お盆や夏祭り、バーベキュー、花火大会。人が集まる場所にはお酒があり、そして毎年かならず「酔いつぶれた人」が出ます。そのとき周りの人が取る行動でいちばん多いのが、「そのへんで寝かせておけば、そのうち醒めるだろう」です。これが最も危険です。急性アルコール中毒は、意識が下がり、嘔吐し、呼吸が抑えられていく病態で、東京消防庁管内だけでも年間1万4千人以上が救急車で運ばれています。救急科専門医が、危険サイン・救急車を呼ぶ目安・待っている間にやることを、厚生労働省と消防庁の一次情報に沿って整理します。
急性アルコール中毒とは?「ただ酔っている」状態と何が違うのか
厚生労働省が2024年(令和6年)に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、急性アルコール中毒について次のように記しています。
急激に多量のアルコールを摂取すると急性アルコール中毒(意識レベルが低下し、嘔吐、呼吸状態が悪化するなど危険な状態になります。)になる可能性があります。
(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」より引用)
ここに書かれている三つ——①意識レベルの低下 ②嘔吐 ③呼吸状態の悪化——が、ふだんの「酔い」との決定的な違いです。
楽しく酔っている状態では、名前を呼べば返事があり、支えれば歩け、吐き気があってもトイレまで自力でたどりつけます。急性アルコール中毒はその先です。声をかけても反応が鈍い、揺すってようやくうめく、その場で吐いてしまう、いびきのような呼吸になる。ここまで来ると、本人にはもう自分の気道を守る力が残っていません。
お酒の主成分であるアルコールは、中枢神経を抑える働きを持っています。少量なら気分がほぐれる程度ですが、血液中の濃度が上がるほど抑制は深部に及び、最終的には呼吸と循環をつかさどる部分にまで届きます。「酔いが深くなる」の延長線上に「呼吸が止まる」がある——これが急性アルコール中毒の本質です。
そして厄介なのは、飲むのをやめた後も血中濃度がしばらく上がり続けることがあるという点です。胃や小腸に残ったアルコールがこれから吸収されるからです。「もう飲ませていないから大丈夫」は成立しません。最後の一杯を飲んだあとに、いちばん深く沈むことがあります。
東京消防庁のデータ:年間14,190人、20歳代が飛び抜けて多い
東京消防庁は、急性アルコール中毒による救急搬送人員を公表しています。東京消防庁管内の数字であり、全国の合計ではない点に注意してください。
- 令和2年:11,291人(男性6,801人/女性4,490人)
- 令和3年:8,951人(男性5,321人/女性3,630人)
- 令和4年:11,554人(男性6,645人/女性4,909人)
- 令和5年:13,906人(男性8,096人/女性5,810人)
- 令和6年:14,190人(男性8,277人/女性5,913人)
新型コロナウイルスの影響で会食が減った令和3年に大きく落ち込み、その後は3年連続で増えています。令和6年は1日あたり約39人が、お酒が原因で救急車を呼ばれている計算になります。
年代別では、男女ともに20歳代の人数が抜きんでて多いとされています。東京消防庁はその理由として、「経験の浅さから自分の適量が分からず、過度の飲酒をしてしまうことなどが考えられます」と述べ、「一緒に飲んでいる周りの人も、節度ある飲酒について注意を払うことが重要です」としています。倒れるかどうかは、本人の意思だけで決まっていません。
月別では、「気温が高く発汗作用が働く時期や冬の忘年会シーズンに救急搬送人員が多くなっています」とされています。急性アルコール中毒は12月だけの話ではなく、暑い時期にもう一つの山があるということです。
「軽症が大半」を読み間違えないでください
令和6年の初診時程度別の内訳は、軽症10,446人/中等症3,717人/重症以上27人でした。これを見て「ほとんど軽症なら大丈夫」と読むのは間違いです。
救急搬送の統計でいう「軽症」は、初診時に医師が判定した傷病程度の区分で、入院加療を必要としないものを指します。臨床的に軽かったという意味ではありません。むしろ、救急車で運ばれて点滴を受け、数時間観察されて帰宅した人が「軽症」に入ります。同じ内訳を裏返せば、入院が必要だった中等症以上が3,744人、およそ4人に1人です。そして東京消防庁が「生命の危険が強いと認められるもの」と説明する重症以上が27人います。
東京消防庁も「アルコールは、摂取量によっては死亡することもあります」と明記しています。
危険の分かれ目は「一時多量飲酒」=1回で純アルコール60g以上
どのくらい飲むと危ないのか。厚生労働省のガイドラインは、避けるべき飲酒の筆頭に「一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)」を挙げ、次のように定義しています。
様々な身体疾患の発症や、急性アルコール中毒を引き起こす可能性があります。一時多量飲酒(1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上)は、外傷の危険性も高めるものであり、避けるべきです。
(厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」より引用)
1回の飲み会で純アルコール60g。これが公的なガイドラインが名指しした線です。しかもこの60gは「急性アルコール中毒」だけでなく「外傷の危険性も高める」——つまり転んで頭を打つ、階段から落ちるといった事故まで含めた線であることに注意してください。
自分が何グラム飲んだのか、計算してみる
「純アルコール60g」と言われてもピンと来ません。ガイドラインは計算式を示しています。
純アルコール量(g)= 摂取量(ml)× アルコール濃度(度数÷100)× 0.8(アルコールの比重)
ガイドライン自身が挙げている例が、ビール500ml(5%)= 500 × 0.05 × 0.8 = 20g です。
この式で身近なお酒を計算すると、おおよそ次のようになります(度数は商品によって違うので、実際の缶やラベルの表示で計算してください)。
- ビール ロング缶500ml(5%)…… 約20g
- ビール 中ジョッキ約350ml(5%)…… 約14g
- 缶チューハイ 350ml(9%)…… 約25g
- 缶チューハイ 500ml(9%)…… 約36g
- 日本酒 1合180ml(15%)…… 約22g
- ワイン グラス1杯120ml(12%)…… 約12g
- 焼酎 水割り1杯(原酒90ml・25%)…… 約18g
- ウイスキー ダブル60ml(43%)…… 約21g
つまり一時多量飲酒の60gは、ビールのロング缶なら3本、高アルコールの缶チューハイ(9%・500ml)なら2本弱で届いてしまいます。「たった2本」でガイドラインが避けるべきとした線を越えます。度数9%の缶チューハイ1本が、ビールのロング缶2本近くに相当するという事実は、意外と知られていません。
なお、ガイドラインには別の数字として「生活習慣病のリスクを高める量=1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」も出てきますが、これは長期的な生活習慣病の話で、ガイドライン自身が「これらの量は個々人の許容量を示したものではありません」と注記しています。「40gまでなら酔いつぶれない」という意味ではまったくありません。急性アルコール中毒に関わるのは、あくまで「1回の機会に60g以上」のほうです。
酔いつぶれた人を寝かせて放置してはいけない4つの理由
ここが本題です。「寝かせておけば醒める」が通用しない理由は、少なくとも四つあります。
理由1:吐いたものが気道に詰まる
いちばん多く、いちばん取り返しがつかないのがこれです。深く酔うと、吐いたものを反射的に外へ出す力も、飲み込む力も落ちます。仰向けで寝ている人が嘔吐すると、吐物はそのまま喉の奥へ落ちます。窒息すればその場で命に関わり、肺に入れば重い肺炎を起こします。
東京消防庁も、「意識がない状態で嘔吐が起こると、吐物が喉につまって窒息する危険性があります」と明記しています。さらに、嘔吐がなくても危険があります。「十分な呼吸をしているにもかかわらず意識がない場合は、仰向けの状態のままでいると、舌根沈下(あごや舌の筋肉がゆるみ、舌の付け根がのどに落ち込むこと)による気道閉塞を起こすことがあります」——つまり、吐かなくても、仰向けというだけで気道はふさがりうるのです。飲み込む力が落ちた状態で気道に物が入ることの危険は、高齢者の誤嚥でも同じ構図です(誤嚥性肺炎とは?お盆の帰省で気づく親の「むせ」/誤嚥・窒息事故の応急処置)。
理由2:真夏でも体温が下がる
アルコールには皮膚の血管を広げて体の熱を逃がす作用があるとされています。加えて、酔って倒れた人は動きません。夜の屋外、エアコンの効いた部屋、風呂場のタイルの上——夏でも、数時間動かずにいれば体温は下がります。体温が下がると意識はさらに悪くなり、悪循環に入ります。震えが止まったらむしろ危険というのは低体温症の重要なサインです(偶発性低体温症とは)。
理由3:転んで頭を打っていても分からない
厚生労働省のガイドラインは、一時多量飲酒が「外傷の危険性も高める」と明記しています。酔って倒れる過程で頭をぶつけていても、本人は覚えていないし、周りも見ていません。そして頭の中の出血は、ぶつけた直後ではなく数時間後にじわじわ効いてくることがあります。「酔って寝ているだけ」と思っていた人が、実は頭蓋内出血で意識が落ちていた——救急の現場では珍しくない話です。特に高齢者では、数週間後に症状が出る慢性硬膜下血腫もあります(頭を打った時に救急車を呼ぶサイン)。
理由4:血中濃度は「これから」上がる
前述のとおり、飲むのをやめた後もアルコールの吸収は続きます。倒れた時点がいちばん深いとは限りません。放置して30分後に見に行ったら呼吸が浅くなっていた、というのがまさに危ない経過です。
東京消防庁の注意点にも、「周囲の人は酔った人に付き添い、一人にしないようにしましょう」が挙げられています。一人にしないこと自体が、応急手当です。
救急車(119番)を呼ぶ目安
迷ったら呼んでください。そのうえで、以下は「迷わず呼ぶ」水準です。
- 大きな声で呼んでも、肩を叩いても反応がない(揺すってもうめくだけ、を含む)
- 呼吸がおかしい——いびきのような音がする、極端に浅い・遅い、止まっているように見える
- 吐き続けている/吐いたまま動かない
- けいれんしている
- 顔色が青白い、唇が紫、皮膚が冷たく湿っている
- 体が冷たい(夏でも)
- 頭を打った可能性がある、または顔や頭に傷やこぶがある
- 糖尿病などの持病がある、薬を飲んでいる
- 誰がどれだけ飲ませたか分からない/一気飲みをさせられていた
呼ぶかどうか判断に迷うときは、救急安心センター事業「#7119」(実施していない地域もあります)に相談する方法もあります。ただし、上に挙げた反応がない・呼吸がおかしい・けいれんに当てはまるなら、相談ではなく119番です。119番通報のコツはこちらの記事にまとめています。
通報のときに伝えるとよいこと
- 何を、どのくらいの時間で、どれだけ飲んだか(分かる範囲で。空き缶や空き瓶を数えておくと確実です)
- 最後に飲んだのは何時ごろか
- いつから反応が鈍いか
- 吐いたか、何回吐いたか
- 頭を打った可能性があるか
- 持病・内服薬・アレルギー
救急車を待つ間にやること
1. 反応がなく、呼吸が普段どおりなら「回復体位」に
総務省消防庁の応急手当の解説では、次のように示されています。
反応はないが、普段どおりの呼吸をしている場合は、傷病者を横向きにさせて、様子を見ながら応援や救急隊員が来るのを待つ。
喉の奥の空気の通り道が狭まったり、吐物で詰まったりすることを予防するために、回復体位にして様子をみます。
(総務省消防庁「応急手当WEB講習」より引用)
やり方について、東京消防庁は次のように説明しています。
意識はないものの普段どおりの呼吸がある場合は、回復体位という姿勢をとらせます。呼吸が妨げられないようにする体位です。体を横向きにし、頭を反らせて気道確保するととともに、嘔吐しても自然に流れるように口元を床に向けます。
長時間回復体位にするときには、下になった部分が血液の循環が悪くなることから、約30分おきに反対向きの回復体位を取りましょう。
(東京消防庁「回復体位」より引用)
あわせて、「嘔吐が起きた時は、口の中から吐物をかき出して喉に吐物を詰まらせないように」、そして「酔いがさめるまで付き添うなど、目を離さないように」とされています。
ソファやベッドに仰向けで寝かせるのが、いちばんやってはいけない置き方です。横向きにして口元を下に向けるだけで、吐物で詰まるリスクは大きく下がります。
2. 呼吸がない・普段どおりでないなら、心肺蘇生
反応がなく、呼吸をしていない、あるいは「しゃくりあげるような」不規則な呼吸しかしていない場合は、心停止として胸骨圧迫を始めます。「酔っているだけかもしれない」とためらわないでください。手順は心肺蘇生ガイドライン2025の市民向け解説とAEDとCPRの正しい手順にまとめています。AEDの場所はこの記事で探せます。
3. 保温する
上着やタオルケットをかけ、床や地面に直接寝かせないようにします。屋外なら、可能なら屋内や日陰の風通しのよい場所へ。
やってはいけない5つのこと
無理に吐かせる
意識が下がった人に指を入れて吐かせるのは危険です。吐いたものを気道に落とすリスクを、自分の手で作ることになります。自分から吐いた分を横向きで出してもらうのは問題ありませんが、こちらから吐かせにいくのは避けてください。
水やスポーツドリンクを無理に飲ませる
意識がはっきりしていて自分で座って飲めるなら、少しずつ飲んでもらって構いません。しかし反応が鈍い人の口に飲み物を流し込むのは、誤嚥そのものです。「水を飲ませれば薄まる」という発想で口に注ぐのはやめてください。
風呂・シャワーで目を覚まさせる
厚生労働省のガイドラインは、避けるべき飲酒に関連した行動として「飲酒中又は飲酒後における運動・入浴などの体に負担のかかる行動」を挙げ、血圧の変動が強まることなどによって心筋梗塞などを引き起こす可能性や、転倒などにより身体の損傷を引き起こす可能性を指摘しています。酔った人を湯船に入れれば、意識が下がったまま沈む危険もあります。サウナや熱い風呂と飲酒の組み合わせが危ないのは、同じ理由です(サウナで体調不良になったら)。
コーヒーや栄養ドリンクで酔いを醒まそうとする
カフェインで一時的に目が開いても、血液中のアルコールが減るわけではありません。「起きたから大丈夫」と判断を誤らせるぶん、かえって危険です。
一人にして帰る/タクシーに乗せて終わりにする
東京消防庁が明記しているとおり、「周囲の人は酔った人に付き添い、一人にしないようにしましょう」。玄関で靴を脱いだところで倒れて、翌朝まで発見されないことがあります。家まで送るなら、横向きに寝かせ、家族に状況を伝えるところまでを1セットにしてください。
「酔っぱらい」と思われて見逃される病気
救急の現場でいちばん怖いのは、お酒のにおいがすることで、別の病気が「酔い」に見えてしまうことです。ろれつが回らない、まっすぐ歩けない、意識がもうろうとする——これらはお酒以外の原因でも起こります。
- 低血糖:とくに糖尿病の治療中の方。アルコール自体が低血糖を起こしやすくします(低血糖の症状と対処)
- 頭部外傷(頭蓋内出血):転倒して打っている可能性
- 脳卒中:片側の手足が動かない、顔がゆがむ、言葉が出ない
- 低体温症:屋外で長時間動かなかった場合(偶発性低体温症)
- ウェルニッケ脳症:お酒をよく飲む方、食べられていない方に起こるビタミンB1欠乏(ウェルニッケ脳症とは)
- アルコール離脱症候群:ふだん大量に飲んでいる方が急にやめたときの震え・幻覚・けいれん(アルコール離脱症候群の時間軸)
- 脱水・熱中症の合併:夏の飲酒では珍しくありません
だから救急外来では、単純な急性アルコール中毒に見えても、血糖を測り、頭を診て、体温を測ります。「お酒でしょ」で片づけないことが、家庭でも同じくらい大切です。
夏の飲酒が危ない理由——脱水と熱中症が重なる
前述のとおり、東京消防庁は月別の搬送人員について「気温が高く発汗作用が働く時期」に多いとしています。夏に増えるのは、飲む機会が多いからだけではありません。
アルコールには利尿作用があるとされ、飲んだ分がそのまま体内の水分になるわけではありません。もともと汗で水分を失っている夏に、ビールで水分補給をしたつもりになると、差し引きで脱水が進みます。熱中症予防の観点からも、アルコールは水分補給にならないものとして扱われます(熱中症を防ぐ食べ物・飲み物)。
屋外の飲み会、バーベキュー、花火大会。暑さ+脱水+アルコールが重なると、倒れた人が急性アルコール中毒なのか熱中症なのか、その場では区別がつきません。どちらにしても、涼しい場所へ移し、横向きにして、反応が鈍ければ救急車です(熱中症で救急車を呼ぶ目安/熱中症の応急処置マニュアル)。
また、水分が足りないところに急に大量の水だけを飲むと、別の問題(低ナトリウム血症)が起こることもあります(水中毒とは)。
同じ量でも危険度は人によって違う
ガイドラインは、飲酒の影響が年齢・性別・体質によって異なることを明記しています。「みんな同じ量を飲んだのに、あの人だけ倒れた」は、当然起こります。
体質(フラッシング反応)
アルコールを分解する酵素のはたらきには個人差があり、弱い人は少量の飲酒で顔が赤くなる、動悸、吐き気といった「フラッシング反応」を起こします。ガイドラインは「東アジアではこの分解酵素が弱く上記のようなフラッシング反応を起こす方々が一定数存在し、日本では41%程度いると言われています」としています。
さらに厳しい注意も書かれています。「アルコールを分解する酵素が非常に弱い人は、ごく少量の飲酒でも、強い動悸、急に意識を失うなどの反応が起こることがあり危険です」。飲めない人に飲ませるのは、量の問題ではなく、それ自体が危険な行為です。
年齢
ガイドラインは、高齢者は若い時と比べて体内の水分量の減少等で同じ量のアルコールでも酔いやすくなるとし、飲酒による転倒・骨折の危険が高まることにも触れています。「昔と同じペースで飲んでいるのに、最近つぶれるようになった」は、加齢による変化です。
一方で若年者についても、10歳代はもちろん20歳代も脳の発達の途中であると記されています。20歳未満の飲酒(飲ませることを含む)は法律違反です。
性別
ガイドラインは、女性は一般的に男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないこと、エストロゲン等のはたらきによりアルコールの影響を受けやすいことが知られている、としています。同じ杯数でも、体内で起きていることは同じではありません。
「飲ませない」も応急手当のうち
急性アルコール中毒は、起きてから対処する病気というより、その場の空気で起こる事故です。厚生労働省のガイドラインも、避けるべき行動として「他人への飲酒の強要等」を挙げ、「他人に無理な飲酒を勧めることは避けるべきです」「飲酒を契機とした暴力や暴言・ハラスメントなどにつながらないように配慮しなければなりません」としています。
東京消防庁の注意点も、そのまま予防のチェックリストになります。
- 自分の適量を知るとともに、その日の体調にも注意しましょう。
- 短時間に多量な飲酒(一気飲み)をすることはやめましょう。
- お酒が飲めない体質の方は、周囲の人に「お酒が飲めない体質です」と事前に伝えておきましょう。
- 飲酒の無理強いは、しないようにしましょう。
- 周囲の人は酔った人に付き添い、一人にしないようにしましょう。
- 酔った人が吐いた場合、吐いたものが喉につまらないように注意しましょう。
(東京消防庁「急性アルコール中毒にならないための注意点」より引用)
ガイドラインが挙げる「配慮のある飲み方」も具体的です。あらかじめ飲む量を決めておく、飲酒前または飲酒中に食事をとる(血中のアルコール濃度を上がりにくくする効果があるとされています)、飲酒の合間に水や炭酸水を飲む、週のうちに飲まない日を設ける。宴会の幹事役なら、ソフトドリンクを最初から人数分用意しておくだけで、その場の空気は変わります。
翌日以降に気をつけること
点滴を受けて帰宅したあとも、しばらくは一人にせず、次のような場合は改めて受診してください。
- 頭痛が強くなる、繰り返し吐く、だんだん反応が鈍くなる(頭を打っていた可能性)
- 吐いたものに血が混じる、黒い便が出る(マロリー・ワイス症候群など)
- 強い腹痛や背中の痛みが続く(急性腹症の見極め方)
- 体の一部が動かない、しびれる、言葉が出にくい
そして、より大切なのは「これが何回目か」です。急性アルコール中毒で運ばれるのが一度きりなら「その日の失敗」で済みますが、繰り返しているなら、量のコントロールがすでに難しくなっている可能性があります。ガイドラインも、長期にわたる大量飲酒がアルコール依存症、生活習慣病、肝疾患、がん等の発症につながりうることを明記しています。心当たりがあれば、かかりつけ医や、各都道府県の精神保健福祉センターへの相談を検討してください。ガイドラインはAUDIT(WHOが作成した、10項目の質問で飲酒問題の程度を測るスクリーニングテスト)などを参考に自分の飲酒習慣を把握することも勧めています。
なお、日本アルコール・アディクション医学会と日本アルコール関連問題学会がまとめた「アルコール依存症の診断治療の手引き」では、ICD-10によるアルコール依存症の診断基準に該当したことのある方が国内で107万人と推計される一方、厚生労働省の患者調査で治療を受けている患者数は約5万人にとどまり、その多くが見逃されていると指摘されています。相談することは、けっして大げさな行動ではありません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 急性アルコール中毒と二日酔いはどう違いますか?
二日酔いは、翌朝以降に頭痛や吐き気が残る状態で、意識ははっきりしています。急性アルコール中毒は、飲んだその場で意識レベルが低下し、嘔吐し、呼吸状態が悪化していく状態です。厚生労働省のガイドラインもこの三つを危険な状態として挙げています。「起こせば起きる」「自分でトイレに行ける」なら二日酔いの範囲、「揺すってもうめくだけ」なら救急車です。
Q2. 酔いつぶれた人は、寝かせておけばそのうち醒めますか?
醒めないことがあります。飲むのをやめた後もアルコールの吸収は続くため、倒れた時点よりあとに、さらに深く沈むことがあります。加えて、仰向けで寝かせると嘔吐物が気道に落ちます。東京消防庁も「周囲の人は酔った人に付き添い、一人にしない」と明記しています。横向きにして、そばを離れないでください。
Q3. 吐かせたほうがいいですか?
意識が下がった人に、こちらから指を入れて吐かせるのは危険です。吐いたものを気道に落とすリスクを増やします。自分から吐いた場合は、横向きにして口の中のものをかき出してください。
Q4. 水やスポーツドリンクを飲ませたほうがいいですか?
本人が座って自分で飲めるなら、少しずつなら構いません。しかし反応が鈍い人の口に流し込むのは誤嚥そのものです。「薄めれば大丈夫」という考えで注ぎ込むのはやめてください。
Q5. コーヒーを飲ませたり、風呂に入れたりすれば酔いは醒めますか?
醒めません。カフェインで目が開いても血液中のアルコールは減りません。入浴はさらに危険で、厚生労働省のガイドラインは飲酒中・飲酒後の入浴について、血圧の変動が強まることなどによって心筋梗塞などを引き起こす可能性や、転倒などによる身体の損傷の可能性を指摘しています。
Q6. どのくらい飲むと危険なのですか?
厚生労働省のガイドラインは、1回の飲酒機会で純アルコール60g以上を「一時多量飲酒」とし、急性アルコール中毒や外傷の危険性を高めるため避けるべきとしています。純アルコール量は「摂取量(ml)×度数÷100×0.8」で計算でき、ビール500ml(5%)が20gです。ただし危険な量には大きな個人差があり、体質によってはごく少量でも危険です。
Q7. 救急車を呼ぶか迷ったら、どうすればいいですか?
反応がない・呼吸がおかしい・けいれんしている・体が冷たい・頭を打った可能性がある、のいずれかがあれば119番です。それ以外で迷う場合は、救急安心センター事業「#7119」(実施していない地域もあります)などの電話相談窓口を利用する方法もあります。ただし、判断に時間をかけている間に悪化するのが急性アルコール中毒の特徴です。迷ったら呼んでください。
Q8. 夏でも体温が下がることがあるのですか?
あります。アルコールには皮膚の血管を広げて熱を逃がす作用があるとされ、酔ってしまえば体はほとんど動きません。エアコンの効いた部屋や、風呂場の床、夜間の屋外で数時間動かずにいれば、真夏でも体温は下がります。上着やタオルケットをかけ、床に直接寝かせないでください。
まとめ
急性アルコール中毒は、意識レベルの低下・嘔吐・呼吸状態の悪化が本体で、東京消防庁管内だけで令和6年に14,190人が搬送され、うち入院を要した中等症以上が3,744人います。厚生労働省のガイドラインは1回の飲酒機会で純アルコール60g以上を避けるべき線として示しました。ビールのロング缶3本、9%の缶チューハイなら2本弱です。倒れた人を仰向けで寝かせて放置しないこと、横向き(回復体位)にしてそばを離れないこと、反応がない・呼吸がおかしいなら迷わず119番すること。そして何より、飲めない人に飲ませないこと。それがいちばん確実な予防です。
参照ソース(一次情報)
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(本文PDF)
- 東京消防庁「命に関わることもある『急性アルコール中毒』~正しいお酒の飲み方で、楽しい時間を~」
- 総務省消防庁「応急手当WEB講習」(回復体位)
- 日本アルコール・アディクション医学会/日本アルコール関連問題学会「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き」
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本記事は一般の方向けの情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状の判断に迷う場合は、医療機関または救急相談窓口にご相談ください。

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