突然の側腹部痛、尿管結石とは限りません 見逃されやすい「腎梗塞」とは【救急科専門医が解説・2026年版】

すぐ受診の目安(危険サインのチェック)

以下に当てはまる場合は、尿管結石と思い込まず、できるだけ早く救急外来を受診してください。

  • 突然はじまった強い側腹部痛・腰背部痛があり、嘔吐をともなう
  • 心房細動(不整脈)、心臓弁膜症、過去に脳梗塞・心筋梗塞を指摘されたことがある
  • 強い痛みなのに、尿に血が混じっている感じ(赤い尿)がほとんどない
  • 痛みに加えて、発熱・冷や汗・血圧の変動がある
  • 市販の鎮痛薬や水分摂取でまったく痛みが治まらない

とくに「不整脈(心房細動)の持病があり、突然の側腹部痛が出た」という組み合わせは要注意です。この記事では、救急の現場で尿管結石と間違われやすい「腎梗塞(じんこうそく)」について、救急科専門医がわかりやすく解説します。

腎梗塞とは? ―― 腎臓の血管が詰まる病気

腎梗塞とは、腎臓に血液を送る「腎動脈」やその枝が、血のかたまり(血栓・塞栓)によって突然詰まり、その先の腎臓の組織が酸素不足で壊れてしまう病気です。心臓における心筋梗塞、脳における脳梗塞と同じ「詰まる」タイプの血管トラブルが、腎臓で起こったものと考えるとイメージしやすいでしょう。

詰まりの原因(塞栓源)として代表的なのは次のようなものです。

  • 心房細動などの不整脈:心臓の中で血のかたまりができ、それが腎動脈へ飛ぶ
  • 心臓弁膜症・感染性心内膜炎:弁にできた血栓や疣腫(ゆうしゅ)が原因となる
  • 大動脈解離:大動脈の壁が裂け、腎動脈の血流が妨げられる
  • 血液が固まりやすい体質(凝固異常)などのほか、明らかな原因が特定できない場合もあります

尿管結石とそっくり ―― でも見分けには検査が必要

腎梗塞の症状は、突然の側腹部痛・腰背部痛・腹痛、そして悪心・嘔吐、ときに発熱と、尿管結石(尿路結石)の発作と非常によく似ています。このため、最初は「結石だろう」と判断されやすいのです。

手がかりの一つになるのが血尿の程度です。尿管結石では、石が尿路の粘膜を傷つけるため、目で見て分かるような血尿(肉眼的血尿)がしばしばみられます。一方で腎梗塞は、肉眼的な血尿が乏しい、あるいは無いことが多いとされています。

ただし注意したいのは、腎梗塞でも顕微鏡で調べると血尿(顕微鏡的血尿)がみられることがあるという点です。逆に結石でも血尿がはっきりしないこともあります。つまり「血尿があるかどうか」だけで結石と腎梗塞を見分けることはできません。最終的な区別には、後述する造影CTなど医療機関での検査が必要です。あくまで「結石のような激痛なのに目に見える血尿がはっきりしない」「しかも高齢で心房細動などの持病がある」という場合は、腎梗塞も念頭に置いて受診する、という目安として役立ちます。

なぜ見逃されやすいのか

腎梗塞は比較的まれな病気であるうえ、症状が結石や腰痛、胃腸の不調などと紛らわしいため、診断にたどり着くまでに時間がかかることがあります。「よくある結石」と思い込んでしまうと、本来必要な検査が行われず、診断が遅れる原因になります。だからこそ、患者さん自身やご家族が「目に見える血尿がない」「不整脈の持病がある」といった情報を医師に伝えることが、早期発見につながります。

診断 ―― 造影CTと血液検査

腎梗塞の確定診断の中心となるのは造影CT検査です。腎臓のどの部分に血流が途絶えているかを画像で確認できます。

血液検査では、組織が壊れたときに上昇するLDH(乳酸脱水素酵素)が上昇することが多く、診断の手がかりになります。ただしLDHが正常でも腎梗塞を否定できるわけではなく、診断の主役はあくまで造影CTです。このほか、血栓の存在を反映するDダイマーが参考にされたり、塞栓源を探すために心電図や心臓超音波検査が追加されたりします。

治療 ―― 抗凝固療法が中心

治療の柱は、血液を固まりにくくして血栓の進行や再発を防ぐ抗凝固療法です。発症からごく早い段階では、詰まった血管の血流を再開させるためのカテーテル治療や血栓溶解療法が検討されることもありますが、これらは一部の症例で選択される補助的な治療であり、すべての患者さんに行われるわけではありません。治療の中心はあくまで抗凝固療法です。

あわせて、腎機能や血圧の管理、そして原因となった心房細動などの基礎疾患の治療が重要です。再発予防のため、退院後も継続的な通院と内服が必要になることが少なくありません。早期に診断・治療ができれば、腎機能を守れる可能性が高まるため、「早く気づくこと」が何より大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 結石と腎梗塞は自分で見分けられますか?

自己判断で正確に見分けることはできません。血尿の有無だけでも区別はできません。ただし「強い痛みなのに目に見える血尿がない」「心房細動など心臓の持病がある」場合は腎梗塞の可能性も考え、自己判断で様子を見ずに医療機関で造影CTなどの検査を受けることが大切です。

Q2. 腎梗塞になると腎臓の働きは戻らないのですか?

詰まった範囲や治療開始までの時間によって異なります。範囲が限られ早期に治療できれば腎機能が保たれることもありますが、広範囲で発見が遅れると腎機能の低下が残ることもあります。早期受診が予後を左右します。

Q3. 一度なったら再発しますか?

原因となる心房細動などが残っていると再発のリスクがあります。そのため、原因疾患の治療と抗凝固薬の継続、定期的な通院が再発予防にとても重要です。

まとめ

腎梗塞は、尿管結石とよく似た突然の側腹部痛で発症しますが、「目に見える血尿が乏しい」「心房細動などの持病がある」という点が腎梗塞を疑うきっかけになります。ただし血尿の有無だけでは結石と区別できず、確定には造影CTが必要です。まれな病気ですが、見逃すと重篤化につながりかねません。突然の強い側腹部痛と嘔吐があり、とくに不整脈や心臓病の既往がある方は、結石と決めつけずに早めに救急受診してください。気になる関連テーマとして「尿路結石」「心房細動・不整脈」「敗血症」もあわせてご確認ください。

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。

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