夜中の同じ時刻に、片側の目の奥をえぐられるような痛みで目が覚める。市販の鎮痛薬を飲んでも効かない。1〜2時間で嘘のように痛みが引き、翌朝には何事もなかったように出勤できる——このパターンを繰り返しているなら、群発頭痛の可能性があります。救急科専門医が、鎮痛薬を足す前に確認してほしい3つのことと、発作を止める方法、そして「群発頭痛と決めつけてはいけない」場面を解説します。
- 結論:確認するのは「痛む場所と時間」「同じ側の目と鼻」「じっとしていられるか」の3つ
- 市販の鎮痛薬が効かないのは、飲み方のせいではありません
- 確認①:痛む場所と、痛みが終わるまでの時間
- 確認②:痛む側の目と鼻に、同時に何かが起きているか
- 確認③:うずくまるか、動き回るか——片頭痛との決定的な違い
- 診断基準(国際頭痛分類第3版)を、そのまま載せます
- 群発頭痛と決めてはいけない場面——目の奥の痛みは危険な頭痛でも起こります
- 救急外来でできること・できないこと
- 発作を止める2つの方法——スマトリプタン皮下注射と酸素吸入
- 在宅酸素療法が、保険で使えるようになっています
- 群発期には、発作を止めるだけでは足りません
- 群発期にやってはいけないこと
- 何科に行けばいいか
- 「男性の病気」ではなくなってきています
- まとめ
- よくある質問
- 参照ソース(一次情報)
結論:確認するのは「痛む場所と時間」「同じ側の目と鼻」「じっとしていられるか」の3つ
群発頭痛には、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)という診断基準があります。医師が使う基準ですが、書かれている内容は家でも確認できることばかりです。確認するのは次の3点です。
- 確認①:痛むのは片側の目の奥・目の上・こめかみのどれかで、1回の発作は15分〜3時間で終わるか
- 確認②:痛む側と同じ側で、目が充血する・涙が出る・鼻がつまる・鼻水が出る・まぶたが下がる、のどれかが同時に起きているか
- 確認③:発作中、横になっていられず動き回ってしまうか
3つとも当てはまるなら、鎮痛薬を増やすのではなく、頭痛を診ている神経内科・脳神経外科(頭痛外来)に予約を取ってください。群発頭痛には、市販薬とはまったく別系統の、効く治療が2つあります。
逆に、今回が初めての発作であったり、いつもの発作と様子が違う場合は、この記事の後半「群発頭痛と決めてはいけない場面」を先に読んでください。目の奥の痛みは、緊急性の高い別の病気でも起こります。
市販の鎮痛薬が効かないのは、飲み方のせいではありません
まず、多くの方が抱えている誤解を外しておきます。日本頭痛学会は一般向けの解説で、「群発頭痛の発作に通常の鎮痛薬は無効です」と明記しています。量が足りないのでも、飲むタイミングが遅いのでもなく、この痛みの発生の仕組みが、市販の解熱鎮痛薬が効く仕組みと違うためです。
同じ解説には、「酒石酸エルゴタミンも頭痛発作が起こってから使用してもほとんど効果がありません」とも書かれています。つまり、発作が始まってから飲んで間に合う「飲み薬」は、基本的にありません。
ここが重要なところで、鎮痛薬を足していくと、今度は薬剤の使用過多による頭痛という別の頭痛が加わってきます。効かない薬を増やし続けることには、痛みが取れない以外の不利益もあるということです。
確認①:痛む場所と、痛みが終わるまでの時間
日本頭痛学会は群発頭痛を、「眼周囲~前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛が数週から数ヵ月の期間群発することが特徴」と説明しています。痛みの場所は、目の周りから額、こめかみにかけての片側です。発作のたびに左右が入れ替わることは、通常ありません。
時間の条件はさらに特徴的です。ICHD-3の基準では、未治療の場合の持続時間は15〜180分とされています。「朝から夕方までずっと重い」「天気が崩れる日は一日中つらい」という頭痛は、この条件に合いません(そちらは気象病(天気痛)など別の頭痛を考えます)。逆に「毎晩2時頃に始まり、1時間ほどのたうち回って、その後けろっとしている」なら、よく合致します。
そして頻度は、ICHD-3では「発作の頻度は1回/2日〜8回/日である」とされています。2日に1回から、多い日は1日8回まで。この「群発する」性質が病名の由来です。
群発頭痛の発作が夜間に多いことも、学会が明記しています。「夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく」という記述のとおりで、同じ時刻に目が覚めるという訴えは典型的です。
確認②:痛む側の目と鼻に、同時に何かが起きているか
ここが片頭痛や緊張型頭痛との最大の違いです。ICHD-3の診断基準Cは、頭痛と同側に次のいずれかを伴うことを求めています。
- 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
- 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
- 眼瞼浮腫
- 前頭部および顔面の発汗
- 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
日常の言葉にすると、痛い側だけ目が真っ赤になる、涙が止まらない、鼻がつまる・鼻水が出る、まぶたが腫れぼったくなる・下がってくる、黒目(瞳孔)が小さくなるということです。「片側だけ」「痛みと同時に」という2点が揃っているかを見てください。
鼻症状だけが目立つと、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎と間違われることがあります。朝だけ鼻水が止まらないときの寒暖差アレルギーのように鼻だけで完結する病気と違い、群発頭痛では「耐えがたい片側の痛み」が主役で、鼻や目の症状はその痛みに付随して同時に出るのが特徴です。
確認③:うずくまるか、動き回るか——片頭痛との決定的な違い
ICHD-3の基準Cには、自律神経症状と並んでもう一つ、「落ち着きのない、あるいは興奮した様子」という項目があります。これが、患者さん本人よりも家族のほうが気づきやすいサインです。
日本頭痛学会の解説は、この違いをはっきり書いています。「頭痛発作中は落ち着かず興奮したような状態になる方が多く、動けなくなる片頭痛とは対照的です」。
片頭痛は、暗く静かな部屋で横になっていたい頭痛です。動くと悪化するので、じっとしています。群発頭痛は逆で、じっとしていられず、部屋を歩き回る、頭を壁に押しつける、うろうろする、といった行動になります。片頭痛の特徴と治療と読み比べると、両者が別の病気であることがよくわかります。
診断基準(国際頭痛分類第3版)を、そのまま載せます
日本頭痛学会が公開している群発頭痛の診断基準は、次のとおりです。
- A B〜Dを満たす発作が5回以上ある
- B (未治療の場合に)重度〜きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15〜180分間持続する
- C 以下の1項目以上を認める:①頭痛と同側の結膜充血・流涙、鼻閉・鼻漏、眼瞼浮腫、前頭部および顔面の発汗、縮瞳・眼瞼下垂のいずれか ②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
- D 発作の頻度は1回/2日〜8回/日である
- E ほかに最適なICHD-3の診断がない
注目してほしいのはA項目の「5回以上」です。1回目の発作では、この基準を満たしません。初回は「群発頭痛らしい発作」であって「群発頭痛」ではない、という設計になっています。この点が、次の章につながります。
群発頭痛と決めてはいけない場面——目の奥の痛みは危険な頭痛でも起こります
頭痛診療ガイドライン2021は、二次性頭痛(他の病気による頭痛)を見逃さないためのレッドフラッグとして、SNNOOP10という15項目のリストを紹介しています。そのなかに、こういう項目があります。
P:Painful eye with autonomic features 自律神経症状を伴う眼痛
つまり、「涙や鼻づまりを伴う目の奥の激痛」そのものが、二次性頭痛を疑うべきサインとして挙げられているのです。群発頭痛の典型像と完全に重なります。だからこそ、同ガイドラインは「群発頭痛の確定診断にあたっては副鼻腔疾患,下垂体疾患などによる二次性頭痛との十分な鑑別が必要である」としています。初回は画像検査を含めた検査を受けてください。
SNNOOP10のうち、家庭でも判断できる項目を抜き出します。当てはまるものがあれば、群発頭痛の発作として片づけず、その日のうちに受診してください。
- 発熱を含む全身症状(項部硬直、意識レベルの低下、神経脱落症状)
- 神経脱落症状または機能不全(手足が動かない、しゃべりにくい、意識がおかしい)
- 急または突然に発症する頭痛
- 高齢(50歳以降)の新規発症
- 頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛
- 姿勢によって変化する頭痛
- くしゃみ、咳、または運動により誘発される頭痛
- 外傷後に発症した頭痛
- 進行性の頭痛、非典型的な頭痛
特に、突然ピークに達する頭痛は、くも膜下出血を含む脳卒中を先に否定しなければならない頭痛です。頭をぶつけた記憶がある高齢の方であれば、数週間後に現れる慢性硬膜下血腫も考えます。
目の奥の痛みに嘔吐、目のかすみ、光の周りに虹が見えるが加わるときは、急性緑内障発作という、視力に関わる別の緊急事態も鑑別に入ります。目の周りの皮膚に水ぶくれが出てきた場合は、帯状疱疹が目の神経に出ている可能性があります。
救急外来でできること・できないこと
頭痛診療ガイドライン2021には、救急外来を受診した頭痛患者の内訳が載っています。慶應義塾大学病院の救急外来(1997年1月〜1999年12月)では、頭痛を主訴とする救急患者は全体の3.2%を占め、その内訳は一次性頭痛38.3%、二次性頭痛53.6%、分類不能8.1%でした。同じ期間、くも膜下出血は頭痛救急患者のうち8.1%でした。
この数字が意味するのは、救急外来の最優先業務は「危険な頭痛を否定すること」だということです。初回の発作で夜間に受診する価値は、まさにそこにあります。
一方で、救急外来には限界もあります。ガイドラインは群発頭痛について、こう書いています。「群発頭痛は夜間に発作が多いため,発作中に医療機関を受診することが困難であり,また頭痛持続時間が比較的短いことから,たとえ発作中に医療機関を受診しても,診察した時点では発作が改善していることも多い」。
15〜180分で終わる発作は、救急車を待ち、受付を済ませ、診察の順番を待っている間に終わってしまうことがあります。「病院に着いたら治っていて、気まずい思いをした」という経験は、群発頭痛では珍しくありません。それはあなたの気のせいではなく、この病気の時間構造そのものです。
だからこの病気の答えは、「発作のたびに救急外来に行く」ではなく「発作を自分で止められる手段を、あらかじめ処方してもらっておく」ことになります。
発作を止める2つの方法——スマトリプタン皮下注射と酸素吸入
頭痛診療ガイドライン2021のCQ IV-6は、群発頭痛の急性期治療について次の2つを強い推奨/エビデンスの確実性Aで挙げています。
① スマトリプタン3mgの皮下注射
ガイドラインは「わが国ではスマトリプタン3 mg 皮下注(1 日6 mg まで)が保険適用を取得しており推奨される」としています。日本での検討では、投与30分後の頭痛改善度(有効率)は75.3%と報告されています。海外の6mgでの試験では、投与5分後に74%の患者で頭痛が軽減した(プラセボは26%)という報告もあります。
この薬は在宅自己注射ができます。発作が始まったその場で、自分で打てるということです。ガイドラインも「群発頭痛は,即効性と利便性が増すため,スマトリプタンの在宅自己注射は最もよい適応といえる」としています。
ただし誰でも使えるわけではありません。ガイドラインは、心疾患・脳血管障害・末梢循環障害の既往がある患者、コントロールされていない高血圧の患者、重篤な肝障害を有する患者などには投与しないとしています。主な副作用として悪心、胸部不快感、動悸が挙げられています。処方を受けるときは、持病と飲んでいる薬をすべて申告してください。
② 酸素吸入(7L/分・15分)
もう一つが酸素です。ガイドラインCQ IV-7は「酸素(>90% 酸素)の15 分間の吸入(フェイスマスク側管より7 L/分)は急性期群発頭痛の発作頓挫に有効である」としています。
効果の速さも報告されています。日本の研究では、7L/分の酸素投与後、平均3.1±3.1分後から頭痛の改善がみられ、平均13.5±6.2分後に頭痛が消失したとされています。海外の12L/分を用いた試験では、酸素で78%の症例の発作が消失したのに対し、室内の空気では20%でした。
ここで、市販品について一つだけ明確にしておきます。ガイドラインは「スプレー缶式の酸素吸入では濃度が不足するため効果がない」と書いています。スポーツ用品店やドラッグストアの携帯酸素缶を買っても、群発頭痛の発作は止まりません。
在宅酸素療法が、保険で使えるようになっています
2018年度の診療報酬改定で、群発頭痛の在宅酸素療法(HOT)に保険が使えるようになりました。日本頭痛学会も「2018年4月に群発頭痛の在宅酸素療法の保険適用が承認されました」と記載しています。
対象になる条件は具体的に決まっています。ガイドラインによれば、在宅酸素療法指導管理料の対象として「関連学会の診断基準により群発頭痛と診断されている患者のうち,群発期間中の患者であって,1 日平均1 回以上の頭痛発作を認めるもの」が追加されました。
つまり、診断がついていることと群発期に1日平均1回以上の発作があることが条件です。ここでも、まず診断を受けることが出発点になります。
スマトリプタンとの使い分けについて、ガイドラインはこう整理しています。「酸素には重篤な副作用はなく,1 日に何度も使用可能なことから,スマトリプタンの使用禁忌例や副作用がみられた症例,発作回数が多くてスマトリプタンのキット製剤での保険適用回数(1 日2 回)では十分な加療が困難であった症例を中心として,HOT の使用が期待される」。1日に3回も4回も発作が来る人にとって、これは大きな違いです。
なお、在宅酸素療法を使う場合は火気の扱いが最重要の注意点になります。ガイドラインも、喫煙などが原因と考えられる火災の事故が起きているため、厚生労働省から注意喚起がなされており、繰り返しの説明が必須であるとしています。酸素を使う部屋では、たばこ・仏壇のろうそく・ガスコンロを近づけないでください。
群発期には、発作を止めるだけでは足りません
日本頭痛学会は、「群発期には予防療法が必須です」としています。理由も明快で、頭痛発作はほとんど毎日繰り返し起こり、1回の頭痛発作は比較的短時間であるため、頓挫薬のみでは十分な治療が困難だからです。
予防の中心になるのはベラパミルというカルシウム拮抗薬です。学会は「予防療法には高用量のベラパミル(適用外使用)が最もよく使用され,国際的な標準薬です」としています。ガイドラインCQ IV-8は、海外ではベラパミル360mg/日が予防効果を示すが、わが国では適応外使用が認められているものの、最大使用量は240mg/日であると注記しています。心臓の伝導を遅らせる作用があるため、心電図で経過を見ながら使う薬です。
ほかに副腎皮質ステロイドの短期間の服用が、ベラパミルと併用することで短期的な予防効果を示すことが実証されているとされています。慢性群発頭痛の予防には炭酸リチウム、バルプロ酸などが有効とされています。いずれも自己判断で始められる薬ではありません。
群発期にやってはいけないこと
ガイドラインCQ IV-3は、群発期の誘発因子を明示しています。「群発期には,発作は定期的に起こるほか,アルコール飲料,ヒスタミンまたはニトログリセリンにより誘発される」。
実務的に重要なのはアルコールです。群発期の飲酒は、ほぼ確実に発作の引き金になります。群発期が終われば飲んでも発作が出なくなる、という点も群発頭痛の特徴で、逆にいえば「飲むと必ず数十分後に目の奥が痛くなる時期がある」という経験自体が、診断の手がかりになります。
ニトログリセリンは狭心症の発作時に使う薬です。心臓の薬を持っている方は、群発期であることを主治医に伝えてください。またガイドラインは、群発頭痛では大酒家・ヘビースモーカーが多いと報告されていることにも触れています。
何科に行けばいいか
初回で、いつもと違う突然の激痛であれば、迷わず救急外来です。危険な頭痛を否定することが最優先になります。
すでに発作を何度か繰り返していて、この記事の3つの確認に当てはまるなら、神経内科(脳神経内科)または脳神経外科、可能であれば頭痛外来を予約してください。理由は、この病気の治療が「痛み止めを出す」ことではなく、スマトリプタン在宅自己注射の処方・在宅酸素療法の手続き・ベラパミルの用量調整という、いずれも頭痛の診療に慣れた医師でないと組み立てられない内容だからです。
受診時には、発作が始まった時刻・続いた時間・1日の回数・痛んだ側・目や鼻の症状の有無をメモして持っていってください。日本頭痛学会は頭痛ダイアリーを公開しており、この記録がそのまま診断と保険適用の根拠になります。
「男性の病気」ではなくなってきています
群発頭痛は長く「20〜40代の男性の病気」と言われてきました。ガイドラインCQ IV-3も「群発頭痛の発症年齢は通常20~40 歳台である.男性における有病率は女性の3~7 倍である」としています。
ただし、この比率は変化しています。ガイドラインが引用しているManzoniの報告では、1960年以前の発症例では男女比6.2:1であったのに対し、1990〜1995年の発症例では3.5:1と減少していました。日本頭痛学会も「最近の調査では男女差が縮小してきて女性の群発頭痛も稀ではありません」としています。女性だから群発頭痛ではない、とは言えません。
有病率は、ガイドラインによると10万人あたり56〜401人程度と報告されています。まれな病気ではありますが、痛みの強さと、診断がつけば効く治療がある点で、見つける価値の大きい病気です。
経過についても数字があります。60例を長期に観察した報告では26.5%が単一の群発期ですんでいた一方、2回目の群発頭痛発作は3年以内に83%でみられたとされています。今回で終わる人もいれば、数年後にまた来る人もいる、ということです。だからこそ、群発期が終わった後も、次に備えて診断書と処方を手元に残しておく意味があります。
まとめ
片側の目の奥が15〜180分だけ激しく痛み、同じ側の目が充血し涙や鼻水が出て、じっとしていられない——この3つが揃うなら、群発頭痛を疑って頭痛外来へ。市販の鎮痛薬は効かず、増やせば薬剤の使用過多による頭痛が加わるだけです。発作を止める手段はスマトリプタン3mgの皮下自己注射と7L/分・15分の酸素吸入で、どちらも保険で使えます。ただし初回と「いつもと違う」発作は、危険な頭痛を否定するのが先です。
よくある質問
市販の頭痛薬をもっと強いものに変えれば効きますか?
効きません。日本頭痛学会は「群発頭痛の発作に通常の鎮痛薬は無効です」と明記しています。強さの問題ではなく、痛みの起こる仕組みが違うためです。また同学会は「酒石酸エルゴタミンも頭痛発作が起こってから使用してもほとんど効果がありません」ともしています。飲み薬を足していくと、薬剤の使用過多による頭痛が上乗せされる不利益のほうが大きくなります。効く治療はスマトリプタンの皮下注射と酸素吸入で、どちらも医療機関での処方・手続きが必要です。
発作のたびに救急車を呼んでもいいのでしょうか?
初回、あるいはいつもと違う頭痛であれば受診してください。頭痛診療ガイドライン2021によれば、慶應義塾大学病院の救急外来で頭痛を主訴とする救急患者の53.6%は二次性頭痛であり、くも膜下出血は頭痛救急患者の8.1%を占めていました。危険な頭痛を否定することには大きな意味があります。一方、診断がついた後の毎回の発作については、同ガイドラインが「たとえ発作中に医療機関を受診しても,診察した時点では発作が改善していることも多い」と記しているとおり、移動中に発作が終わってしまいます。診断後は、自分で止められる手段を処方してもらうほうが現実的です。
ドラッグストアの携帯酸素缶で代用できますか?
できません。頭痛診療ガイドライン2021は「スプレー缶式の酸素吸入では濃度が不足するため効果がない」と明記しています。有効とされているのは90%を超える濃度の酸素を、フェイスマスク側管から7L/分で15分間吸入する方法です。2018年度の診療報酬改定で、群発頭痛と診断され、群発期間中で1日平均1回以上の発作がある患者は在宅酸素療法の対象になりました。診断を受けて、正式な装置を使ってください。
発作は毎日同じ時刻に来ます。これは偶然ですか?
群発頭痛の特徴です。日本頭痛学会は「夜間、睡眠中に頭痛発作がおこりやすく」としており、ICHD-3の診断基準でも発作頻度は1回/2日〜8回/日と定められています。頭痛診療ガイドライン2021は、群発頭痛の患者で体内時計(サーカディアンリズム)に関係するメラトニンなどに変化がみられることから、その中枢である視床下部に変化が起こっている可能性が考えられるとしています。時刻の規則性は、診察で必ず伝えてほしい情報です。
群発期にお酒を飲むと発作が出ます。やめれば治りますか?
群発期の飲酒は避けてください。頭痛診療ガイドライン2021は「群発期には,発作は定期的に起こるほか,アルコール飲料,ヒスタミンまたはニトログリセリンにより誘発される」としています。ただし禁酒で群発期そのものが終わるわけではなく、誘発因子を減らすだけです。群発期には予防療法が必須とされており、ベラパミルなどによる予防と組み合わせる必要があります。なお群発期が終わると飲酒で発作が誘発されなくなる点も、この病気の特徴です。
女性ですが、群発頭痛の可能性はありますか?
あります。頭痛診療ガイドライン2021は「男性における有病率は女性の3~7 倍である」としていますが、同時に、男女比が1960年以前の発症例で6.2:1、1990〜1995年の発症例で3.5:1と縮小してきたManzoniの報告を引用しています。日本頭痛学会も「最近の調査では男女差が縮小してきて女性の群発頭痛も稀ではありません」としています。性別を理由に除外はできません。
一度治まりました。もう来ないと考えていいですか?
断定はできません。頭痛診療ガイドライン2021が引用する60例の長期観察では、26.5%が単一の群発期ですんでいた一方、2回目の群発頭痛発作は3年以内に83%でみられたと報告されています。また189人を10年以上観察した報告では、反復性群発頭痛と当初診断された症例の13%が慢性群発頭痛へ移行していました。群発期が終わっても、診断の記録と処方の経緯は手元に残しておいてください。次の群発期で、受診から治療開始までの時間がまったく変わります。
頭痛外来が近くにありません。何科にかかればいいですか?
神経内科(脳神経内科)または脳神経外科です。この病気で必要になるのはスマトリプタン在宅自己注射の処方、在宅酸素療法の手続き、ベラパミルの用量調整で、いずれも頭痛の診療に慣れた科の領域です。日本頭痛学会は頭痛を診る医療機関・医師を検索できるページと頭痛ダイアリーを公開していますので、受診前に発作の時刻・持続時間・回数・痛んだ側・目や鼻の症状を記録して持参してください。
参照ソース(一次情報)
- 一般社団法人日本頭痛学会「群発頭痛」(市民・患者さんへ/頭痛について知る)https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_04.html
- 一般社団法人日本頭痛学会「2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)」https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_nijisei.html
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会(監修)「頭痛の診療ガイドライン2021」医学書院,2021(CQ I-2/CQ I-3/CQ II-2-7/CQ IV-3/CQ IV-4/CQ IV-6/CQ IV-7/CQ IV-8)https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/headache_medical_2021.pdf
- 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会(訳)「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」医学書院,2018(診断基準は上記日本頭痛学会ページより引用)
- 一般社団法人日本頭痛学会「頭痛ダイアリー」https://www.jhsnet.net/dr_medical_diary.html
この記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の症状の診断・治療については、必ず医療機関を受診してください。薬の適応・用量・使用できるかどうかは、持病や併用薬によって異なります。
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