朝起きたら首が回らない。多くはいわゆる「寝違え」で、数日で自然に治ります。ただ救急外来では年に何度か、同じ入り口から入ってきた別の病気に出会います。この記事では救急科専門医が、寝違えとして様子を見てよいものと、その日のうちに調べたほうがよいものの分け方を、学会の資料と症例報告の数字で整理します。
結論:確認するのは「しびれ」「熱と嚥下痛」「今までにない激しさ」の3つ
先に全体像を出します。朝起きて首が回らないとき、ストレッチや湿布より先に確認するのは次の3つです。
①手足のしびれ・力の入りにくさはないか(箸やボタンが急に不器用になった、歩くとふらつく、腕が上がらない、を含みます)
②熱はないか。のどが痛くないか。唾を飲み込むと痛くないか
③これまで経験したことのない激しさか。突然だったか。頭痛や吐き気を伴わないか
3つとも「いいえ」なら、寝違えとして数日待って構いません。ひとつでも「はい」があるなら、その日のうちに受診してください。
なぜこの3つなのかを、以下で一次資料から埋めていきます。これは首の痛みを怖がらせるための記事ではありません。むしろ逆で、「この3つがなければ待ってよい」という線を引くための記事です。
そもそも「寝違え」は、検査で異常が出ないことが前提の名前です
日本整形外科学会は「寝違え」をこう説明しています。
眠っていて目が覚めたときに、首の後ろや首から肩にかけての痛みが出ることがあり、いわゆる「寝違え」と言います。首を動かすと痛みが出る時もありますし、痛みで首を動かせない時もあります。
そして原因については、はっきりこう書いています。
何が起こって痛みが出ているかについては、いろいろな意見がありますが検査や画像でとらえられるような変化がないのが一般的なので、正確な原因であるという証拠はありません。
ここが出発点です。寝違えは「これが写ったから寝違え」と言える所見がない。同学会も、筋肉の阻血、こむら返りのような筋の痙攣、頸椎の椎間関節を包む袋(関節包)の炎症など複数の説を並べたうえで、証拠はないと明言しています。筋肉が攣る現象そのものについては、ふくらはぎの例で詳しく書いた記事があります(こむら返り(足がつる)の治し方)。
きっかけとして挙げられているのは、意外に地味なものです。
上肢の使い過ぎ(手で重いものを持つ動作は頸の後ろの筋肉に負担がでます)、同じ姿勢の持続(飲酒後の睡眠や疲れ果てての睡眠などでは寝返りが少なくなる・パソコンや事務作業が長時間に及ぶと頭を一定位置に保持するために頸部の筋肉に負担が生じる)、が原因の場合が多いと思われます。
飲んで帰った夜、疲れ切って寝落ちした夜に多いのは、寝返りが減るからだという説明です。そして結論として、
いずれにしても、「外傷(けが)」ではなく、軽い病気です。
と書かれています。本物の寝違えは、軽い病気です。だからこそ、軽くないものを外す作業に意味があります。同学会は診察で何を見るかも具体的に書いています。
例えば、手足のしびれはないか、手足の動きは正常か、深部反射(ハンマーで手足を叩いて反応を見ます)は正常か、X線写真で骨が溶けたりしていないか、などを診察します。
「寝違え」の場合には、首の動きは制限されていますが、上記の診察や検査では変化は認めません。
つまり、首の動きが制限されること自体は寝違えでも起きるのです。「回らない」は決め手になりません。決め手になるのは、首から離れたところ——手足に何か起きているかどうかです。
確認①:手足のしびれ、力の入りにくさ
1つ目の確認事項が、首以外の症状です。日本整形外科学会は、痛みが引かず診察で異常がある場合に考える病気として、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、転移性脊椎腫瘍、脊髄腫瘍、強直性脊椎炎、関節リウマチなどを挙げています。
箸・ボタン・階段の手すり——頚椎症性脊髄症のサイン
このなかで、患者さん自身が家で気づけるサインがはっきりしているのが頚椎症性脊髄症です。同学会の解説はこうです。
ボタンのはめ外し、お箸の使用、字を書くことなどが不器用になったり、歩行で脚がもつれるような感じや階段で手すりを持つようになったりという症状が出ます。手足のしびれも出てきます。
首が痛いという訴えより、手先が不器用になった・階段で手すりを使うようになったのほうが重要なサインです。しかもこれは、本人が気づきにくい形で進みます。
比較的若年の方であれば、かけ足やケンケンをしにくくなるなどの軽度の症状を自覚できますが、高齢者では気づくのが遅れる場合があります。
日本内科学会雑誌に掲載された「頚椎症性脊髄症診療ガイドライン2020改訂第3版」の解説には、疫学と経過がまとめられています。
頚椎症性脊髄症は50歳以上かつ男性に多い特徴がある。加療を要する頚椎症性脊髄症の発生頻度は、人口10万人あたり数人程度と報告されている。
そして、待つことの代償についても書かれています。
脊髄麻痺症状が出現すると保存療法に反応しにくく、また手術のタイミングが遅れ麻痺が進行すると手術後の症状改善も不良となる
日本整形外科学会も、日常生活に支障が出る手指の巧緻運動障害や、階段昇降に手すりが必要な状態になれば手術的治療が選択される、としています。さらに見落とされがちなのが、転倒のリスクです。
転倒などの軽微な外傷で四肢麻痺(脊髄損傷)になる可能性が存在しますので、転倒しないように注意します。
首の脊柱管が狭くなっている人は、軽く転んだだけで手足が動かなくなることがあるということです。高齢のご家族が「最近つまずきやすい」「箸が使いにくい」と言っているなら、首の痛みとは別に一度整形外科で診てもらってください(転倒後に注意すべきことは高齢者が転倒して頭を打った時にまとめています)。
「肩が上がらない」で来て、首の病気ですらなかった人
しびれや脱力を確認する理由は、頸椎の病気だけではありません。脊髄外科に、55歳女性の症例報告があります。
来院3 日前に左肩痛のみが出現して,来院当日に左肩が上がらなくなり当院救急外来を受診した.
頚椎症が疑われて経過を見られていましたが、実際は椎骨動脈解離——首を通る血管の壁が裂けて、拡張した血管が神経の出口を圧迫していたものでした。報告者はこう書いています。
通常診療の中では,上肢麻痺と頚部痛の症状の場合は外傷や頚椎症などの頚椎疾患を疑ってしまい,本症例のような血管障害は見逃される可能性がある.
頻度としては、頭蓋外頚部動脈解離は年間10万人あたり3.5〜4.5人、椎骨動脈に限れば1〜1.5人で、脳梗塞の原因の約2%を占めるとされています。発症は40〜50代に比較的多く、くも膜下出血・脳梗塞・頭痛という形で現れます。まれではありますが、首の痛みのあとに手足の麻痺・ろれつ・視野の異常が出たら、それは整形外科の話ではなくなります(脳梗塞の症状と治療)。
確認②:熱がある、のどが痛い、飲み込むと痛い
2つ目の確認事項が、発熱と嚥下痛です。ここが揃うと、寝違えでは説明がつかなくなります。
朝から首が痛く、夕方には眠れないほどになった——石灰沈着性頸長筋腱炎
耳鼻咽喉科展望に報告された症例を紹介します。61歳女性。
起床後から後頸部痛を自覚した。同日の夕方には痛みは増悪し眠れないほどの痛みになった。
初診時の体温は38.3度。首の前後屈・側屈が制限されていました。診断は石灰沈着性頸長筋腱炎です。頸椎の前面を走る頸長筋という筋肉の腱に、ハイドロキシアパタイトという石灰が沈着し、それが吸収される過程で強い炎症が起きるものです。同誌はこの疾患をこう説明しています。
急激な頸部痛,咽頭痛,頸部可動域制限を主訴として発症する疾患で頸長筋にハイドロキシアパタイトが沈着することによる炎症が原因とされている。
大事なのは、これ自体は自然に治る病気だということです。
予後良好な疾患でNSAIDs などの消炎鎮痛剤で通常は1~2 週間程度で症状は消失する。
先の61歳女性も、NSAIDsのみで外来経過観察となり、受診5日後には白血球数とCRPが正常値に戻り、発症から約3週間で症状が消失しています。ではなぜ知っておく必要があるのか。のどの奥の膿瘍と見分けがつきにくく、その見分けを誤ると不要な入院と処置が行われるからです。
日本耳鼻咽喉科学会会報に報告された8例の検討では、こう書かれています。
本疾患は周知されておらず,加療中に本疾患と診断された症例は4例だけであり,残りの4例は咽頭後間隙炎,咽後膿瘍の疑いの診断で加療されていた.
今回の8例でも全例で抗生剤が投与されていた.
8例の内訳は男性5名・女性3名、年齢は32歳から56歳、平均44歳。全例で頸部痛を認め、7例で頸部の可動制限と嚥下痛・咽頭痛を認めています。同誌はこの疾患について「本疾患の患者は急激な頸部痛,頸部可動域制限を呈するため,最初に整形外科を受診することが多く,最終的に耳鼻咽喉科で診断されることが多い」とも記しています。
つまり患者側から見ると、朝から首が痛くて回らない、熱っぽい、飲み込むと痛い、という組み合わせは「首の筋肉の話」ではない可能性があるということです。唾が飲み込めないほどの痛みなら気道の緊急事態も考えます(急性喉頭蓋炎)。片側だけ痛くて口が開けにくいときは、別の膿瘍を考えます(扁桃周囲膿瘍)。
熱がなくても否定できない——化膿性脊椎炎という落とし穴
もうひとつ、発熱のところで注意が必要な病気があります。背骨そのものの感染である化膿性脊椎炎です。日本ペインクリニック学会誌に、手術に至った30症例の検討が報告されています。冒頭にこうあります。
化膿性脊椎炎(pyogenic spondylitis:PS)は,腰背部痛や頸部痛を主訴とし発熱を伴うことが多い疾患であるが,典型的な兆候に乏しく診断に苦慮することも多い
実際の数字が、この難しさを表しています。30例の年齢は中央値69.5歳(33〜88歳)、うち20例が65歳以上でした。そして、
診断時に全症例で病変部に一致した疼痛を認めたが,8症例で発熱を認めなかった.
30例中8例は、熱が出ていませんでした。さらに、
全症例においてMRIで診断していたが,6症例は初回MRIで診断できていなかった.
痛みが出てから診断がつくまでの期間は中央値12日、長い例では90日かかっています。同論文は、近年は高齢者・易感染性宿主の増加により疼痛の訴えが弱く発熱も乏しい症例が増えていること、死亡率は2〜11%で生存者の約3分の1が神経学的後遺症に悩まされること、そして診断の遅れは神経学的予後を悪化させることを指摘しています。
この論文でいちばん重い数字は、待った結果のほうです。病変部の痛み以外に神経学的異常が出て初めてMRIを撮った症例が8例あり、その8例のうち自立歩行で退院できたのは1例だけでした(残る22例では9例が自立歩行で退院しています)。
もちろん、朝の首の痛みの大半は化膿性脊椎炎ではありません。ただ、糖尿病がある、透析を受けている、最近ほかの感染症にかかった、免疫を抑える薬を飲んでいる——そういう背景がある人の「治らない首の痛み」は、熱がなくても様子見の対象から外してください。深いところの感染が痛みだけで進む例は、腰でも同じことが起こります(腸腰筋膿瘍)。
確認③:今までにない激しさ、突然、頭痛を伴う
3つ目の確認事項が、痛みの立ち上がり方です。ここは救急科がいちばん神経を使うところです。
脳卒中の外科に、1998年5月から2014年4月までの16年間に1施設でくも膜下出血と診断された235例のうち、初診で診断できなかった症例を検討した報告があります。
初診時にくも膜下出血と診断できなかったと考えられた症例は,32 例(13.6%)であった.
この32例が、どういう人たちだったか。
受診手段:全例が徒歩受診であった.
全員、自分で歩いて受診しています。神経学的な重症度も、3分の2以上は頭痛が軽度の分類でした。そして初診時につけられた診断名が問題です。感冒6例、急性胃腸炎3例、頚椎捻挫2例、緊張型頭痛2例、片頭痛1例、そして診断名を明らかにされなかった症例が14例で最多でした。頭痛に伴う症状としては、嘔気・嘔吐21例に次いで頚部痛が5例に見られています。
CTを持っている医療機関を受診したのは11例ですが、実際にCTが撮られたのは3例のみで、その3例もいずれも軽度のくも膜下出血だったため初診医により異常なしと判断されていました。確定診断までの受診回数は、2回が18例、3回が10例、5回が4例です。
この報告を、首の痛みの記事で引く理由ははっきりしています。くも膜下出血の一部は「首が痛い」「首をひねった」という顔をして、自分の足で外来にやってくるからです。首の後ろの痛みが突然始まり、これまで経験したことのない強さで、頭痛や吐き気を伴うなら、それは寝違えの範囲ではありません。頭痛そのものの見分け方は別記事にまとめています(片頭痛とは?)。
子どもが「首が回らない」と言ったら、寝違えとは考えません
ここは大人と分けて考えてください。子どもで、首が斜めに傾いたまま戻らない場合、環軸椎回旋位固定(AARF)という状態があります。首の一番上の骨(環椎)が二番目の骨(軸椎)に対して回った位置で固まってしまうものです。
整形外科と災害外科に、3施設で加療した小児79例(男40例、女39例、平均5.5歳)の検討が報告されています。注目すべきは発症のきっかけです。
発症から初診までの期間は平均3.6日で11例は睡眠肢位に関連して発生していた.
明らかな外傷のない症例をさらに分けると、起床後の発症が4例、腕枕後が2例、全身麻酔下の頭頚部手術後が2例、人工呼吸器管理後が2例、頸部の回旋位で臥位を維持した後が1例でした。つまりこの11例は、家庭では「寝違え」と呼ばれていた可能性が高いということです。同論文の結語はこうなっています。
AARF の予防には睡眠肢位に留意することが重要と考えられた.また初期治療として頚椎のハードカラー固定をまず行い,1週間で改善傾向なければ速やかにGlisson 牽引に移行すべきである.
治療成績も、早さが効くことを示しています。初期治療として頚椎カラーを行った43例のうち23例が改善し、無効だった20例はGlisson牽引に移行して19例が改善しました。カラーが無効だった群では、有意に発症から初診までの期間が長かったと報告されています。
家庭での見分け方はシンプルです。顔が斜めに傾いて、正面を向けない。反対側に顔を向けられない。数日たっても位置が変わらない。この場合は様子を見ずに整形外科を受診してください。子どもは「首が痛い」ではなく「変な向きのまま遊んでいる」という形で見つかることがあります。
「首を回すストレッチ」と「マッサージ」について
検索すると、寝違えを一瞬で治すストレッチが数多く出てきます。ここは医師として、はっきり線を引いておきます。
日本整形外科学会の記載は、ストレッチを全否定していません。
可能なら緩やかにストレッチするのも有効な場合がありますが、痛みを我慢してストレッチするのは逆効果の場合があります。
マッサージについても同じ書き方です。
マッサージが有効な場合もあるかもしれませんが、余計に痛くなる場合には良くありません。
条件つきで有効、痛みが増すならやめる。これが学会の立場です。「痛くても伸ばせば治る」という発想は、ここには含まれていません。
そして、まれではあるものの実際に起きた事故が学会誌に残っています。整形外科と災害外科に報告された37歳女性の症例です。
初診時,後頚部痛を認めたが斜頚は存在せず,Xp・MRI 精査するも有意な病変は無かった.初診後,整骨院で2日間,後頚部の愛護的マッサージを受けた.翌朝から斜頚を自覚し改善せず.
その後2か月たって斜頸を主訴に再診し、成人の環軸椎回旋位固定と診断されました。頸椎持続介達牽引を行い、斜頸出現から3か月後に鎮静下の徒手整復。カラー固定では1日で再脱臼したため、ハローベスト固定を8週間行っています。報告者は診断までに2か月、整復までに3か月を要した慢性例だったと記しています。
同じ報告のなかで、24歳女性が頚部を自分自身の両手で持って右側に回旋させてストレッチした際にAARFを発症した海外例も紹介されています。また、小児AARFにおいて発症から治療開始までの期間が1か月以上の群では、1か月未満の群と比較して有意に保存治療の成功率が低いという報告も引用されています。
念のため補足すると、これらは非常にまれな出来事です。整体やマッサージに行くこと自体を否定するものではありません。言いたいのは順番の話で、しびれ・脱力・発熱・嚥下痛・突然の激痛がないことを確かめてから行ってください、ということです。痛みが強い時期に首を強く回す施術を選ぶ理由は、少なくとも医学的にはありません。
3つとも当てはまらないときに、家でやること・やらないこと
ここからが本題の裏側です。確認①②③がすべて「いいえ」なら、それは高い確率で本物の寝違えです。日本整形外科学会が書いている対処は次のとおりです。
やること
①痛い方向には動かさない。「動かすと頚が痛いので、寝違えが起こった時には痛い方向には動かさずにいる方が良いでしょう」とされています。痛くない範囲で日常的に動かすのは構いません。
②医療機関で処方された湿布を痛いところに貼る。「医療機関で処方される湿布には、炎症を抑えて痛みを取る薬剤が含まれていますので、痛い部分に貼るのは有効です」と明記されています。
③飲み薬も選択肢になる。「鎮痛消炎薬や筋弛緩薬の内服も有効でしょう」とされています。市販の鎮痛薬を数日使うのは現実的な選択です。
④動かすなら、緩やかに、痛みの手前で。我慢して伸ばすのは逆効果になり得ます。
同学会は、筋肉の痙攣が原因の場合にこむら返りの治療で使う漢方薬が有効なことがあること、痛い筋肉や筋膜に局所麻酔薬を注射する方法が有効な場合があることにも触れています。いずれも医療機関で相談する話です。
温めるか冷やすかは、決着がついていません
よく聞かれる質問ですが、日本整形外科学会の解説には温冷についての記載がありません。ここで「温めるのが正解です」と書くのは簡単ですが、根拠を示せないので書きません。実際の外来では「試して楽なほうでいいですよ」と答えています。
ひとつだけ注意があります。カイロや湯たんぽを当てたまま眠るのはやめてください。首は皮膚が薄く、寝ている間に同じ場所が当たり続けます。低い温度でも長時間当たれば皮膚は深くまで傷みます(低温やけどの受診の目安と「痛くないのに深い」理由)。
やらないこと
①痛みを我慢して首を回す。②首を強く牽引する・ひねる施術を痛みの強い時期に受ける。③「そのうち治る」と決めて1週間以上放置する。④しびれや脱力が出ているのに、首の運動でなんとかしようとする。
何日で受診するか、何科に行くか
日本整形外科学会の記載が、そのまま目安になります。
起床時に痛くなり、数時間から数日で痛みが改善していくようなら、徐々に首を動かしていくことで治っていくのが一般的です。
痛みが強い場合には整形外科を受診して、他の病気の可能性がないかを調べてもらいます。
そして結語はこうです。
要は、寝違えが治らない場合には、整形外科を受診して調べてもらう必要があるということです。
まとめると、数日で改善に向かうなら待ってよい。1週間たって同じか悪化しているなら整形外科。ここまでは日数で判断できます。日数を待たない条件が、冒頭の3つです。しびれ・脱力があるとき、発熱と嚥下痛があるとき、突然の今までにない激しさや頭痛を伴うときは、その日のうちに受診してください。
痛みが強いだけで神経の症状がない場合、レントゲンを撮るかどうかは診察所見で決まります。この「撮る・撮らない」の考え方は、足首の捻挫の記事で具体的なルールを紹介しているので、興味があれば読んでみてください(足首の捻挫でレントゲンが要るかは「押して痛い場所」と「4歩歩けるか」で決まる)。急な体の痛みを、待つか行くかで迷う場面は腰でも同じです(ぎっくり腰(急性腰痛症)とは?)。
なお、朝起きたときの症状という点では、首の痛みではなく回転性のめまいで受診される方も多くいます。こちらは首とは別の原因です(朝、寝返りで天井が回る——良性発作性頭位めまい症(BPPV))。
まとめ
朝起きて首が回らないとき、確認するのは3つです。①手足のしびれ・力の入りにくさ、②発熱とのどの痛み・嚥下痛、③今までにない激しさや突然の発症・頭痛。3つとも「いいえ」なら、痛い方向に動かさず、湿布と鎮痛薬で数日待って構いません。日本整形外科学会も、寝違えは「外傷(けが)」ではなく軽い病気だと明記しています。逆にひとつでも当てはまるなら、日数を待たずに受診してください。首の痛みという入り口を共有しているだけで、その先はまったく別の病気です。そして痛みが強い時期に、首を無理に回すストレッチや施術を選ぶ理由はありません。
よくある質問
寝違えは、温めるのと冷やすのとどちらが正しいですか?
日本整形外科学会の解説には、温める・冷やすのどちらが良いかという記載はありません。書かれているのは「動かすと頚が痛いので、寝違えが起こった時には痛い方向には動かさずにいる方が良いでしょう」「医療機関で処方される湿布には、炎症を抑えて痛みを取る薬剤が含まれていますので、痛い部分に貼るのは有効です」という2点です。温冷はどちらかが誤りというより、決着がついていない部分だと考えてください。試して楽なほうを選び、痛みが強くなるならやめる、という判断で構いません。ただしカイロや湯たんぽを長時間当てたまま眠るのは、低温やけどの原因になるので避けてください。
寝違えは何日で治りますか。何日待って治らなければ受診すべきですか?
日本整形外科学会は「起床時に痛くなり、数時間から数日で痛みが改善していくようなら、徐々に首を動かしていくことで治っていくのが一般的です」としています。逆に言えば、数日たっても改善の方向へ向かわないものは寝違えとして扱えません。同学会は「要は、寝違えが治らない場合には、整形外科を受診して調べてもらう必要があるということです」と結んでいます。目安としては、1週間たって痛みが同じか悪化しているなら受診してください。しびれ・脱力・発熱・嚥下痛がある場合は、日数を待たずに受診が必要です。
寝違えは何科に行けばいいですか?
整形外科です。日本整形外科学会は「痛みが強い場合には整形外科を受診して、他の病気の可能性がないかを調べてもらいます」としています。診察では、手足のしびれの有無、手足の動き、深部反射、X線写真で骨に異常がないかを確認します。ただし、発熱と飲み込むときの痛みを伴う場合は耳鼻咽喉科が診断にたどり着くことも多く、突然の激しい痛みで頭痛や吐き気を伴う場合は脳神経外科・救急外来が窓口になります。迷ったときは救急外来で構いません。
整体やマッサージ、整骨院に行ってもいいですか?
まず、しびれ・脱力・発熱・嚥下痛・今までにない激しさがないことを確認してからにしてください。日本整形外科学会は「マッサージが有効な場合もあるかもしれませんが、余計に痛くなる場合には良くありません」としています。また整形外科と災害外科に、整骨院で2日間の愛護的マッサージを受けた翌朝から斜頸を自覚し、環軸椎回旋位固定と診断された37歳女性の報告があります。この症例は診断まで2か月、整復まで3か月を要しました。頻度としては非常にまれですが、痛みが強い時期に首を回す施術を受けることは勧めません。
首を回すストレッチをして治すのは危険ですか?
痛みを我慢して行うストレッチは避けてください。日本整形外科学会は「可能なら緩やかにストレッチするのも有効な場合がありますが、痛みを我慢してストレッチするのは逆効果の場合があります」としています。整形外科と災害外科の報告では、24歳女性が頚部を自分自身の両手で持って右側に回旋させてストレッチした際に環軸椎回旋位固定を発症した海外例も紹介されています。ゆっくり動かせる範囲で動かすのは構いませんが、痛い方向へ無理に回す動作は目的になりません。
子どもが「首が痛くて回らない」と言っています。寝違えでしょうか?
子どもの場合は環軸椎回旋位固定という別の状態を考える必要があります。整形外科と災害外科に報告された小児79例(男40例、女39例、平均5.5歳)の検討では、11例が睡眠肢位に関連して発生しており、そのうち4例は起床後の発症、2例は腕枕後でした。首が斜めに傾いたまま戻らない、正面を向けない、顔を反対側へ向けられない、という所見があれば、様子を見ずに整形外科を受診してください。同じ報告は「AARFの予防には睡眠肢位に留意することが重要と考えられた」としています。
首の痛みで、すぐに救急外来へ行くべきなのはどんなときですか?
次のいずれかがあるときです。(1)手や足のしびれ、力が入らない、箸やボタンが急に不器用になった、歩くとふらつく。(2)38度前後の発熱があり、のどが痛い、唾を飲み込むと痛い、口が開けにくい。(3)これまで経験したことのない突然の激しい痛みで、頭痛・吐き気・意識のぼんやりを伴う。(4)転倒・事故・スポーツなど、はっきりした外力のあと。(5)手足の麻痺やろれつが回らない、片方の目が見えにくいなどの神経症状。これらは寝違えでは説明できません。特に(3)と(5)は時間が予後を決めるので、翌朝まで待たないでください。
参照ソース(一次情報)
- 公益社団法人 日本整形外科学会「寝違え」症状・病気をしらべるhttps://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprained_neck.html
- 公益社団法人 日本整形外科学会「頚椎症性脊髄症」症状・病気をしらべるhttps://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html
- 渡辺雅彦「頚椎症性脊髄症 診療ガイドライン2020改訂第3版」日本内科学会雑誌 110:2407〜2412,2021https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/11/110_2407/_pdf
- 大塚雄一郎ほか「石灰沈着性頸長筋腱炎の8例―その鑑別診断と治療について―」日本耳鼻咽喉科学会会報 116:1200〜1207,2013https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/116/11/116_1200/_pdf
- 木村亮平ほか「当科で経験した石灰沈着性頸長筋腱炎の3症例」耳鼻咽喉科展望 63:6;274〜279,2020https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/63/6/63_274/_pdf/-char/ja
- 「化膿性脊椎炎と診断されて手術に至った30症例の検討」日本ペインクリニック学会誌https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/32/6/32_24-0044/_html/-char/ja
- 野田尚志ほか「上肢近位筋麻痺を呈した椎骨動脈解離の1例」脊髄外科 32(1)69〜72,2018https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/32/1/32_69/_pdf
- 今尾幸則・渡曾祐隆「初療機関でくも膜下出血と診断できなかった頭痛患者に関する検討」脳卒中の外科 44:283〜287,2016https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/44/4/44_283/_pdf
- 山田圭ほか「小児の環軸椎回旋位固定の保存的治療アルゴリズムの検討」整形外科と災害外科 63:(3)501〜504,2014https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/63/3/63_501/_pdf
- 泉貞有ほか「マッサージ後に発症した成人環軸椎回旋位固定の1例」整形外科と災害外科 67:(1)53〜56,2018https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/67/1/67_53/_pdf
この記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。個々の症状の診断・治療については、必ず医療機関を受診してください。症例報告は特定の患者さんの経過であり、同じ症状の方すべてに当てはまるものではありません。

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