脳卒中とは?救急科専門医が2025年最新ガイドラインをもとに症状・種類・治療をわかりやすく解説

脳卒中は日本人の「死因・要介護原因」の上位疾患

脳卒中は、脳の血管に異常が起きて脳の働きが突然損なわれる病気の総称です。日本では毎年多くの方が脳卒中を発症し、厚生労働省の統計では脳血管疾患は死因の上位を占め続けています。また、要介護状態になる原因としても脳卒中は常に上位にあり、「命は助かったが後遺症が残った」というケースが少なくありません。

2025年、日本脳卒中学会は「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」を発表し、急性期の血圧管理・血栓回収療法・鎮静管理などについて重要な改訂が行われました。本記事では、救急科専門医の立場から、脳卒中の基本知識と最新の治療指針をわかりやすく解説します。


脳卒中の種類:大きく3つに分類される

脳卒中は血管が「詰まる」タイプと「破れる」タイプに大別されます。

① 脳梗塞(脳卒中全体の約6割)

脳の血管が詰まり、その先の脳細胞に血液が届かなくなる状態です。大きく2つのタイプがあります。

  • アテローム血栓性脳梗塞:動脈硬化によって脳や頸部の太い血管が詰まるタイプ。高血圧・糖尿病・脂質異常症がリスクです。
  • 心原性脳塞栓症:心房細動などの不整脈によって心臓内でできた血栓(血の塊)が脳に飛んで詰まるタイプ。症状が重くなりやすい特徴があります。

② 脳出血(脳内出血)

脳の中の細い血管が破れて出血するタイプです。高血圧が主な原因で、出血した部位によって症状が異なります。脳梗塞と比べて後遺症が残りやすく、死亡率も高い傾向があります。

③ くも膜下出血

脳を包む「くも膜」の下の空間に出血が広がるタイプです。原因の多くは脳動脈瘤(血管のコブ)の破裂で、「今まで経験したことがないほどの激しい頭痛」が突然起こるのが典型的な症状です。発症直後に意識を失うこともあり、緊急度が極めて高い病態です。


脳卒中を疑ったらすぐに救急車を!「FAST」で症状を確認

脳卒中は発症からの時間が治療成績に直結します。日本脳卒中学会・国立循環器病研究センターが普及を進めている「FAST(ファスト)」は、脳卒中の3大症状を素早く確認するための合言葉です。

頭文字 確認すること 典型的な所見
F(Face) 顔の麻痺 笑ったとき、顔の片側が下がる
A(Arm) 腕の麻痺 両腕を前に伸ばすと片方が下がる
S(Speech) 言語障害 呂律が回らない・言葉が出ない
T(Time) 発症時刻の確認 症状に気づいた時刻を記録してすぐに119番

FASTの3項目のうち1つでも該当すれば、脳卒中の可能性が高いと考えられています。「様子を見る」は禁物です。発症時刻を記録して、すぐに救急車を呼んでください。


脳梗塞の急性期治療:「時間との戦い」

脳梗塞の急性期治療は、詰まった血管を一刻も早く再開通させることが目標です。主に2つの方法があります。

① rt-PA(アルテプラーゼ)静脈内血栓溶解療法

血栓を溶かす薬(rt-PA)を点滴で投与する方法です。発症から4.5時間以内が治療の適応となります。治療開始が早いほど効果が高く、来院後1時間以内の投与開始が目標とされています。

② 機械的血栓回収療法(血管内治療)

カテーテルを使って血管内に器具を送り込み、血栓を直接取り除く方法です。主に脳の太い血管(内頸動脈・中大脳動脈など)が詰まった重症例に適応されます。発症から6時間以内が基本ですが、画像検査で脳組織が生きていると判断された場合は、それ以降でも適応になる場合があります。


2025年ガイドライン改訂の主なポイント

日本脳卒中学会が2025年に発表した「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕」では、52項目の改訂が行われました。特に臨床現場で重要な3点を紹介します。

① 血栓回収療法前後の血圧管理が明確化

血栓回収療法を行う際、血栓回収前の降圧は必ずしも必要ないとされた一方、血栓回収後は収縮期血圧180mmHg以下への速やかな降圧が妥当と改訂されました。また、回収中および回収後に収縮期血圧140mmHg以下の過度な降圧は避けるべきとも明記されました。

② 急性期の血糖管理

脳卒中急性期には高血糖を是正し、血糖値180mg/dL未満を保つことを考慮してよいと採用されました。高血糖は脳梗塞の転帰を悪化させることが知られており、入院中の血糖管理がより重要視されるようになっています。

③ 血栓回収療法中の麻酔管理

超急性期の血栓回収療法時には、意識下鎮静(MAC)・全身麻酔のいずれも妥当とされました(推奨度B、エビデンスレベル中)。施設状況や患者状態に応じた柔軟な対応が可能になっています。


脳卒中を防ぐために:リスク因子の管理が最重要

脳卒中は、生活習慣の改善とリスク因子の管理によって予防できる病気です。主な危険因子には以下のものがあります。

  • 高血圧:最大のリスク因子。家庭血圧での管理が重要です。
  • 心房細動:心原性脳塞栓症の主要原因。自覚症状なく進行することも多く、定期的な脈の確認・心電図検査が推奨されます。
  • 糖尿病・脂質異常症:動脈硬化を促進します。
  • 喫煙・過度の飲酒:禁煙・節酒が脳卒中リスクを下げます。

「毎年の健診で異常を指摘されているけれど放置している」という方は、ぜひかかりつけ医への相談を検討してください。


まとめ

  • 脳卒中には脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3種類がある
  • FASTで症状を確認し、1つでも該当したら迷わず119番
  • 脳梗塞の血栓溶解療法は発症4.5時間以内、血栓回収療法は6時間以内が基本目安
  • 2025年改訂ガイドラインで血圧管理・血糖管理・麻酔管理の推奨が更新された
  • 予防には高血圧・心房細動・糖尿病などのリスク管理が最も重要

「なんか変だな」と感じたら、その瞬間に行動することが、後遺症なく回復できるかどうかを左右します。ご家族や周囲の方にも、ぜひこの知識を共有してください。


参照ソース

  • 日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕改訂項目」
  • 日本脳卒中学会「脳卒中の予防・発症時の対応」
  • 国立循環器病研究センター「脳卒中|病気について知る」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」

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