インフルエンザの初期症状と検査のタイミング|悪寒・関節痛が出たら何時間後に受診?救急科専門医が解説【2026年版】

インフルエンザの初期症状は、ぞくぞくとした悪寒から始まり、数時間のうちに38℃以上の高熱・頭痛・関節痛・全身のだるさが一気に揃うのが特徴です。「昨日の夜は元気だったのに、朝には起き上がれない」——この立ち上がりの速さこそが、ふつうのかぜとの最大の違いになります。

この記事では、救急科専門医が、厚生労働省の「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料、日本感染症学会の提言、そして感染症学雑誌に掲載された迅速検査に関する前向き観察研究をもとに、①初期症状の並び方、②かぜとの見分け方、③検査を受けるのに適したタイミング、④受診・救急要請の目安、⑤家庭でやってはいけないこと、⑥子どもの異常行動への備え、を順に整理します。

日本の流行期は目前ではありませんが、JIHSは日本の流行パターンを「毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンを示す」と記載しています。実際に熱が出た夜には、調べ物をする余裕はありません。流行が始まる前に読んでおく価値がある内容です。

  1. インフルエンザの初期症状——「悪寒 → 高熱 → 関節痛」が半日で揃う
  2. かぜとの違いは「症状の種類」ではなく「始まり方」
  3. まぎらわしい名前——「インフルエンザ菌」はインフルエンザではありません
  4. 検査を受けるタイミング——発症12時間未満の迅速検査は感度38.9%
  5. では、何時間後に受診すればいい?——「12時間より後、48時間より前」
  6. 症状のレベル分け——家で見ていい/その日のうちに受診/すぐ救急
  7. 救急車を呼ぶ基準——「熱の高さ」ではなく「呼吸・意識・けいれん」
  8. 子どもの異常行動——「発熱から2日間」は目を離さない
  9. ただの寝ぼけか、脳症の前触れか——見分けの手がかり
  10. やってはいけないこと——とくに解熱剤の選び方
  11. 抗インフルエンザ薬——何を選ぶかは医師が決める
  12. いつから学校・仕事に行ける?——「5日」と「2日」の両方を満たす
  13. 重症化しやすい人は、早めに相談しておく
  14. よくある質問(FAQ)
    1. インフルエンザの検査は、熱が出てから何時間後に受ければいいですか?
    2. 検査で陰性でした。インフルエンザではないと考えていいですか?
    3. かぜとインフルエンザは、どこで見分ければいいですか?
    4. 子どもが急に走り出したり、変なことを言ったりします。様子を見ていいですか?
    5. 熱が高いので市販の解熱剤を飲ませてもいいですか?
    6. 抗インフルエンザ薬は必ず飲んだほうがいいですか?48時間を過ぎたら意味がないですか?
    7. 学校や仕事は、いつから行っていいですか?
    8. 重症化しやすいのはどんな人ですか?
  15. まとめ
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  17. 参照ソース(一次情報)

インフルエンザの初期症状——「悪寒 → 高熱 → 関節痛」が半日で揃う

厚生労働省はインフルエンザの症状について、「38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻水、咳等の症状も見られます」と記載しています。

国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料は、症状の順番まで含めて説明しています。「発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き」。ここが臨床的にいちばん大事なところです。全身症状が先に来て、鼻やのどの症状が後から追いかけてくる——この順番がインフルエンザらしさをつくります。

実際の経過を時間軸に置くと、多くの方はこう体験します。

  • 0〜数時間:急にぞくぞくする。厚着をしても寒い。体温計はまだ37℃台のこともある
  • 数時間〜半日:38℃以上まで一気に上がる。頭が重い、腰や太ももなど大きな関節・筋肉が痛む
  • 半日〜1日:起き上がるのがつらい。食欲がない。ここで初めて「かぜとは違う」と気づく
  • 1〜2日目以降:のどの痛み、鼻水、咳が出てくる。熱は続く

潜伏期間についてJIHSは「A型またはB型インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に」と記載しています。つまり「誰にうつされたか」を思い出すなら、さかのぼるのは1〜3日前です。1週間前の出張を疑う必要はあまりありません。

なお、熱の高さそのものは重症度の物差しにはなりません。40℃出ていても水分がとれて会話ができていれば緊急性は高くなく、逆に38℃台でも呼吸が浅く速い、意識がぼんやりしている場合のほうが心配です。体温の数字ではなく、呼吸・意識・水分がとれているかを見てください。

かぜとの違いは「症状の種類」ではなく「始まり方」

「のどが痛いからかぜ、熱が高いからインフルエンザ」という分け方は、実はうまく機能しません。インフルエンザでものどは痛みますし、かぜでも38℃を超えることはあります。JIHSはインフルエンザを「『一般のかぜ症候群』とは分けて考えるべき『重くなりやすい疾患』である」と位置づけ、その理由として「いわゆる『かぜ』に比べて全身症状が強い」ことを挙げています。

見るところかぜ(かぜ症候群)インフルエンザ
始まり方じわじわ、1〜2日かけて急激。半日で様変わりする
最初に出る症状のど・鼻の症状が先悪寒・発熱・全身症状が先
ないか、あっても軽い38℃以上のことが多い
全身症状軽い関節痛・筋肉痛・強い倦怠感
動けるかだいたい動ける横になっていたい

この表を、家族に説明するときの一行にまとめるとこうなります。「のどから始まったならかぜ、体全体から始まったならインフルエンザを疑う」。もちろん例外はありますし、最終的な診断は医師が行いますが、受診するかどうかを決める場面ではこの軸が実用的です。

なお、冬に高熱が出る病気はインフルエンザだけではありません。強いのどの痛みが主役なら溶連菌感染症、5日以上続く高熱と咳ならヒトメタニューモウイルス、咳と痰が長引くなら長引く咳の原因も候補に入ります。「インフルエンザではなかった」=「たいしたことない」ではありません。

まぎらわしい名前——「インフルエンザ菌」はインフルエンザではありません

調べ物をしていると「インフルエンザ菌(Hib:ヘモフィルス・インフルエンザ b型)」という名前に出会うことがあります。名前は似ていますが、これはウイルスではなく細菌で、この記事で扱っているインフルエンザとは別の病原体です。19世紀の流行時に原因と誤解されたまま名前が残ったという歴史的な事情によるものです。

インフルエンザ菌は、乳幼児の細菌性髄膜炎や、気道が急速に腫れる急性喉頭蓋炎の原因になります。Hibワクチンで予防するのはこちらであって、毎年秋に打つインフルエンザワクチンとは対象が違います。「Hibを打ったからインフルエンザは大丈夫」ではありません。混同しやすいので、ここで切り分けておいてください。

検査を受けるタイミング——発症12時間未満の迅速検査は感度38.9%

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。「熱が出た。すぐ検査してもらおう」——この行動が、いちばん多い失敗です。

感染症学雑誌に掲載された前向き観察研究「発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に与える影響:前向き観察研究」(明石祐作ほか、95巻1号、9-16ページ、2021年)は、冒頭で問題をこう述べています。「日本ではインフルエンザの診断に,迅速抗原検査が広く用いられている.しかし,40~50% で偽陰性が見られるとされ,正確に結果を解釈するためには,検査性能に影響する要因を把握する必要がある」。

この研究が報告した、発症からの経過時間別の感度が次の数字です。

発症からの時間迅速抗原検査の感度意味するところ
12時間未満38.9%(95% CI:17.3〜64.3)陽性と出るほうが少ない
12〜24時間40.5%(95% CI:25.6〜56.7)まだ半分に届かない
24〜48時間65.2%(95% CI:49.8〜78.6)ここで大きく上がる
48時間以降69.6%(95% CI:47.1〜86.8)それでも3割は陰性に出る

発症12時間未満で検査をすると、本当にインフルエンザにかかっていても、6割は陰性という結果が返ってくるということです。理由は単純で、迅速抗原検査は鼻やのどにいるウイルスの「量」を見ているからです。発症直後はまだウイルスが増えきっておらず、検出の閾値に届きません。検査が下手なのではなく、早すぎるのです。

ただし、この数字の読み方には注意が必要です。表の括弧内は95%信頼区間で、幅が広いのは各群の人数が限られるためです。これは単一の観察研究の結果であって、「何時間後に検査すること」を学会や行政が一律に定めているわけではありません。検査の時期は、症状の重さ・流行状況・受診できる時間帯を含めて医師が判断します。ここで押さえてほしいのは、38.9%という具体的な数字そのものより、発症直後の陰性は「かかっていない証拠」にならないという方向性です。

そして、この「早すぎる検査」には二重のコストがあります。ひとつは、陰性という結果を信じて出勤・登校してしまうこと。もうひとつは、翌日また熱が下がらず、もう一度受診して、もう一度あの綿棒を鼻に入れられることです。子どもにとってはかなりの負担になります。

では、何時間後に受診すればいい?——「12時間より後、48時間より前」

検査の精度だけを考えれば、遅く行くほど有利です。しかし、治療の側には逆向きの締め切りがあります。厚生労働省は「抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します」と記載しています。

この2つを重ねると、実用的な窓が見えてきます。

  • 早すぎる(12時間未満):検査が陰性に出やすい。もう一度受診することになりやすい
  • ちょうどよい(おおむね12〜48時間):検査の精度が上がり、かつ薬の開始も48時間以内に間に合う
  • 遅すぎる(48時間超):検査の精度は高いが、薬で短縮できる幅は小さくなる

生活に落とすと、こうなります。夜に熱が出たなら、翌朝いちばんの外来がちょうどよい。夜間救急に駆け込むのは、検査という目的においてはむしろ不利になります。逆に、朝に発症したなら、その日の夕方から翌日にかけてが窓に入ります。

ただし、これは「元気だが熱が高い」場合の話です。後述する危険なサインがあるときは、時間を数える対象ではありません。厚生労働省も「高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう」と記載しています。検査の都合で受診を遅らせてよいのは、待てる状態のときだけです。

また、48時間を過ぎたからといって受診しない理由にはなりません。重症化しやすい条件がある方や症状が重い方では、48時間を過ぎていても医師の判断で治療が行われます。

症状のレベル分け——家で見ていい/その日のうちに受診/すぐ救急

救急外来で実際に使っている判断軸を、家庭向けに整理するとこうなります。

レベル状態動き方
軽症高熱・だるさはあるが、会話ができ、水分がとれている。トイレに行ける自宅で休養。発症12〜48時間のうちに日中の外来へ
中等症水分がほとんどとれない。半日以上尿が出ない。ぐったりして起き上がれない。持病が悪化しているその日のうちに受診。夜間になるなら救急外来へ相談
重症呼吸が苦しい・肩で息をする/唇や顔色が悪い/呼びかけへの反応が鈍い/けいれん/意識がはっきりしないためらわず119番

境目で迷ったときの実務的なコツを3つ挙げます。

  1. 熱が下がっているときの様子で判断する。高熱の最中はだれでもぐったりします。解熱して1時間ほど経っても反応が鈍い、目が合わない——これは熱のせいではありません
  2. 呼吸の速さを数える。胸ではなく、みぞおちやろっ骨の間がへこむような呼吸(陥没呼吸)は、子どもでは危険なサインです
  3. おしっこの回数を数える。半日以上出ていなければ、脱水がかなり進んでいます

救急車を呼ぶ基準——「熱の高さ」ではなく「呼吸・意識・けいれん」

救急科の立場から明確にしておきます。119番の判断に、体温の数字はほとんど関係しません。次のいずれかがあれば、時間帯を問わず救急要請を考えてください。

  • 呼吸が苦しそう——肩で息をする、横になれない、話すのに息が続かない、陥没呼吸
  • 唇や爪の色が悪い——紫っぽい、白っぽい
  • けいれん——とくに5分以上続く、繰り返す、左右差がある
  • 意識がおかしい——呼びかけに反応しない、目が合わない、ろれつが回らない
  • ぐったりして水分がまったくとれない——半日以上尿が出ていない
  • 高齢の方で、いつもと様子が違う——発熱がはっきりしなくても、急に動けなくなった・つじつまが合わない

高齢の方については、補足が必要です。インフルエンザで直接搬送されるより、その後の肺炎や持病の悪化で運ばれてくるほうが多いのが実感です。JIHSも「呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており」と記載しています。熱が下がった数日後に、また熱が出て咳と痰が増えてきた——これは「ぶり返し」ではなく、肺炎を疑う場面です。持病としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や心不全がある方はとくに注意してください。全身状態が急速に悪化するときは敗血症も念頭に置く必要があります。

子どものけいれんについては、子どもの発熱で夜間に受診すべき目安も合わせて確認しておくと、いざというときに動けます。

子どもの異常行動——「発熱から2日間」は目を離さない

毎シーズン必ず話題になるのが、子どもの異常行動です。厚生労働省は次のように記載しています。「インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が報告されています」。具体例として挙げられているのは「急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなど」です。

ここは誤解の多いところなので、はっきり書きます。「特定の薬を飲まなければ異常行動は起きない」わけではありません。薬を飲んでいなくても報告されています。したがって対策は「薬を避けること」ではなく、環境を整えて事故を防ぐことになります。

厚生労働省は「少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい」としたうえで、具体策を4つ挙げています。

  • 「玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)」
  • 「ベランダに面していない部屋で寝かせる」
  • 「窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)」
  • 「できる限り1階で寝かせる(一戸建てにお住まいの場合)」

マンションにお住まいで1階に移せない場合は、玄関と窓の補助錠を必ず使うこと、そして子どもを別室で一人にしないことが中心になります。「寝たから大丈夫」ではなく、発熱から2日間は同じ部屋で寝る——それがいちばん確実な対策です。

ただの寝ぼけか、脳症の前触れか——見分けの手がかり

「うちの子、熱でうわごとを言っているけれど、これは受診すべきなのか」。この判断はとても難しく、保護者の方から必ず聞かれます。

手がかりになるのが、「インフルエンザ脳症の診療戦略」(平成30年2月)に掲載されている前駆症状としての異常言動・行動の例です。原文では次の6つが挙げられています。

  • 「両親がわからない,いない人がいると言う(人を正しく認識できない)」
  • 「自分の手を噛むなど,食べ物と食べ物でないものとを区別できない」
  • 「アニメのキャラクター・象・ライオンなどが見える,など幻視・幻覚的訴えをする」
  • 「意味不明な言葉を発する,ろれつがまわらない」
  • 「怯え,恐怖,恐怖感の訴え・表情」
  • 「急に怒り出す,泣き出す,大声で歌い出す」

同資料は、インフルエンザに伴う異常言動・行動の具体例として「ついていないテレビを見て『猫が来る』,『お花畑が見える』」「そばにいるのに『ママ近くに来て』と話す」「父親を『お姉ちゃん』と言う」といった記載も挙げています。

実務的な見分けのポイントは、「その状態がどれくらい続くか」と「間に意識が戻るか」です。同資料の初期対応フローチャートは、二次・三次医療機関へ紹介する目安として、異常言動・行動が「連続ないし断続的に概ね 1 時間以上続くもの」または「意識状態が明らかに悪いか,悪化する場合」を挙げ、一方で「短時間で消失するもの」「異常言動・行動の間欠期に意識障害を認めないもの」は経過観察の側に置いています。

家庭での言い換えはこうです。数分で元に戻り、そのあとは名前を呼べば普通に返事をする——これは経過を見てよい側。1時間近く続く、あるいは間に「戻り」がない——これは受診する側です。けいれんについても同資料は、15分以内・繰り返しなし・左右対称のものを単純型としつつ、「けいれんに異常言動・行動が合併する場合には単純型でも二次または三次医療機関に紹介する」としています。けいれん+おかしな言動の組み合わせは、それだけで受診の理由になります。けいれんそのものへの対応は熱性けいれんの5分ルールも参考にしてください。

やってはいけないこと——とくに解熱剤の選び方

ここは、家にあるものでなんとかしようとして事故になりやすい領域です。

  • 子どもに、家にある解熱鎮痛薬を自己判断で使う——薬の種類によっては避けるべきものがあります(下記)
  • 家族に処方された抗インフルエンザ薬の残りを飲ませる——年齢・体重・型によって適切な薬は変わります
  • 陰性だったからと出勤・登校する——発症12時間未満の検査では感度38.9%です
  • 熱が下がったから治ったと考える——ウイルスの排出は解熱後も続きます
  • 子どもを一人で別室に寝かせる——異常行動による事故は発熱から2日間に集中します

解熱剤については、公的な文書に明確な記載があります。厚生労働省インフルエンザ脳症研究班の「インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】」(平成21年9月)は、体温の管理の項で「解熱剤はアセトアミノフェン 10 mg/kg/回が使用できる」としたうえで、「アスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸は禁忌である」と記載しています。さらに同ガイドラインは、インフルエンザ脳症の予後不良因子を列挙するなかで、使用薬剤の項目に「ジクロフェナクNa、メフェナム酸」を挙げています。

市販薬は商品名で覚えられていることが多く、成分名まで確認する習慣がある方は多くありません。子どもに使う前に、箱の裏の成分名を読むか、薬局で「インフルエンザかもしれない子どもに使えますか」と聞いてください。これは薬剤師が即答できる質問です。なお大人の場合も、持病や併用薬によって選ぶべき薬は変わります。

また、高熱そのものへの対応としては、薄着にして首・わきの下・足の付け根を冷やす、水分をこまめにとる、といった基本が有効です。冬でも脱水は起こります。かくれ脱水の考え方は、暖房の効いた冬の室内でもそのまま当てはまります。

抗インフルエンザ薬——何を選ぶかは医師が決める

現在、日本で使える抗インフルエンザウイルス薬は複数あります。厚生労働省のQ&Aには、オセルタミビルリン酸塩、ザナミビル水和物、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、バロキサビル マルボキシル、アマンタジン塩酸塩が挙げられています。飲み薬、吸入薬、点滴と剤形が異なり、年齢や状態によって使い分けられます。

薬の選び方は毎シーズン議論があり、学会も提言を更新しています。一般社団法人 日本感染症学会は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)の使用についての提言 2025/26シーズンに向けて」(2025年11月10日)を公表しており、12歳未満の小児について「12歳未満の小児に対するバロキサビルの投与については、必要性を慎重に検討した上でオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルと同様に外来治療薬として選択できます」と記載しています。同提言は、12歳未満では投与後に薬の効きにくい変異ウイルスが検出される割合が高いことにも触れており、大人と子どもで同じようには考えないという姿勢が示されています。

患者側で覚えておくべきことは、実はシンプルです。①薬の名前を指名しない、②年齢・持病・併用薬を正確に伝える、③発症した時刻をできるだけ正確に伝える——この3つです。とくに③は重要で、「昨日から」ではなく「昨日の夜9時ごろから急に寒気がした」と伝えられると、48時間以内かどうかの判断が正確になります。

いつから学校・仕事に行ける?——「5日」と「2日」の両方を満たす

学校については、学校保健安全法施行規則に基づく出席停止の期間が定められています。厚生労働省のQ&Aは、インフルエンザについて「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」と記載しています。

間違えやすいのは「かつ」の部分です。「発症から5日」と「解熱から2日(幼児は3日)」の両方を満たす必要があります。発症から5日たっていても、熱が下がったのが昨日なら、まだ出席停止の期間です。逆に、解熱して3日たっていても、発症から4日目ならまだ足りません。

大人の勤務については、このような一律の法令上の定めはなく、職場のルールに従うことになります。ただし、うつさないという観点では厚生労働省の次の記載が判断材料になります。「一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています」。解熱した翌日に出勤すれば、まだ排出している時期に当たり得るということです。職場に高齢の方や妊娠中の方、持病のある方がいる場合は、余裕をもたせる判断が現実的です。

なお、治癒証明書の要否は職場や学校によって扱いが異なります。厚生労働省のQ&Aは「診断や治癒の判断は、診察に当たった医師が身体症状や検査結果等を総合して医学的知見に基づいて行うもの」と記載しています。

重症化しやすい人は、早めに相談しておく

厚生労働省は「お子様ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している方では細菌による肺炎を伴う等、重症になることがあります」と記載しています。JIHSは、リスクの高い層として「高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者」を挙げ、小児については「小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもある」と記載しています。

該当する方は、次のことを流行前に決めておくと安全です。

  1. かかりつけ医の診療時間と、休診日の連絡先を紙に書いて冷蔵庫に貼っておく
  2. 常用薬のリスト(お薬手帳の写真でも可)をスマートフォンに入れておく
  3. 体温計と経口補水液を、流行が始まる前に用意しておく
  4. ワクチンの時期をかかりつけ医に確認しておく

とくに1番目は、実際に高熱が出た夜に効きます。判断力が落ちている状態で電話番号を探すのは、思っている以上に難しいものです。

よくある質問(FAQ)

インフルエンザの検査は、熱が出てから何時間後に受ければいいですか?

発症からおおむね12時間以上あけたほうが、迅速抗原検査の精度は上がります。感染症学雑誌に掲載された前向き観察研究(明石祐作ほか、95巻1号、2021年)では、発症から検査までの時間別の感度が「12時間未満,38.9%(95% CI:17.3~64.3)」「12~24時間,40.5%(95% CI:25.6~56.7)」「24~48時間,65.2%(95% CI:49.8~78.6)」「48時間以降,69.6%(95% CI:47.1~86.8)」と報告されています。つまり、熱が出てすぐに検査をすると、本当にインフルエンザでも陰性と出る可能性が相当あります。一方で、抗インフルエンザウイルス薬は発症から48時間以内の開始が原則です。「12時間より後、48時間より前」がひとつの目安になります。夜中に熱が出たなら、翌朝の外来がちょうどこの窓に入ります。ただし呼吸が苦しい、意識がおかしい、水分がとれないといった症状があるときは、検査のタイミングを待たずに受診してください。

検査で陰性でした。インフルエンザではないと考えていいですか?

陰性でも否定はできません。上記の研究では、発症48時間以降に検査をしても感度は69.6%で、3割前後は「本当は陽性なのに陰性と出る」計算になります。発症12時間未満ではさらに低く、38.9%です。とくに、まわりで流行していて、悪寒・38℃以上の高熱・関節痛が数時間で揃ったという典型的な経過であれば、検査結果よりも経過のほうが情報量が多い場面があります。厚生労働省のQ&Aも「診断や治癒の判断は、診察に当たった医師が身体症状や検査結果等を総合して医学的知見に基づいて行うもの」と記載しています。陰性だから出勤・登校してよい、とは考えないでください。

かぜとインフルエンザは、どこで見分ければいいですか?

見分けるポイントは「症状の種類」ではなく「始まり方の速さ」と「全身症状の強さ」です。厚生労働省のQ&Aはインフルエンザについて「38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻水、咳等の症状も見られます」と記載しています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)も「発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き」と説明し、「いわゆる『かぜ』に比べて全身症状が強い」としています。のどや鼻の症状が先にじわじわ来るのがかぜ、全身症状が先に来て鼻やのどが後から来るのがインフルエンザ、というのが典型像です。

子どもが急に走り出したり、変なことを言ったりします。様子を見ていいですか?

様子を見るのではなく、目を離さない体制を作ってください。厚生労働省は「インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が報告されています」とし、その例として「急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなど」を挙げています。そのうえで「少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい」と求めています。具体策として示されているのは「玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)」「ベランダに面していない部屋で寝かせる」「窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)」「できる限り1階で寝かせる(一戸建てにお住まいの場合)」の4点です。ただし、話しかけても反応が戻らない、けいれんが起きた、意識がはっきりしない状態が続くときは、事故防止の話ではなく受診の話になります。すぐに医療機関へ連絡してください。

熱が高いので市販の解熱剤を飲ませてもいいですか?

小児では薬の種類に注意が必要です。厚生労働省インフルエンザ脳症研究班の「インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】」(平成21年9月)は、体温の管理について「解熱剤はアセトアミノフェン 10 mg/kg/回が使用できる」としたうえで、「アスピリン、ジクロフェナク、メフェナム酸は禁忌である」と記載しています。同ガイドラインはインフルエンザ脳症の予後不良因子として、使用薬剤の項に「ジクロフェナクNa、メフェナム酸」を挙げています。市販のかぜ薬・解熱鎮痛薬には成分名が小さく書かれているだけのことも多いので、子どもに使う前に、家にある薬で自己判断せず、医療機関や薬局で成分を確認してください。大人でも、持病や併用薬によって選ぶべき薬は変わります。

抗インフルエンザ薬は必ず飲んだほうがいいですか?48時間を過ぎたら意味がないですか?

全員に必須という位置づけではありませんが、早く始めるほど期待できる効果は大きくなります。厚生労働省は「抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します」と説明しています。48時間を過ぎた場合でも、重症化しやすい条件がある方や症状が重い方では、医師の判断で投与されることがあります。自己判断で「もう遅いから受診しない」と決めないでください。なお、家族が前のシーズンに処方された薬の残りを飲ませるのは避けてください。年齢・体重・腎機能・ウイルスの型によって適切な薬は変わります。

学校や仕事は、いつから行っていいですか?

学校については、学校保健安全法施行規則で出席停止の期間が定められています。厚生労働省のQ&Aは、インフルエンザの出席停止期間を「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」と記載しています。「解熱してから2日」だけでも「発症から5日」だけでもなく、両方を満たす必要がある点に注意してください。大人の勤務についてはこのような一律の法令上の定めはなく、職場のルールによります。ただしウイルスの排出という観点では、厚生労働省は「一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています」と記載しています。熱が下がった翌日に出勤すれば、まだ排出している時期に当たり得るということです。

重症化しやすいのはどんな人ですか?

厚生労働省のQ&Aは「お子様ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している方では細菌による肺炎を伴う等、重症になることがあります」と記載しています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)は、インフルエンザについて「『一般のかぜ症候群』とは分けて考えるべき『重くなりやすい疾患』である」としたうえで、「高齢者や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者」でリスクが高いこと、「呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなることが知られており」と説明しています。小児については「小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもある」とも記載されています。該当する方は、症状が軽いうちに一度相談しておくほうが安全です。

まとめ

インフルエンザの初期症状は、悪寒から始まり、数時間で38℃以上の高熱・頭痛・関節痛・強い倦怠感が揃うという「立ち上がりの速さ」に特徴があります。のどや鼻の症状は、そのあとから追いかけてきます。かぜとの見分けは症状の種類ではなく、始まり方で行ってください。

覚えて帰っていただきたいのは3つです。①検査は発症から12時間より後に受けたほうが精度が高い(12時間未満の感度は38.9%)、②ただし薬は発症48時間以内が原則なので「12時間より後、48時間より前」を狙う、③呼吸が苦しい・意識がおかしい・けいれんがあるときは、時間を数えずに救急要請する。そして子どもについては、発熱から2日間は同じ部屋で寝る——これが異常行動による事故を防ぐ、いちばん確実な方法です。

本記事は一般向けの情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関を受診してください。

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