「体温が何度になったら救急車を呼んでいい?」「意識がおかしい気がするけど、大げさかな?」——夏の救急外来では、こうした迷いを抱えた患者さんや家族の方が毎年多く搬送されてきます。
結論からお伝えします。熱中症で救急車を呼ぶかどうかの判断は、体温の数字だけでは決まりません。意識状態・症状の組み合わせで判断することが、命を守るうえで最も重要です。
この記事では、救急科専門医の立場から、熱中症における救急車要請の正しい判断基準を、日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」と総務省消防庁のデータをもとに解説します。
体温だけで判断してはいけない理由
「体温41度を超えたら救急車」というイメージを持っている方が多いですが、これは半分正解で半分危険な考え方です。
熱中症の重症度は、体温と意識状態を組み合わせて判断します。日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」では、熱中症をI度〜IV度に分類しており、最重症のIV度は「深部体温40.0℃以上かつGCS(意識スケール)8点以下」と定義されています。
つまり、体温が40℃を超えていなくても、意識障害があれば最重症と同等の対応が必要です。逆に体温が39℃台でも、呼びかけに反応しない・けいれんしているなら即座に119番が必要です。
また、体表(脇の下や口腔内)で測った体温と、直腸などで測った「深部体温」には差があります。体表温度が低く見えても、深部では40℃を超えている可能性があります。家庭用体温計の数値を過信しないことが大切です。
救急車を呼ぶべき症状チェックリスト
以下のいずれかひとつでも当てはまる場合は、ためらわずに119番に電話してください。
- 意識がおかしい・呼びかけに反応しない(ぼんやりしている、話がかみ合わない、目が開かないなど)
- けいれんが起きている
- 体温が40℃以上(体表温度)または皮膚が明らかに熱く、ぐったりしている
- 自分で水が飲めない(嘔吐を繰り返している、意識が低下しているため)
- 倒れて自力で立てない
- 高齢者・乳幼児・持病がある方で症状が出ている場合
- 涼しい場所に移動させて水分補給をしたが、30分以上経っても改善しない
日本救急医学会のガイドライン2024では、現場で体温測定が難しい場合でも「皮膚に明らかな熱感があり、意識レベルがJCS(ジャパン・コーマ・スケール)100以上(=呼びかけても開眼しない)」であれば最重症として扱い、直ちに救急車を呼ぶことが推奨されています。
「大げさかな?」と迷ったら迷わず119番。救急隊員が現場でトリアージ(重症度の振り分け)を行うため、不要であれば現場対応になります。躊躇することで命取りになるケースを、救急現場では毎年目撃しています。
救急車を呼びながらできる応急処置
119番に電話したあと、救急車が到着するまでの間にできることがあります。冷却の開始が1分1秒でも早いほど、後遺症や死亡リスクが下がります。
1. 涼しい場所に移動させる
エアコンの効いた室内、または日陰の涼しい場所に移動させます。移動が難しい場合は、その場で冷却を開始してください。
2. 衣服をゆるめ・体を濡らして扇ぐ
上着・ベルト・ネクタイなどをゆるめ、皮膚を露出させます。水をかけてうちわや扇風機で扇ぐ「気化冷却」が、家庭でできる最も効果的な冷却法です。
3. 太い血管が通る部位を集中的に冷やす
氷嚢(こおりのう)や保冷剤がある場合は、以下の部位に当ててください。体表近くに太い静脈が走っており、冷却効率が高い部位です。
- 首の両側(頸部)
- わきの下(腋窩)
- 太ももの付け根(鼠径部)
4. 意識があれば経口補水液・水を飲ませる
意識がしっかりあり、自分で飲める場合のみ、経口補水液(OS-1など)または水を少しずつ飲ませてください。意識がない・ぐったりしている場合は誤嚥のリスクがあるため、無理に飲ませてはいけません。
5. 回復体位を保つ
意識がない・嘔吐している場合は、横向きに寝かせる「回復体位」をとらせ、気道確保を優先してください。
迷ったときは?119番に相談する方法
「救急車を呼ぶほどではないかも」と迷う場合、以下の方法で相談できます。
#7119(救急安心センター)に電話する
多くの都道府県で「#7119」に電話すると、看護師や医師が「救急車が必要かどうか」を相談に乗ってくれます(対応地域は消防庁ウェブサイトで確認)。
ただし、意識障害・けいれん・体温40℃以上がある場合は#7119を待たず、直接119番に電話してください。相談している間に容態が悪化することがあります。
119番に「相談」として電話する
119番は「救急車を呼ぶかどうか迷っている」という相談にも応じています。「救急車が必要か教えてほしい」と伝えれば、オペレーターが症状を聞いて判断を助けてくれます。遠慮なく使ってください。
まとめ
熱中症で救急車を呼ぶ判断は、体温の数字だけでは決まりません。以下のポイントを覚えておいてください。
- 意識障害・けいれんがあれば体温に関わらず即119番
- 体温40℃以上+意識が変であれば最重症扱いで即119番(ガイドライン2024)
- 自分で水が飲めない・30分経っても改善しない場合も救急車を呼ぶ目安
- 救急車を待つ間は冷却を最優先(水をかけて扇ぐ・首・わき・鼠径部を冷やす)
- 迷ったら#7119または119番に相談する
熱中症は早期対応で命が助かる病気です。「大げさかな」という遠慮が、最悪の結果を招くことがあります。少しでも不安を感じたら、すぐに行動してください。
(参考:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」、総務省消防庁 熱中症情報)
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