアレルギー(重症):クリンダマイシン

ここで大切なのは、「症状が良くなっても10日間きちんと飲みきる」ことです。日本の研究では、アモキシシリン10日間投与の除菌率は91.7%であり、短期間のセフェム系投与(82.0%)より有意に高いことが示されています。途中でやめてしまうと菌が残り、合併症のリスクが高まります。

放置すると怖い合併症

溶連菌感染症を適切に治療しなかった場合、免疫学的な機序を介して以下の合併症が起こることがあります。

リウマチ熱

溶連菌感染後2〜4週間で発症し、心臓の弁膜を障害する可能性があります。適切な抗菌薬治療で予防できることがわかっており、これが「10日間しっかり飲みきる」理由の一つです。

急性糸球体腎炎

溶連菌感染後1〜3週間で、血尿・むくみ・高血圧などの腎炎症状が出ることがあります。小児に多く、治療終了後も尿検査でのフォローアップが推奨されています。

近年急増する劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)

通常の溶連菌感染症とは別に、命に関わる重症型として劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS: Streptococcal Toxic Shock Syndrome)があり、近年大きな注目を集めています。

国立感染症研究所の集計によれば、2024年のSTSS報告数は過去最多水準に達し、1999年の統計開始以降で最も多い年となりました。特に50歳未満の若年層での増加が顕著であり、英国由来の「UK系統株(M1UK)」と呼ばれる変異株の国内への集積が2024年以降確認されています。

STSSの警告サイン

STSSは初期症状からわずか数時間〜数日で多臓器不全に至ることがある、致死率の高い感染症です。以下のような症状があれば、ためらわず救急医療機関を受診してください。

  • 手足の激しい痛み(外傷がないのに急速に悪化)
  • 傷口周辺の急速な腫れ・発赤・水疱
  • 38.5℃以上の高熱+全身状態の急激な悪化
  • 血圧低下・意識がもうろうとする
  • 皮膚の色が紫〜黒っぽく変化する

STSSはいわゆる「人食いバクテリア」とも呼ばれますが、小さな傷口や皮膚のひび割れから菌が侵入して発症するケースも報告されています。傷口の適切な洗浄・保護が予防の基本です。

日常でできる予防策

  • 手洗い:石けんと流水で20秒以上
  • 咳エチケット:マスクの着用、咳やくしゃみは肘の内側で
  • 傷口の清潔管理:小さな傷でも洗浄し、清潔なガーゼや絆創膏で保護
  • タオルや食器の共用を避ける:家族内で溶連菌の患者が出た場合
  • 体調不良時の早期受診:特に咳がないのに強い咽頭痛と高熱がある場合

まとめ

溶連菌感染症は「よくある感染症」として軽視されがちですが、抗菌薬を10日間飲みきらなければ合併症のリスクがあること、そして劇症型(STSS)は命に関わる緊急事態であることを覚えておいてください。

春は流行のピークを迎える時期です。のどの痛みと高熱が急に出たら自己判断で市販薬だけで済ませず、医療機関を受診して迅速検査を受けましょう。また、傷口が急速に悪化する、全身状態が急に悪くなるなどの異変があれば、迷わず救急車を呼んでください。

本記事は救急科専門医が監修しています。症状や治療については個人差があるため、必ず医療機関にご相談ください。

参照ソース

  • 厚生労働省「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html
  • 厚生労働省「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137555_00003.html
  • 国立感染症研究所「国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症の増加について」
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/tsls-m/2655-cepr/12594-stss-2023-2024.html
  • 厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000573655.pdf
  • 日本感染症学会「侵襲性A群レンサ球菌感染症」
    https://www.kansensho.or.jp/ref/d36.html

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