子どもが夜中に急に発熱すると、「救急に連れて行くべき?」「朝まで様子を見ていい?」と悩む保護者は多いはずです。救急科専門医として日々、小児の発熱ケースを多数診察する立場から、年齢別の詳細な受診目安・夜間救急 vs 翌朝外来の判断フロー・絶対に見逃してはいけない危険サインを、チェックリスト形式で解説します。
本記事は以下のガイドラインおよび公的情報を参照して作成しています。
- 日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」
- 日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)について」
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
まず確認:今すぐ救急に行くべきか判断するチェックリスト
年齢・熱の高さを問わず、以下のいずれかひとつでも当てはまるなら今すぐ救急受診(または119番)が必要です。
今すぐ救急・119番チェックリスト(ひとつでも該当→即受診)
- けいれん(全身のふるえ・白目をむく・意識を失う)が起きている、または止まってから意識が戻らない
- 呼びかけに全く反応しない、またはぐったりして動かない
- 呼吸が明らかに速い・苦しそう・肩で息をしている・鼻の穴がひくひく動く
- 唇や爪が青紫色になっている(チアノーゼ)
- 激しい頭痛を訴える、首が硬くて顎が胸につかない(髄膜刺激症状)
- 全身に出血点のような小さな赤い点(紫斑)が急に広がっている
- 生後3か月未満で38℃以上の発熱がある
- 水分を全く受け付けず、6〜8時間以上おしっこが出ていない
- 何度も嘔吐を繰り返して水分が飲めない状態が続いている
朝まで様子見でOKなサイン(すべて当てはまれば翌朝受診)
- 水分(母乳・ミルク・スポーツドリンク等)を少しずつ飲めている
- 呼びかけると反応があり、目に力がある
- 顔色が青白くなく、唇も紫ではない
- 呼吸が苦しそうでない
- ぐずってはいるが、あやすと少し落ち着く
- おしっこが直近6〜8時間以内に出ている
- (生後3か月以上の場合)
救急科専門医が教える大原則:「熱の高さより全身状態」
救急外来で小児の発熱を診察していると、「40℃あったので怖くなって来ました」という保護者がいる一方で、「37.5℃しかないんですが、なんかおかしくて」と連れてきた子どもが重篤な感染症だったというケースが少なくありません。
日本小児科学会が監修する「こどもの救急(ONLINE-QQ)」でも明示されているとおり、判断の軸は体温計の数字ではなく子どもの全身状態です。具体的には以下の3点を見てください。
| 確認ポイント | 良いサイン | 悪いサイン |
|---|---|---|
| 水分摂取 | 少しずつでも飲めている | 全く飲めない・飲んでもすぐ吐く |
| 意識・反応 | 呼ぶと目を開ける・泣き声に力がある | ぐったり・目を開けない・呼んでも反応しない |
| 呼吸・顔色 | 呼吸がいつもどおり・顔色に大きな変化なし | 速い・苦しそう・顔色が青白い・唇が紫 |
この3点が「良いサイン」の範囲内なら、熱が40℃あっても翌朝かかりつけ医に受診するという判断が多くの場合で成り立ちます。反対に38℃でも「悪いサイン」がひとつあれば、夜間でも受診してください。
年齢別:救急受診の詳細基準
0〜3か月未満(新生児・乳児早期):38℃以上はすぐ救急へ
この年齢層は免疫機能が極めて未熟で、細菌性の重篤な感染症(髄膜炎・敗血症・尿路感染症など)が急速に悪化します。大人では軽症に見える感染が、新生児では数時間で致死的になり得ます。
厚生労働省の保育所保育指針でも、この年齢層は「38℃以上の発熱があれば至急受診が必要と考えられる場合」として明示されています。たとえ元気そうに見えても、夜間・休日を問わず救急受診を検討してください。 自己判断で様子を見ることは推奨されません。
4〜12か月:哺乳力・おしっこ・活気の3点が判断軸
生後4か月以降は免疫が少しずつ発達しますが、まだ感染に対する防御力は低い時期です。この年齢では熱の高さより以下の3点を優先的に確認してください。
- 哺乳力: いつもの半分以上飲めているか
- 排尿: 直近6〜8時間以内におしっこが出ているか(脱水の指標)
- 活気: あやすと反応があるか、泣き声に力があるか
この3点がクリアできていれば、生後4か月以上であれば翌朝受診の選択肢があります。ただし上記の「今すぐ救急チェックリスト」に該当するものがあれば夜間でも受診してください。
なお、ヒブワクチン(Hib)・肺炎球菌ワクチン未接種の場合は、細菌性髄膜炎のリスクが相対的に高くなります。ワクチン接種状況も判断の参考にしてください。
1〜3歳:熱より「元気度」で判断
1歳を超えると免疫が発達し、39〜40℃の高熱でも走り回っている子どもは救急外来でも日常的に見かけます。この年齢では熱の高さより元気度が重要です。
水分が飲めていて、ぐずりながらでもおもちゃに反応し、おしっこが出ていれば翌朝受診で問題ありません。一方で「ぐったりして全く動かない」「目を開けない」「水分を一切受け付けない」という場合は夜間でも受診を検討してください。
この年齢に多い熱性けいれん(生後6か月〜5歳に多い)については、後述の専用セクションで詳しく解説します。
3歳以上:熱単独では夜間救急の必要性は低い
3歳以上になると免疫はさらに発達し、発熱だけで夜間に救急受診する必要がある状況はかなり限られます。「熱の高さ」ではなく「いつもと大きく違う状態」があるかどうかが判断基準です。
39〜40℃の熱が出ても水分が取れて多少でも元気があれば、翌朝かかりつけ医を受診すれば十分です。上記の危険サインチェックリストに当てはまらない限り、夜間救急を受診する医学的な緊急性は低いと言えます。
| 年齢 | 夜間救急の目安温度 | 最優先確認事項 |
|---|---|---|
| 0〜3か月未満 | 38℃以上でただちに | 体温のみで判断(様子見不可) |
| 4〜12か月 | 39℃以上+全身状態が悪い | 哺乳力・排尿・活気 |
| 1〜3歳 | 熱の高さより全身状態 | 水分摂取・意識・顔色・呼吸 |
| 3歳以上 | 危険サインがない限り翌朝でOK | いつもと大きく違う状態がないか |
夜間救急 vs 翌朝外来:判断フロー
「危険サインはないが不安」という場合の判断フローです。
STEP 1:危険サインチェック
→ 上記「今すぐ救急チェックリスト」に1つでも該当 → 今すぐ救急・119番
STEP 2:年齢確認
→ 生後3か月未満+38℃以上 → 今すぐ救急
→ 生後3か月以上 → STEP 3へ
STEP 3:全身状態確認(水分・意識・呼吸・顔色)
→ 3点とも「良いサイン」 → 翌朝かかりつけ医
→ 1点でも「悪いサイン」 → 夜間救急を受診
STEP 4:それでも迷ったら
→ #8000(小児救急電話相談)に電話して判断を仰ぐ
絶対に見逃してはいけない「危険サイン」
年齢に関わらず、以下のサインがひとつでも当てはまる場合はすぐに救急受診してください。
- けいれん(全身のふるえ・意識を失う): 熱性けいれんは生後6か月〜5歳に多く通常5分以内に止まりますが、5分以上続く場合・初回・繰り返す場合は119番通報してください(日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」)。
- 意識がおかしい・呼びかけに反応しない
- 呼吸が速い・苦しそう・鼻翼がひくひく動く・肩で息をしている
- 顔色が青白い・唇が紫色(チアノーゼ)
- 激しい頭痛・首が硬い・光がまぶしい(髄膜刺激症状)
- 嘔吐を何度も繰り返して水分が飲めない
- 6〜8時間以上おしっこが出ていない(脱水の目安)
- ぐったりして動かない・目に力がない
- 発疹が急に広がっている(特に出血点のような赤い点・紫斑)
- 生後3か月未満で38℃以上の発熱
このリストは、厚生労働省の保育所保育指針補足資料および日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」を参考に作成しています。
熱性けいれんが起きたら?正しい対応と119番の基準
初めて熱性けいれんを目撃すると、保護者は非常にパニックになります。救急外来でも「けいれんしている最中に口に何か入れようとした」「抱き上げて揺さぶった」というケースを見かけます。正しい対応を事前に知っておくことが重要です。
けいれん中の正しい対応
- 横向きに寝かせる(嘔吐による窒息を防ぐ)
- 口の中には何も入れない(指・タオルなど厳禁。舌を噛む危険より窒息の危険のほうがはるかに大きい)
- 時計でけいれんの時間を計る(5分を超えるかどうかが119番の分岐点)
- 動画で記録できれば医師の診断に役立つ(体の動き・左右差・持続時間が確認できる)
- 周囲の危険なものを遠ざける(テーブルの角など)
119番を呼ぶ基準(日本小児神経学会ガイドライン2023準拠)
- けいれんが5分以上続いている
- 止まった後も意識が戻らない・ぐったりしている
- 24時間以内に2回以上繰り返す
- 生後6か月未満または6歳以上での初めてのけいれん
- 体の片側だけがけいれんしている
- 発熱のない状態でけいれんした
単純型の熱性けいれん(5分以内・左右対称・1回のみ)は多くの場合予後良好です。ただし初回は必ず医療機関を受診して診断を確認してください。
心肺停止を伴う重篤な状態についての対応はAEDと心肺蘇生の正しいやり方を参照してください。また、アレルギーによる重篤な反応についてはアナフィラキシーの症状と対処法もあわせてお読みください。
解熱剤の正しい使い方・タイミング
解熱剤(アセトアミノフェン)は発熱による不快感を和らげ、体力消耗や脱水リスクを減らすために使います。病気の原因を治す薬ではありません。
使用の目安
- 体温の数字より「つらさ」が判断基準。38.5℃以上でつらそうにしている・水分が飲めていない場合に使用を検討
- 熱が38.5℃以上あっても元気に遊んでいれば無理に使う必要はない
- 生後3か月未満には医師の指示なしに使用しない
- イブプロフェンは生後6か月以上から使用可(脱水時は腎障害リスクがあるため原則アセトアミノフェンを優先)
- アスピリン系は小児に使用禁止(ライ症候群のリスク)
よくある誤解:解熱剤で熱が下がれば治った?
解熱剤の効果が切れると再び熱が上がります。これは正常な経過であり、「薬が効かなくなった」「悪化した」わけではありません。発熱は免疫反応の一部であるため、解熱剤で熱が下がっても病気の治癒とは別の話です。
救急科専門医が教える「よくある親の誤解」
誤解1:「40度超えたら脳がやられる」
感染症による発熱で脳が障害されるリスクは極めて低く、「40℃の発熱で脳がやられる」という心配は医学的に根拠がありません。 感染症に伴う発熱は通常41℃以下に収まるよう体の調節機能が働いており、熱射病(外部からの体温上昇)とは仕組みが異なります。
ただし、一部のインフルエンザ脳症など特殊な病態では高熱が危険因子になり得るという報告もあります。重要なのは体温の数字に過剰反応することではなく、「ぐったりしているか」「意識がはっきりしているか」などの全身状態を観察することです。
誤解2:「熱を下げれば早く治る」
発熱は免疫系が感染と戦っているサインです。解熱剤で体温を下げることは不快感の軽減には役立ちますが、感染症の治癒期間を短縮する効果はありません。無理に熱を下げる必要はなく、子どものつらさと水分摂取を基準に使用を判断してください。
誤解3:「夜間救急に行けば安心」
救急外来は緊急性の高い状態を対処するための場所です。軽症の発熱で深夜に救急外来を受診すると、待ち時間が長く、子どもの体力消耗につながる場合があります。危険サインがなければ、#8000で相談したうえで翌朝かかりつけ医を受診することが、多くの場合で子どものためになります。
誤解4:「熱が続いているから重篤に違いない」
ウイルス感染症(特にRSウイルス・アデノウイルスなど)では、5〜7日間高熱が続くことがあります。熱の持続日数だけで重篤度は判断できません。全身状態の変化(ぐったりしてきた・水分が飲めなくなってきた等)があれば受診し、それがなければ発熱3〜4日目以降にかかりつけ医を受診して経過を確認してもらいましょう。
「#8000」を正しく使う
夜間・休日の子どもの急病時に保護者が迷ったとき、まず電話してほしいのが#8000(小児救急電話相談)です。厚生労働省が全国47都道府県で実施しており、小児科医または小児科医の指導のもとで看護師が相談を受けます。
#8000を使うべきタイミング
- 「今すぐ救急に行くべきか、朝まで待っていいか迷っている」
- 「危険サインがあるかどうか判断できない」
- 「初めての症状で正常な経過かどうかわからない」
#8000を使わないほうがよいタイミング
- 上記「今すぐ救急チェックリスト」に当てはまるものがある場合は119番に直接電話してください
都道府県によって受付時間が異なります(24時間対応の地域もあります)。あらかじめお住まいの地域の時間を確認しておくことをお勧めします。
また、インターネットで使えるセルフチェックツールとして、日本小児科学会が後援する「こどもの救急(ONLINE-QQ)」(kodomo-qq.jp)もあります。
受診時に医師へ伝えるべきこと
救急外来に来たとき、以下の情報を事前に整理しておくと診察がスムーズになります。
| 項目 | 具体的に伝えること |
|---|---|
| 発熱の経過 | いつから・最高何度・どのくらいの間隔で計ったか |
| 付随症状 | 咳・鼻水・嘔吐・下痢・発疹・けいれんの有無 |
| 水分・食事 | 最後に飲んだのはいつか・量はどのくらいか |
| 排尿 | 最後のおしっこはいつか・色はどうか |
| 使用した薬 | 解熱剤の種類・最後に使った時間・使用後の体温変化 |
| 既往・予防接種 | 熱性けいれんの既往・Hib/肺炎球菌ワクチン接種歴 |
| 周囲の感染状況 | 保育園・保育施設でのはやり病の情報 |
よくある質問(FAQ)
Q. 子どもの発熱は何度から救急に行くべきですか?
生後3か月未満は38℃以上でただちに救急受診が必要です。それ以上の年齢では、熱の高さより全身状態(水分摂取・意識・呼吸・顔色)が判断基準です。40℃でも元気に遊んでいれば翌朝受診で構いませんが、38℃でもぐったりしているなら夜間でも受診を検討してください。
Q. 40度の熱で脳がやられるのは本当ですか?
感染症による発熱で脳が障害されるリスクは極めて低く、「40℃で脳がやられる」という心配は医学的に根拠がありません。重要なのは体温よりも全身状態の観察です。ただし「ぐったりしている」「意識がはっきりしない」などの症状がある場合は受診してください。
Q. #8000はどんなときに電話しますか?
「今すぐ救急に行くべきか、朝まで様子を見ていいか迷っている」というときに電話してください。緊急度が高いと判断された場合は119番を案内されます。危険サインが明らかにある場合は#8000を経由せず、直接119番に電話してください。
Q. 解熱剤は何度になったら使いますか?
体温の数字より「子どものつらさ」が判断基準です。一般的に38.5℃以上でつらそう・水分が取れない場合に使用を検討します。38.5℃以上あっても元気なら無理に使う必要はありません。生後3か月未満は医師の指示なしに使用しないでください。
Q. 熱性けいれんが起きたら救急車を呼ぶべきですか?
5分以上続く・止まっても意識が戻らない・24時間以内に2回以上繰り返す・体の片側だけけいれんする・生後6か月未満または6歳以上での初回、のいずれかに当てはまる場合は119番通報してください。5分以内に自然に止まり意識が戻った場合でも、初回は必ず翌朝までに医療機関を受診してください。
Q. 熱が5日以上続いています。重篤な病気ですか?
RSウイルス・アデノウイルスなどのウイルス感染症では5〜7日間高熱が続くことがあります。発熱日数だけで重篤度は判断できません。全身状態の変化(ぐったりしてきた・水分が飲めなくなった等)がなければ、3〜4日目以降にかかりつけ医に診てもらい、経過を確認してもらいましょう。
まとめ:判断に迷ったら「子どもの状態」を見る
体温計の数字より、「水分が飲めているか」「意識がはっきりしているか」「顔色や呼吸はどうか」を確認することが、救急受診の判断において最も重要です。
- 危険サインがひとつでも → 今すぐ救急・119番
- 生後3か月未満+38℃以上 → 今すぐ救急
- 迷ったら → #8000に電話
- 全身状態が良好なら → 翌朝かかりつけ医
保護者の「何かおかしい」という直感は大切にしてください。救急外来で「大したことなかった」と思っても、受診したこと自体は正しい判断です。
胸痛など他の緊急症状についても救急科専門医が解説しています。胸痛が起きたらどうすべきかもあわせてお読みください。
関連記事
参照ソース
- 日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」https://kodomo-qq.jp/
- 日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」https://www.childneuro.jp/about/6442/
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」発熱時の対応資料
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)について」https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
- 日本小児科学会「新型コロナウイルス感染症等流行時における小児の発熱時の対応について」
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