サウナで体調不良になったら?めまい・立ちくらみの原因と危険なサイン|救急科専門医が解説【2026年版】

サウナで体調不良になった——めまい、立ちくらみ、吐き気、動悸。サウナ室や水風呂の前後で起きるこれらの症状には、共通した体の変化があります。消費者庁が2024年6月5日に公表した注意喚起によれば、事故情報データバンクに登録されたサウナ浴に関する事故情報は78件・受傷者82人(2024年4月末日時点)で、2014年度から2021年度までは平均して4件程度だった年度別の登録件数が、2022年度と2023年度はそれぞれ10件に増えています。

この記事では、救急科専門医が、①サウナで体調不良が起きるとき体の中で何が進んでいるのか、②消費者庁のデータが示す「40歳を境に変わる」事故の中身、③今日はやめておいたほうがいい状態、④倒れないための入り方、⑤受診と救急要請の目安を、消費者庁と環境省の一次資料に沿って解説します。

  1. サウナで体調不良が起きるとき、体の中では3つのことが同時に進んでいる
  2. 消費者庁のデータ——40歳を境に「けが」から「意識の異常」に変わる
  3. 10分で汗500mL——サウナの脱水は自覚より速く進む
  4. 水風呂で血圧200mmHg——「ととのう」の裏側で起きていること
  5. サウナ室で意識を失うと、なぜ重いやけどになるのか
  6. 今日はサウナをやめておいたほうがいい人・状態
  7. 倒れないためのサウナの入り方——一次資料に書かれていることだけ
  8. サウナや浴室で人が倒れていたら、その場で何をするか
    1. サウナ室で動けなくなっている人を見つけたとき
    2. 浴槽でぐったりしている人を見つけたとき
  9. 受診の目安——救急科専門医が見ているライン
  10. よくある質問(FAQ)
    1. サウナで気持ち悪くなりました。水風呂に入れば治りますか?
    2. サウナから出たときに立ちくらみがしました。受診は必要ですか?
    3. お酒を飲んだあと、少し時間を空ければサウナに入っても大丈夫ですか?
    4. 「ととのう」感覚は、体に良いサインですか?
    5. サウナで汗をかけば、暑さに強い体になりますか?
    6. 高齢の親がサウナを習慣にしています。やめさせるべきですか?
    7. 子どもをサウナに入れても大丈夫ですか?
    8. サウナ室で人がぐったりしています。まず何をすればいいですか?
  11. まとめ
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  13. 参照ソース(一次情報)

サウナで体調不良が起きるとき、体の中では3つのことが同時に進んでいる

サウナで起きる不調は、気合いや慣れの問題ではなく、循環と体液の問題です。整理すると次の3つが同時に進んでいます。

体に起きていることその結果として出る症状
①発汗で体液が減る(脱水)
サウナ室の室温は多くが50〜100℃に設定されている
のどの渇き、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気
②熱で血管が広がり、血圧が下がる
体表の血管が開いて熱を逃がそうとする
立ちくらみ、目の前が暗くなる、失神
③水風呂で血管が一気に締まり、血圧が上がる
急激な温度差で交感神経が刺激される
動悸、胸の苦しさ、頭痛。不整脈による意識消失
出典:消費者庁「サウナ浴での事故に注意 - 体調に合わせて無理せず安全に -」(令和6年6月5日)および同資料の有識者コメントをもとに作成

①と②は体温が上がる方向、③は下がる方向の負荷で、方向は逆ですがどちらも「血圧が大きく動く」という一点で共通しています。サウナで倒れる人の多くは、この振れ幅に体がついていけなくなっています。

なお当サイトには熱中症の記事群がありますが、そちらが扱うのは意図せず暑さにさらされた場合です。熱中症の症状と初期症状室内熱中症は「逃げられる環境から逃げ遅れた」状況を、かくれ脱水は「気づかないうちに何日もかけて進む脱水」を扱っています。この記事が扱うのは自分の意思で高温環境に入り、短時間で体液と血圧を動かすという、まったく別の入り方です。生理の中身は共通していますが、注意すべき点が違います。

消費者庁のデータ——40歳を境に「けが」から「意識の異常」に変わる

消費者庁の注意喚起から、事故の中身を見ていきます。受傷者82人の内訳は次のとおりです。

項目内訳
事故発生場所入浴施設45人(54.9%)、宿泊施設15人、スポーツ施設13人、住宅(家庭用サウナ)4人、屋外(アウトドア)2人、不明3人
受傷内容
(内容が判明した80人・重複あり)
やけど31件、切り傷・擦り傷等24件、骨折・打撲14件、めまい・意識障害7件、爪剥がれ4件、循環器障害3件、一酸化炭素中毒3件、皮膚障害3件
受傷者の年齢40〜59歳28人、60〜79歳25人(年齢不明11人を除くと合わせて約7割)、20〜39歳12人、80歳以上3人、20歳未満3人
傷病の程度1〜2週間18人、治療1週間未満14人、1か月以上13人、3週間〜1か月7人、医者にかからず8人、死亡2人、不明20人
出典:消費者庁「サウナ浴での事故に注意」(令和6年6月5日)。事故情報データバンク登録分、2024年4月末日時点

救急の視点でいちばん重要なのは、同資料が年齢別に付けている次の一文です。

なお、40歳未満の受傷内容は、「やけど」や「切り傷・擦り傷等」などの外傷がほとんどであるのに対し、40歳以上の受傷内容は、外傷のほか、「めまい・意識障害」や「循環器障害」なども含まれています。

消費者庁「サウナ浴での事故に注意」(令和6年6月5日)

つまり、若い世代のサウナ事故はぶつけた・滑った・熱いものに触れたという「外側のけが」が中心なのに対して、40歳を超えると体の内側で起きる異常が混ざってくるということです。同じサウナ室で同じ入り方をしていても、起きることが変わります。

ただしこの数字の読み方には注意が必要です。78件という数字は「事故情報データバンクに登録された件数」であって、サウナ利用者全体でどれだけ事故が起きているかを示す発生率ではありません。同データバンクは事実関係および因果関係が確認されていない事例も含むとされています。また2022年度以降に登録件数が増えたことも、サウナ人口の増加と関心の高まりによって報告が増えた影響を含んでいる可能性があります。「サウナが急に危険になった」と読むのではなく、どんな事故が起きているかの一覧として読むのが正しい使い方です。

10分で汗500mL——サウナの脱水は自覚より速く進む

消費者庁の資料に添えられた有識者コメント(東京都市大学人間科学部・早坂信哉教授/医師・温泉療法専門医)は、脱水についてこう述べています。

10分間のサウナ浴で汗が500mL程度出るという報告があります。これは体重の約1%に当たりますが、人間は体重の1〜2%の水分を失うと脱水症となり、嘔吐や微熱を引き起こすこともあります。更に脱水が進むと全身倦怠感や頭痛、めまいなどの症状をひき起こし(後略)

消費者庁「サウナ浴での事故に注意」別紙・有識者コメント

体重60kgの人なら1%は600mL。サウナ室に10分いるだけで、脱水症の入り口に届く量の体液が出ていくという計算になります。しかもこれは1セット目の話で、2セット、3セットと重ねればその分が積み上がります。

問題は、この量が減ってものどの渇きが追いついてこないことです。渇きは体液が減ってから遅れて出てくる感覚で、しかも高齢になるほど鈍くなります(詳しくはかくれ脱水の記事で解説しています)。「まだ渇いていないから大丈夫」は、サウナではとくに当てになりません。

日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024は、熱中症の診断基準を「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、強い口渇感、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、痙攣、せん妄、小脳失調、高体温等と定めています。サウナ室は紛れもなく暑熱環境です。サウナで出るこれらの症状は、この診断基準にそのまま当てはまります。屋外で起きれば熱中症として扱われるものと、体の中で進んでいることは変わりません。

補足しておくと、同ガイドライン(全81ページ)の本文を機械的に検索しても「サウナ」「水風呂」「入浴」という語は1回も出てきません。学会ガイドラインがサウナを直接扱っていないという意味であって、サウナが安全だという意味ではありません。だからこそ、以下では消費者庁と環境省の資料を軸にしています。

なお、汗で失われるのは水だけではありません。水分だけを大量に補ってナトリウムが薄まると別の問題が起こります。これについては水中毒(運動関連低ナトリウム血症)の記事で詳しく扱っています。サウナのあとに水を一気に飲むより、少量ずつ、塩分を含むものと合わせるほうが理にかなっています。

水風呂で血圧200mmHg——「ととのう」の裏側で起きていること

サウナ→水風呂→外気浴という入り方は広く知られていますが、この中でもっとも循環に負担がかかるのがサウナから水風呂へ移る瞬間です。消費者庁の資料は、その負荷を数字で示しています。

サウナ直後に突然水風呂に浸かると、熱さから冷たい環境に急に身をさらすことになるため、急激な温度差が生じ、交感神経が刺激されて血管が収縮し血圧が上昇しますが、血圧が200mmHg程度まで上昇したという報告もあります。これにより脳卒中や心筋梗塞、狭心症を発症するおそれがあり、脈の低下による不整脈が原因で意識を失うこともあります。動脈硬化となる中高年や高齢者、血圧の高い人、心臓疾患のある人が特に危険ですが、若い人でも冷水による急な強い刺激は不整脈を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。

消費者庁「サウナ浴での事故に注意」別紙・有識者コメント

ここで見落とされがちなのが「脈の低下による不整脈」のほうです。血圧が上がる話は知られていますが、冷たい水に顔や体を急につけたときには逆に脈が遅くなる反応も起こり、これが強く出ると意識を失うことがあります。水の中で意識を失えば、そのまま沈みます。「若いから大丈夫」が通用しないのはこの経路です。

消費者庁の資料は、対策としてぬるいお湯で汗を流し、手足にかけ水をするなど少しずつ水風呂の温度に体を慣らすことを挙げ、そのうえでこう述べています。

水風呂が苦手な方や入ると体調が悪くなるといった方は、無理に水風呂に入る必要はなく、自身の体調に合わせ、サウナ浴と外気浴を交互に行うなどの入り方なども検討しましょう。(中略)特に水風呂に入ると動悸がしたり胸が苦しく感じるような方は水風呂には入らない方が良いでしょう。

消費者庁「サウナ浴での事故に注意」

水風呂は必須ではありません。入ると動悸や胸苦しさが出る人は、それが体からの合図です。慣れれば平気になるものではなく、避けるべき反応として扱ってください。

サウナ室で意識を失うと、なぜ重いやけどになるのか

サウナでの体調不良で救急医がもっとも警戒するのは、高温の密閉空間で動けなくなることです。消費者庁が挙げている事例を引用します。

スーパー銭湯のサウナ室で、座った状態で意識を失った。マット交換のため入室したスタッフが異変に気づき、救急搬送された。意識を失っていた時に接していた部分に重度のやけどを負っており、右足の指を5本切断。皮膚移植のため2度手術した。(70歳代、男性)

消費者庁「サウナ浴での事故に注意」事例4

意識を失った時点では、それはめまいや失神という「一過性の出来事」です。ところが高温のベンチや床に肌が触れたまま動けない時間が続くと、その接触部が深いやけどになります。健康な状態なら熱いと感じて体を動かしますが、意識がなければそれができません。同資料も、体調不良によりサウナ室内で長時間動けなくなると、ベンチや壁など肌が直接触れている部分に重いやけどを負う可能性があると明記しています。

同じ構造は浴槽でも起こります。消費者庁の別の注意喚起は、42度で10分入浴すると体温が38度近くに達し、高体温等による意識障害で浴槽から出られなくなったり、浴槽内にしゃがみ込んだりして溺水してしまうおそれがあると説明しています。厚生労働省の人口動態統計(令和6年)では、「浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水」による死亡者数は7,776人で、うち65歳以上が7,363人(約95%)。65歳以上の交通事故による死亡者数2,103人の3倍以上にあたります。

浴室での事故は冬に多いのは事実で、消費者庁が令和元年の人口動態統計をもとに集計した月別の死亡者数でも、1月がピーク(937人)で、最も少ない9月(98人)とは約10倍の差があります。ただし夏がゼロになるわけではありません。夏は屋外での発汗ですでに体液が減った状態から入浴やサウナに入るという、冬にはない前提が加わります。季節の統計を「夏は安心」と読み替えないでください。

今日はサウナをやめておいたほうがいい人・状態

ここは体感ではなく公的な基準があります。環境省が温泉法第18条第1項にもとづいて定めた掲示基準(平成26年7月1日改訂)は、温泉の一般的禁忌症(浴用)を次のように定めています。禁忌症とは「1回の温泉入浴又は飲用でも有害事象を生ずる危険性がある病気・病態」と定義されています。

  • 病気の活動期(特に熱のあるとき
  • 活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合
  • 少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気
  • 消化管出血、目に見える出血があるとき
  • 慢性の病気の急性増悪期

これは温泉についての基準ですが、消費者庁の資料に寄せられた温泉療法専門医のコメントも、サウナで入浴を避けるべきときとしてほぼ同じ内容に加え、食事の直後、運動の直後、飲酒後(二日酔いも含む)を挙げています。そのうえで、脳卒中後や心臓疾患、高血圧で治療中の人、妊娠中の場合は主治医に確認してからとしています。

環境省の掲示基準はさらに具体的で、入浴前の注意として次を挙げています。

  • 食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けること。酩酊状態での入浴は特に避けること
  • 過度の疲労時には身体を休めること
  • 運動後30分程度の間は身体を休めること
  • 高齢者、子供及び身体の不自由な人は、1人での入浴は避けることが望ましい
  • 浴槽に入る前に、手足から掛け湯をして温度に慣らすとともに、身体を洗い流すこと
  • 特に起床直後の入浴時などは脱水症状等にならないよう、あらかじめコップ一杯程度の水分を補給しておくこと

入浴温度についても、高齢者、高血圧症若しくは心臓病の人又は脳卒中を経験した人は、42℃以上の高温浴は避けることと明記されています。心疾患の既往がある方は、そもそも主治医の判断が先です。消費者庁の事例には、心筋梗塞の既往がある50歳代の方がスポーツクラブのサウナ利用中に心臓発作を起こし3日間入院し、医師からサウナ等は利用しないよう言われたというものがあります。

倒れないためのサウナの入り方——一次資料に書かれていることだけ

ここでは私見を足さず、消費者庁と環境省の資料に書かれている内容だけを時系列に並べます。

場面やること
入る前コップ1〜2杯の水分をとる/貴金属とロッカーの鍵の金属部分が肌に触れないようにする(高温になりやけどの原因になる)/掲示されている注意事項を読む
サウナ室に入る前シャワーで体を流す。温かいシャワーを手足の末端から体の中心部に順番にかけて、血圧の急上昇を防ぐ/床濡れによる転倒防止のため体の水滴を拭いてから入る
サウナ室で下段から座る(1段上がると約10℃上がる。最初から上段に座ると血圧が急上昇する危険)/室温100℃の室では上段が最も高く中段70〜80℃・下段50℃付近という調査がある
出るタイミング汗が出てきたら滴るまで我慢せず出る(汗をかいた時点で体温は0.5〜1.0℃上昇しており、十分な温熱作用が得られたサイン)/動悸を感じたら出る(体温が上がりすぎているサイン)/アウフグースなどのイベント中でも我慢しない
水風呂ぬるいお湯で汗を流してから、手足にかけ水をして少しずつ慣らす/苦手なら入らなくてよい。動悸や胸苦しさが出る人は入らない方がよい
浴槽・サウナ室から出るとき立ちくらみを起こさないようゆっくり出る/濡れた床と扉に注意して、勢いよく飛び出さない
入浴後すばやく水滴を拭いて更衣し、血圧が安定するまで30分ほど休憩スペースで休む/コップ1〜2杯の水分をとる(入浴後の体重減少は脱水による一時的なもの)
入浴中もこまめに水分補給する
出典:消費者庁「サウナ浴での事故に注意」(有識者コメント含む)、環境省「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症及び入浴又は飲用上の注意の掲示等の基準」(平成26年7月1日)をもとに作成

この一覧のうち、救急の現場感覚でとくに効くのは「汗が出たら出る」「動悸がしたら出る」の2つです。サウナで倒れる人は、ほぼ例外なくその手前で我慢をしています。何分入るという目標を決めて入ると、体の合図より時計を優先することになります。消費者庁の資料も「我慢することで体調を崩すおそれがあることを十分に理解しましょう」と締めています。

もうひとつ、体調に異変を感じたら、恥ずかしがらずに周囲の人や施設の従業員に知らせてください。サウナ室には非常用ボタンが設けられていることが多く、押すこと自体が対策です。家庭用サウナのように非常用ボタンがない設備を使うときは、使用前に周りの人に声をかけておいてください。

サウナや浴室で人が倒れていたら、その場で何をするか

発見した側の動き方です。場所によって最初の一手が変わります。

サウナ室で動けなくなっている人を見つけたとき

  1. 非常用ボタンを押す、または大声で従業員を呼ぶ。一人で対応しようとしない
  2. サウナ室の外の涼しい場所へ運び出す。高温の室内に置いたままにしない
  3. 肌がベンチや壁に接していた部分がないか確認する(本人が痛みを訴えなくても、深いやけどになっていることがあります
  4. 肩をたたきながら呼びかけ、反応があるかを確認する
  5. 反応がなければ救急車を要請し、呼吸を確認する。普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫を開始する(手順は心肺蘇生ガイドライン2025の記事にまとめています)

浴槽でぐったりしている人を見つけたとき

消費者庁が示している手順は次のとおりです。最初にやるのは救出ではなく、栓を抜くことです。

  1. 浴槽の栓を抜く。大声で助けを呼び、人を集める
  2. 入浴者を浴槽から出せるようであれば救出する(出せないようであれば、蓋に上半身を乗せるなど沈まないようにする)。直ちに救急車を要請する
  3. 浴槽から出せた場合は、肩をたたきながら声を掛け、反応があるか確認する
  4. 反応がない場合は呼吸を確認し、胸骨圧迫を行う

大人を濡れた浴槽から引き上げるのは、想像よりはるかに困難です。持ち上げられないときに時間を使うより、栓を抜いて水位を下げ、沈まないようにしながら救急隊を待つほうが確実だというのが、この手順が栓抜きから始まる理由です。

転倒して頭を打っている場合、その場で意識がはっきりしていても後日に症状が出ることがあります。とくに高齢の方では数週間後に慢性硬膜下血腫として現れることがあり、高齢者が転倒して頭を打った時の記事で解説しています。

受診の目安——救急科専門医が見ているライン

ここからは、公的資料の記述と救急外来での実務を合わせた判断の目安です。迷ったときは重いほうに寄せてください。

状況対応
すぐに119番呼びかけに反応がない/会話がかみ合わない、ろれつが回らない/けいれんしている/胸の痛みや強い息苦しさがある/手足が動かない、片側だけ力が入らない/水に沈んだ、水を飲み込んだ/体が熱く、意識がはっきりしない
その日のうちに受診一度でも意識が飛んだ(短時間でも、周囲に「反応がなかった」と言われた場合を含む)/涼しい所で休んで水分をとっても、頭痛・吐き気・だるさが1時間以上続く/繰り返し吐いて水分がとれない/水ぶくれになったやけどがある、または長く同じ姿勢で接していた部分が赤い/転倒して頭を打った/もともと心臓や脳血管の持病がある方の動悸・胸部不快
その場で休んで様子を見てよいサウナから出たときの立ちくらみで、涼しい所で横になり足を高くして数分で完全に元に戻り、その後も症状が残らないもの。ただしその日はサウナを切り上げ、水分をとってください

とくに強調したいのは「一度でも意識が飛んだなら、その日のうちに相談してほしい」という点です。高温環境での失神は、脱水や血圧低下だけでなく不整脈や心疾患が背景にあることがあります。その場で意識が戻ったかどうかでは、この2つを区別できません。「もう元気だから」で帰ってしまうのがいちばん惜しいパターンです。

また、汗をかいているかどうかで重症度は判断できません。サウナでは誰でも汗をかきます。判断の軸は、汗ではなく意識と会話です。

よくある質問(FAQ)

サウナで気持ち悪くなりました。水風呂に入れば治りますか?

その順番はすすめません。消費者庁の注意喚起に有識者コメントを寄せている温泉療法専門医は、サウナ直後に突然水風呂に浸かると急激な温度差で交感神経が刺激されて血管が収縮し血圧が上昇するとしたうえで、血圧が200mmHg程度まで上昇したという報告があること、これにより脳卒中や心筋梗塞、狭心症を発症するおそれがあり、脈の低下による不整脈が原因で意識を失うこともあることを挙げています。すでに気分が悪いということは体温が上がりすぎているか脱水が進んでいる合図なので、まずサウナ室から出て、涼しい場所で横になり、水分をとってください。水風呂は体調が戻ってからにしてください。

サウナから出たときに立ちくらみがしました。受診は必要ですか?

座るか横になって数分で完全に元に戻り、その後も気分の悪さや頭痛が残らないのであれば、その場で休んで水分をとり、その日はサウナを切り上げてください。一方で、実際に意識が飛んだ(周囲の人に「反応がなかった」と言われた、記憶が抜けている)場合は、短い時間でも、その日のうちに医療機関に相談してください。高温環境での失神は脱水や血圧低下だけでなく不整脈が背景にあることがあり、その場で回復したかどうかだけでは区別がつかないためです。転倒して頭を打っている場合も同様です。

お酒を飲んだあと、少し時間を空ければサウナに入っても大丈夫ですか?

時間で判断せず、その日は入らないという判断をおすすめします。環境省が温泉法第18条にもとづいて定めた掲示基準は、入浴前の注意として「食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けること。酩酊状態での入浴は特に避けること」と明記しています。消費者庁の注意喚起でも、入浴を避けるべきときとして「飲酒後(二日酔いも含む)」が挙げられています。アルコールには利尿作用があり、飲んだ量以上に体から水分が出ていきます。そこへ発汗が加わると脱水が進みやすく、さらにアルコール自体が血管を広げて血圧を下げるため、立ちくらみや失神が起こりやすい状態になります。

「ととのう」感覚は、体に良いサインですか?

良し悪しを判断できる指標ではない、というのが正確なところです。日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024(全81ページ)の本文を機械的に検索しても「サウナ」「水風呂」「入浴」という語は1回も出てきません。つまり、この感覚を医学的に評価した学会ガイドラインは現時点で存在しないということです。一方で確実に言えるのは、その感覚が生じている場面では体温上昇・発汗による体液減少・急激な血圧変動が実際に起きているということです。感覚を目的にして我慢を重ねる入り方は、体調を崩す方向に働きます。

サウナで汗をかけば、暑さに強い体になりますか?

そう期待できるとまでは言えません。日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024は、暑熱順化について「熱中症の発症および重症化リスクの減少に対して、暑熱順化が有用である可能性は示唆される。しかし、暑熱順化のための取り組み(暑熱順化アプローチ)の有効性および安全性を示すエビデンスは不足している」として、推奨を提示せず今後の研究課題(FRQ)に位置づけています。同ガイドラインは暑熱順化の方法として「7〜14日間・一定の強度で一定期間運動を行う方法が最も多く検討されている」と述べており、積極的に運動せずに暑熱環境に曝露される方法にも触れていますが、いずれも定まったものはないとしています。サウナで代用できると考えるのではなく、暑さに備える方法として別に整理してください。

高齢の親がサウナを習慣にしています。やめさせるべきですか?

一律にやめさせる必要があるとは考えていません。ただし条件をつけてください。環境省の掲示基準は、高齢者、高血圧症もしくは心臓病の人、脳卒中を経験した人について42℃以上の高温浴を避けること、高齢者・子供・身体の不自由な人は1人での入浴を避けることが望ましいことを挙げています。消費者庁のデータでは、40歳未満の受傷内容がやけどや切り傷などの外傷でほとんどを占めるのに対し、40歳以上では外傷のほかに「めまい・意識障害」や「循環器障害」が含まれてきます。持病があって治療中の方、脳卒中を経験した方は、まず主治医に確認してください。そのうえで、水分をとってから入る・下段に座る・我慢しない・出たら30分休む、を守るなら習慣として続けて問題ありません。

子どもをサウナに入れても大丈夫ですか?

年齢だけで線を引く公的な基準は、今回確認した一次資料の範囲では見当たりませんでした。ただし環境省の掲示基準は、子供について「1人での入浴は避けることが望ましい」としています。子どもは体格に対して体表面積が大きく体温が環境の影響を受けやすいこと、自分の不調をうまく言葉にできないことを踏まえると、必ず大人が付き添い、短時間で切り上げ、本人が嫌がったらその時点でやめる、という運用にしてください。消費者庁の事故情報でも、サウナから出て頭がくらくらし、露天風呂で涼もうとしたところで足を滑らせて顔面から転倒し前歯が抜け落ちた10歳代の事例が報告されています。

サウナ室で人がぐったりしています。まず何をすればいいですか?

サウナ室から出して涼しい場所に運び、施設の従業員に知らせてください。サウナ室内には非常用ボタンが設けられていることが多いので、それを押すのが最短です。高温の室内に置いたままでは体温が上がり続けますし、床やベンチに肌が接したまま動けない状態が続くと、その接触部に重いやけどを負います。消費者庁の事故情報には、スーパー銭湯のサウナ室で座ったまま意識を失い、接していた部分に重度のやけどを負って右足の指を5本切断した70歳代の事例があります。呼びかけて反応がなければ、大声で人を集めて救急車を要請し、呼吸を確認して普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫を開始してください。浴槽で沈みかけている場合は、まず浴槽の栓を抜いてください。

まとめ

サウナで体調不良が起きるとき、体では発汗による脱水・熱による血圧低下・水風呂での急激な血圧上昇が同時に進んでいます。10分のサウナ浴で汗は500mL程度出るとされ、体重の1〜2%を失えば脱水症です。消費者庁のデータでは40歳を超えると事故の中身に「めまい・意識障害」「循環器障害」が混ざってきます。汗が出たら出る、動悸がしたら出る、水風呂は無理に入らない、出たら30分休む——これだけで多くは防げます。飲酒後と体調の悪い日は入らない。そして一度でも意識が飛んだなら、その日のうちに相談してください。

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参照ソース(一次情報)


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